昨日、衆議院の新しい区割りについて、
鳥取県に2選挙区あることが1票の格差是正の制約となっているということを書いた。
この問題は鳥取県と他県、例えば島根県とまたがる選挙区を作れば打開でき、
鳥取・島根にまたがる生活圏があり、民放の放送区域も被っているなどの特徴もあり、
ここで県をまたぐ選挙区を作ることは現実的ではないかということを書いた。
ただ、政見放送に課題がありそうですねとも書いた。
衆議院議員選挙の政見放送ってけっこう大変なんですよね。
政見放送って見たり聞いたりしますかね? 僕はあまり見ないけど。
政見放送の対象となるのは衆議院議員・参議院議員・都道府県知事の選挙である。
これらは選挙区の範囲が広く、離島などの地理的断絶も問題になりやすい。
そんな中で候補者の主張を知る上では一定の価値を認めているのだと思う。
NHKと民放で分担して放送する仕組みだが、NHKの分担割合は高めである。
政見放送とともに経歴のみの読み上げでコンパクトに収めた経歴放送もあり、これはNHKでやっている。
それぞれの選挙での政見放送の方式だが、わかりやすいのが参議院の選挙区と都道府県知事である。
これは単純に立候補者それぞれについて、NHKのテレビ2回・ラジオ2回、民放で4回放送する。
民放はテレビ・ラジオの割合は都道府県ごとの事情に応じて決められ、
東京都知事選挙ではTOKYO MX(テレビ)で3回・ニッポン放送(ラジオ)で1回だが、
2019年の参議院議員選挙 東京都選挙区ではフジテレビで1回・ニッポン放送で3回となっている。
なお、ラジオはAMラジオを指すようで、埼玉県(県内のラジオ局はFMのみ)でも東京のAMラジオ局が放送している。
テレビの複数回の放送を複数の民放で分担するような場合もあり、
鳥取県・島根県選挙区では両県を放送区域とするテレビ3局・ラジオ1局が各1回ずつ分担している。
次に理解しやすいのが参議院の比例代表だが、これは全国1区なのでNHKで全国同時放送される。
立候補した人数によって放送回数が変わるが、最大でテレビ8回・ラジオ4回とのこと。
2019年の参議院議員選挙ではテレビ52回・ラジオ26回の放送枠が設けられ、
この中で立候補者数に応じた回数をくじ引きで決めた順番で埋めているというわけ。
難しいのが衆議院で、小選挙区は選挙区の数が多いので政党単位なんですね。
都道府県ごとに政党ごとの立候補者数に応じた放送回数が割りあてられる。
このため選挙区の数が多い都道府県では全体の放送回数も多めになる。
これは選挙区に無所属で立候補する場合は政見放送ができないことを表しているが、
政党要件を満たした政党、あるいは一定の条件を満たす政治団体であれば、
都道府県に1人でも立候補していれば、最低でもNHKテレビ1回・ラジオ1回・民放2回の政見放送ができる。
共産党が供託金没収レベルで勝ち目がないのに、県内で1選挙区だけ立候補しているのを見るが、これは政見放送のためという面もあるらしい。
比例代表の票の掘り起こしのために、選挙区の政見放送の機会を獲得したいと。
もう1つ厄介なのが比例代表のブロック制である。
だから参議院と違って全国一律というわけにいかないんですね。
放送回数がブロックごとの立候補者数により決まるのは参議院と同じだが、
北関東ブロック・東京ブロックではNHKテレビ・ラジオと民放で分担するようになっている。
ここだけ民放が出てくる理由はまさにブロック制のためである。
というのもNHKは関東地方ではテレビ・AMラジオの広域放送を行っている。
テレビは東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、ラジオ第1は1都6県が1つの放送区域である。
この範囲内に衆議院比例代表は南関東(神奈川・千葉・山梨)・北関東(埼玉・茨城・群馬・栃木)・東京の3ブロックがあるため、比例代表だけでものすごい回数になる。
これに加えて1都6県それぞれの衆議院小選挙区の政見放送がある。
テレビで県域放送があっても東京からの電波を受信している地域もあることを考慮して、結局は1都6県全ての政見放送を流している。
(このような配慮は近畿2府4県、福岡県・佐賀県でも見られる)
このため、関東圏は政見放送を収めるのが大変なのである。
ただ、これだけの回数放送する割には内容は似たり寄ったりである。
というのも衆議院の政見放送は比例代表も小選挙区も政党単位である。
小選挙区の政見放送は全国共通部分+選挙区の候補者紹介という構成になっていることが多い。
比例代表についてはブロックごとに放送局で収録をするので全く同じことにはならないが、そもそも投票対象の政党はブロックごとの差はあまりない。
ブロックごとにアピールポイントがそんなに変わるとも思えないけど。
かなり冗長ではないかなと思う。
さて、冒頭に書いた話だが、都道府県・政党単位の政見放送であるならば、
県をまたぐ選挙区の候補者はどちらの政見放送に参加するべきなのかという話である。
1つは両県の政見放送に参加するという話で、一見すると面倒そうだが、
ほとんどの政党は共通部分+候補者紹介のビデオを自作しているので対応は容易そう。
もう1つは鳥取・島根ならではの方法で、2県合同で政見放送を作るというもの。
2県あわせた立候補者数によって放送回数が決まるようにすると。
鳥取・島根の場合、民放で放送されるのは鳥取県分も島根県分も両県で見ることができる。NHKはそれぞれの分しかやらないけどね。
それならば合同で政見放送を作った方が理にかなっているかもしれない。
しかし、政見放送ももうちょっと合理化できないものかね。
少なくとも関東圏の比例代表3ブロックを全部流すのは無駄だと思うが。
比例代表のブロック制って何のためにあるか意識してない人もいるかもしれないが、
小党乱立を防ぐための足切りが目的ということだと思う。
一番定数が多い近畿ブロックでも定数28だから、およそ3.5%の得票を得なければ1人も当選できないと。
逆に四国ブロックは6議席なので、15%ぐらいないと当選者を送り込めない。
地域差が多いことが問題である。中国と四国は1ブロックでいいと思うが。
こういう目的を実現するならば、全国1区でも得票率5%以下の政党は当選者なしとか、そういう制度にしてもいいはずなんだよね。
地域政党にはブロック制も意味があるかもしれないが、それで議員を送り込めた政党って新党大地(2005年・2009年・2012年に北海道ブロックで1議席)ぐらいでは?
得票率10%を超える都道府県があれば、当選を認めるとかそういう緩和策はあるかもしれませんが。
足切りに対して真っ向から向き合っていないという話なんですが。
なんで参議院議員選挙の直前に衆議院議員選挙の政見放送の難しさを説いてるのかという話だが、ちょっと気になったので書いた。
参議院はそこまで極端なことはないが、ただ関東圏のNHKでは1都6県の選挙区立候補者全員の政見放送を流す必要があり、
その中には改選数6ゆえに候補者が乱立する東京都選挙区がある。
巨大なポスター掲示板が準備されているけど、あれはどうにかならんのかね。
東京都なら小笠原村にも巨大な掲示板が用意されるが、ほとんど貼られないらしい。仕方ないね。