ポスター掲示板を増設する理由

今日は参議院議員選挙の公示日、ということで各地で立候補受付があったわけだが、

先週、東京都ではポスター掲示板の増設工事がせっせと行われていた。

参院選東京選挙区 候補者ポスター掲示板の枠を増やす作業進む (NHK)

ただ、結果的に言えばこの増設部分の出番はないようだ。


東京都も市区町村によるとは思うが、だいたい同じタイプの掲示板を使っている。

今回の場合、当初貼られていた掲示板は 縦3枠×横12枠の36枠が切られ、

右上から2枠は掲示板の説明書きが記載されている。

そして、右から2列目から、右から左に向けて1,2,3…11と番号が振られ、

次の行には右から左に向けて12,13…22と振られている。

そして最も下の列は注意書きの下に34、続いて右から左に23,24…33となっている。

34番の掲示場所が変則的だが、最大34番までポスターを貼れるように見える。

でも実は35番・36番枠も存在する。それは説明書きが書かれた2枠にも35・36番が振られているためである。

実は一番右の列は下から34,35,36となっているのである。

なお、市区町村によっては同じような掲示板でも34番も説明書きに使っていることがある。(34番枠の内容はたいてい重要度は低いので潰れてもほぼ問題はないが)


実際には34~36番枠は予備として考えているのだと思う。

ここに貼られてしまうと説明書きが消えてしまうなどの問題もありますから。

でも、注意書きがつぶされたとしても、貼れないよりはずっとよい。

もし一部の候補者がポスターを貼れないとなれば、公平性を欠くことになり問題である。

だから、よく考えられた仕組みだなとは思っていた。


さて、冒頭に書いた通り、東京都は各市区町村にポスター掲示板の増設を指示した。

ニュースによればトリガーとなったのは、書類の事前審査に来た人が30人を超えたあたりだとみられる。

公示まであと1週間ぐらいあるので、まだ立候補を考える人が増える可能性はある。

増設には増設分の板を準備して、作業者を確保してと、どうしても時間がかかる。

もっとも恐れるべきことはポスターの貼れない候補者が出ることである。


増設された掲示板は、従来の掲示板の左か上に3枠分足され、

その3枠は7・38番枠、そして39番枠に掲示板の説明が記載されている。

3枠増やしたわけだが、35・36番枠に貼られると掲示板の説明が潰れることを考えれば、35番枠以降にポスターが貼られれば増設部分の意味はありそうだ。


そして告示日、東京都選挙区の立候補者は34人で締め切られたようだ。

結果としては掲示板の説明書きが潰れない34番までで足りたので、

増設部分の意味は特になく、転ばぬ先の杖ということだったと思う。

一応、補充立候補という制度があって、立候補者が亡くなった場合、追加の立候補者を立てられる制度がある。

近年で話題となったのは2007年の長崎市長選挙で、現職の市長が再選を目指して立候補するも選挙期間中に暴力団に射殺されるという事件が起きた。

2名補充立候補し、市職員から補充立候補した田上富久さんが当選、再選して現在も長崎市長である。

もしも補充立候補があれば、実際に増設枠の意味も出てくるのかも知れないが、稀なことではある。


それにしても東京都選挙区の立候補者数の多さは異常である。

当然、改選数6と多いことは背景の1つとしてある。

確かに国政政党だけでも14人立候補者を立ててますからね。

ただ、国政政党の候補者でも半分ぐらいはほぼ勝ち目はないような気はするんですけどね。

国政政党というのは比例代表の得票率2%以上などの要件を満たした政党を言うが、

政党要件ギリギリの党勢で当選者を出すのはいくら東京都選挙区でも厳しい。

よっぽど他党支持者を巻き込める自信があるならよいが……


それにも増して無所属・国政政党以外の政治団体を名乗る候補者が多すぎる。

もちろんこれらの候補者の中に有力候補がないという話でもない。

国政政党との関係性や地方議会での活動など、軽視できない候補者もいるから。

ただ、大半は本当に怪しいものである。活動体制も脆弱とみられる。

ゆえに39番枠まで用意したポスター掲示板も1/3程度しか埋まらないのが実情である。

東京都選挙区にこのような候補者が集中するのは改選数6だからというのもあるかもしれないが、東京の選挙区だからというのはあると思う。

特に参議院の選挙区立候補者は必ず政見放送を流すことが出来る。

衆議院の政見放送は大変

こういうところも狙っているのではないかなと思う。


正直なところ、巨大なポスター掲示板を用意して、ましてそれを増設するなんて、

それは東京都選挙区の選挙の実態に見合った内容なのかなと思うんですけどね。

ただ、今の供託金でも高いと言われる状況で、なにがよいのかは難題である。

選挙は我々の生活によい影響も悪い影響もあると思うが、

当選可能性が低い候補者が乱立することは騒音など生活にとって悪い影響があると思う。

民主主義のコストとしてある程度は受け入れるべきものだが、

参議院の東京都選挙区ほどになるとさすがに度が過ぎている。どうにかならんものか。


あと、ポスター増設の引き金を引いたのは、おそらくはとある政党の立候補者擁立方針によるものだと思う。

兵庫県選挙区でもポスター増設が行われたニュースがあったが、

実は東京都だけのことではないんですね。全国的に多いんですよ。

全国の選挙区の立候補者数をみると、異様なまでに立候補者の多い政党がある。

よりによって政党要件を満たしている政党だからタチが悪い。

もちろん1つの政党だけに原因があるわけではないけど、最後のトリガーを引いたのはここなんだろうなと思いますね。

元々、ある程度余裕があると思って準備していたはずですから。