生ごみも下水汚泥も燃やすのでは?

先日、こういうタイトルの記事を見た。

「生ごみは燃やすな」 焼却大国日本でごみ処理の専門家が唱える異議 (朝日新聞デジタル)

中身もいろいろあるけど、タイトルが全てではないかと思うので特に踏み込まない。

しかし、いろいろ考えて見ると、日本においては何らかの形で焼却せざるを得ないのではないか。

これは日本では利用できる土地が限られ、ほぼ全国にわたり都市化しているためである。

ただ、処理方法の変更で省資源に寄与したり、焼却量を減らせる可能性はあるが……

とはいえ、それが合理的であるかと言われるとこれが難しいのだ。


生ごみというのは現在の家庭ごみの相当割合を占め、水分量が多いことが課題である。

リサイクルや省資源化が進む中でどうしても残るのが生ごみという側面もある。

そんな生ごみの処理を効果的に行うための方法として下水処理場に投入するという方法が考えられている。

下水処理のフローもいろいろあるのだが、その中で汚泥の消化というのがある。

後で書くような事情があるため、導入されている下水処理場は限られているが、

汚泥に含まれる有機物をメタン発酵させ、メタンと二酸化炭素に分解する。

発生するガスはバイオガスと呼ばれるが、発電などに活用することが出来る。

また、汚泥は有機物が分解されたことで減量され、肥料としての活用が可能である。

ここに家畜の排泄物や、生ごみなどを投入して、一緒にメタン発酵させることで、

バイオガスの利用拡大、廃棄物の減量を実現しようということである。

生ごみは水分が多いが、水分が多い汚泥と同じプロセスで処理するのは効果的だと。


一見するとよい方法に見えるが、いろいろと課題がある。

まず、生ごみであればプラスチックなど分解できない物質を除去する必要がある。

家畜の排泄物であれば、敷料などと混在するので、これらを裁断したり除去する必要がある。

前処理をした上で、その性状を揃えて汚泥と合わせるという工夫が必要になる。

メタン発酵によりガスが発生して、減量されることはよいとして、

最終的に残ったものは固形分と液体分に分けることになる。

固形分も液体分も肥料として使えるものの、液体分はかさばる割に肥料としての濃度が薄いので輸送・散布が大変だという。

このため実態としては下水処理に戻すことになる。アンモニア分が多いため、これを除去する処理が必要である。

固形分は肥料として有用だが、近くに農地があって引き取り手があればよいが、

大都市だと下水処理で発生する汚泥は大量で、埋立地の容量も限られる。

汚泥の行き場がなくなると汚水処理が止まって大変なので、こうなると焼却以外の方法がないわけである。

(炭化して石炭代替の燃料とする方法もあるが、最終的に焼却するのは同じである)


実は東京都の下水処理場では消化というプロセスが存在しないところが多いらしい。

なぜならば、最終的に焼却するならば、汚泥をそのまま焼却した方が簡単だからである。

汚泥は機械的な脱水をある程度行えば、そのまま燃焼可能で熱源として利用できる。

むしろ消化を行わず、有機物が多く残った状態で燃焼する方が発熱量が大きい。

消化により汚泥の量を減らせれば、焼却設備のコンパクト化につながるが、

一方で消化するには消化槽などのかさばる設備が必要で、また消化槽の加熱にはエネルギーが必要である。

もちろんバイオガスで発電などできて、その排熱を消化槽の加熱に使うなどの対応は可能なのだけど。


そもそも生ごみの焼却というのは本当にエネルギーを消費するのかという話である。

ごみに含まれる水分は焼却炉の余熱である程度乾燥させることができる。

乾燥させて燃焼させれば、それが焼却炉の熱源となるわけである。

確かに一気に生ごみを大量投入すると、焼却炉の温度が下がり燃料を投入しないといけなくなるかもしれないが、

脱水した汚泥が熱源となるように、生ごみもまた熱源になるはずである。

生ごみを焼却しなくなれば焼却すべきごみの量が大きく減ることは確かだけど。


というわけで、生ごみを下水汚泥とあわせて処理することで、

バイオバスを取り出して発電などに利用できること、減量が可能であることは確かで、

また、その汚泥を肥料として利用することも可能である。

しかし、安定的に汚泥を処理する方法は、埋立地の余裕がない日本では焼却以外の選択肢はない。

生ごみをそのまま焼却するよりも減量はされ、設備のコンパクト化は見込めるが、

その代わり、消化処理やその前処理、後処理の設備が必要で、消化槽の加熱などのエネルギーも必要である。


ただ、リン回収という観点では魅力があるかもしれない。

肥料に不可欠な『リン』高騰  神戸市では下水処理場で再生・回収「KOBEハーベストプロジェクト」 (Yahoo!ニュース)

下水処理というのはもともと有機物を除去することだったが、

地域によってはアオコ・赤潮対策で無機物である窒素やリンの除去も行われている。

リンというのは肥料の成分として重要で、外国からのリン鉱石の輸入によっていた。

かつてはリン鉱石が安かったので、リンを回収するのは割に合わなかったのだが、

最近はリン鉱石の価格が高騰し、下水処理場にリン回収設備が設けられるようになってきた。

日本はリンの除去という点で下地はあったのだが、回収に力を入れるようになったのはここ10年ぐらいのことである。

汚泥の消化でリンが液体分に出てくるので、ここで回収すると効果的だという。

生ごみにもリンが含まれるので、同様に回収が可能なはず。


とはいえ、ごみ処理にかかるコストのうち半分を占めるのが回収らしいんですよ。

以前、生ごみの分別回収の実験に付き合ったことがありまして、

そのときは週2回の燃やすごみの回収を、1回を生ごみ、1回を燃やすごみとしたが、

生ごみというのは腐敗しやすいので1週間に1回だとキツイというのが問題だった。

回収回数を増やせばその分だけ回収費がかさむわけである。


その上でここまでの経緯を総合してわかるように、下水汚泥も生ごみもどこで焼却するかの違いでしかないわけである。

いろいろ複雑な設備を設けてもそれに見合うような結果が得られるかどうか

それならばシンプルに直接燃やすというのは一理あるわけである。

ただ、バイオガス発電は固定価格買取の対象だったり、省資源に寄与するものではあり、

下水処理と統合することで効果的な整備が可能なので、導入可能性がないともいえない。


実は冒頭で紹介した記事では生ごみの分別回収の事例がいくつか紹介されているが、

その中では北海道の事例が多く、それは焼却炉がない市町村なんですよね。

埋立地の確保も可能で、その上で北海道は肥料の行き先も比較的ある。

というわけでこういう方法が取れたわけだが、日本ではむしろ例外的地域である。

ヨーロッパでは割と埋立処分もあるらしいんですがね。