これ自体はまぁこういう結論にしかならないと思うんだけど。
最低賃金 過去最大“全国平均31円引き上げ”答申 厚労省審議会 (NHK)
ただ、比較的低賃金の労働者にこの恩恵が及ぶかというと、一概には言えない気もする。
どうしても雇用によらざるを得ないところは、最低賃金に連動すると思うが、
やはり脱雇用というのが今のトレンドではないか。
1つはギグワーカーとか、業務委託で働く人が増えているということ。
効率よく働ける人であったり、制度上の工夫で手取りを増やせる可能性はあるし、
発注側にとってみれば、最低賃金で人を雇うより低コストにできる可能性があり、
そういう状況だと最低賃金引き上げの恩恵も乏しいということになる。
もう1つはコンビニや飲食店などでアルバイトなど雇うにも高いので、人を雇うのを減らす動きがあると。
その分は経営者が働いて穴埋めしたり、営業時間の短縮などで対応することになろうが。
従来そうして働いていた人にとっては働き口自体がなくなる方向である。
ところで一定時間以上働くサラリーマンであれば、労使折半で健康保険・厚生年金・雇用保険に加入することになる。
これは大変心強いという話をこれまでも書いている。
サラリーマンの社会保険にはある下記のようなものはないから。
- 健康保険の傷病手当金
- 障害厚生年金 (障害基礎年金より支給対象が広く、給付水準も高い)
- 雇用保険の失業給付・育児休業給付金
こういうものを自営業者が備えようとすると、とても大変である。
社会保険の適用範囲拡大によってパートタイムで働く人もだいぶ対象になった。
労使折半でも保険料負担はあるが、いざというときにはかなり役立つ。
雇用が安定していることにはそれ以上のメリットがあるということである。
ただ、雇う側にとっては困った話でもあって、労使折半の保険料の負担は重いし、解雇規制も厳しいので、人を雇うことのハードルが高い。
それでも必要な人は雇うわけですが、業務委託の活用ということも考えるわけである。
業務委託が安上がりであるかというと一概には言えないところもあるだろうが、
ただ、業務量に応じて柔軟に変更できたりするメリットもあるでしょう。
そういう働き方よりは最低賃金を割ってもサラリーマンの方がよいという人は少なくないだろうでしょうけどね。
従来通りの働き方で最低賃金に連動して給与が増えれば、それが一番よいが、
それが実現できないとなったときにどうなるのがよいかは難しい。
最低賃金が上がると、それより安い時給で雇用するということはできなくなる。
これに対して実質的に最低賃金以下の単価で業務委託するというのは、それは最低賃金規制に対して本末転倒ではないかという話はある。
しかし、例えば副業としてやるならば、本業で社会保険に加入していれば、副業で新たな社会保険料負担が発生しないので、それでもメリットはあるかもしれない。
いずれにせよ、雇用に対する最低賃金だけでは追いつかず、
業務委託に対する最低工賃とかも考えないといけないのかもしれないが、しかしこれは業務内容や契約によっても様々だから難しい。
今でも家内労働法の規定で内職の最低工賃というのを定めているのだが、最低工賃の定めのない業務だと無力である。
ましてやコンビニや飲食店の経営者ともなれば、これは経営者自身の働いた時間に見合った収益が出るかというのはまたまた別の話である。
というわけで大変難しい問題である。
最初にも書いた通り、最低賃金の決め方としてはこの引き上げ幅にならざるを得ないわけである。
それに応じて物やサービスの価格を引き上げて対応して欲しいということで、
確かに価格には最低賃金に連動する部分はあるので、ここは無意味ではない。
でも企業間の競争の中で全てが全て価格転嫁できるわけではない。
それができないなら事業を畳んでしまえとなれば、単純に雇用は失われるし、
ギグワーカーの活用などで、実質的に最低賃金より安くても働きたい人を集めて対応することもある。
そうすると結局は最低賃金引き上げの恩恵がないことになる。
こういう話は今に始まったことではないけど、段々厳しくなっているのではないか。