ニュースになっていたのですが。
史上最多芝GⅠ9勝のアーモンドアイが殿堂入りを逃す (サンスポ)
1年半ほど前、競走馬を引退したアーモンドアイが、
今年から顕彰馬選出の対象となり、多くの票が集まったが、選定されなかったということである。
惜しい数字なんですけどね。しかし、これは顕彰馬に選定される可能性がなくなったという話ではなく、いずれ選出される可能性は高いのではないか。
顕彰馬に選出されるためには記者による投票で75%以上の票を得る必要がある。
アーモンドアイは71%ということで少し足りなかった。
得票率75%とは厳しいのでは? という感じもするが、1人4頭に投票できるんですよ。
4頭に投票できるようになったのは2015年からのことである。
背景としては「競走カテゴリーの多様化」とのことで、
いろいろな観点で顕彰馬候補を挙げて欲しいという意図があるんじゃないか。
ただ、それをもってしても75%の票を得るのは大変で、2020年に顕彰馬に選出されたキタサンブラックも、投票対象初回の2019年には73%で選定されなかった。
そんなところからもわかるかもしれないが、顕彰馬選出のチャンスは引退後1度だけではない。
現在の規定では引退(厳密にはJRAの登録抹消)から1年超20年以内の馬が選出対象である。
これだけ投票できる期間が長いことには、子の活躍を見て投票することが考えられるからというのもある。
というか、アーモンドアイの父、ロードカナロアが2018年に顕彰馬に選出されたことと、アーモンドアイの活躍は無関係ではないはず。
2013年引退→2015年得票率61%→2016年63%→2017年73%→2018年82%
引退直後の時点で記者の過半数が殿堂入りに値する戦績だとは思われていたが、
最後の一押しが2018年のアーモンドアイの桜花賞・オークス優勝だったんじゃないか。
それなりの理由はあるが、この仕組みは「門番」を生みやすいものでもある。
そもそも2004年以前は引退後20年以内というルールもなかった。
このためかなり古くに活躍した馬に投票し続ける記者がいて困ったわけである。
そこで子の活躍を考慮しても20年経てば評価は固定されるだろうとしたわけですね。
これが歯止めになった面もあるが、この20年という年限を意識してなんとしても顕彰馬にと投票し続ける人もいる。
そこの問題を緩和するために1人4頭まで投票できるようにしたのだと思うが、
それでも得票率75%は高い壁で、ふさわしそうな馬がなかなか抜けていかないのである。
後で書くけど、来年のことを考えると頭が痛い結果である。
今年、アーモンドアイと並んで最多得票の馬がいて、それがキングカメハメハである。
偶然だけどアーモンドアイの祖父ですね。
こちらは2004年引退なので2024年が顕彰馬選出最後のチャンスである。
最近の活躍馬だとチュウワウィザードの父ですかね。
選出の年限が見えてきて、投票する記者にとっても引けないところに来ているのか。
仮に選出に必要な得票率を75%から70%に下げたとすると、
引退後20年以内のルールが導入された2005年以降に適用すると、
- エルコンドルパサー (2012年74%)(※2014年に80%で選出)
- ブエナビスタ (2014年72%)
- ロードカナロア (2017年73%)(※2018年に82%で選出)
- キタサンブラック (2019年73%)(※2020年に81%で選出)
- アーモンドアイ (2022年71%)
- キングカメハメハ (2022年71%)
が選出されていたことになるが、うち3頭は追って選出されているという。
選出のタイミングが早くなれば、その分「門番」が早く消えるわけで、それにより他の馬に顕彰馬選出のチャンスが回ったかも知れない。
アーモンドアイが一発殿堂入りとならなかったことには、「門番」の存在もあったのかもしれないし、
知名度の高いダービーや有馬記念で勝ったわけではなく、物足りなさを感じたのかもしれない。
牝馬三冠・ジャパンカップ2勝を含むG1 9勝は間違えなく立派ではあるけど、
安田記念では2度挑戦してマイル王に阻まれ、有馬記念ではさっぱりと、条件を選ぶ馬という印象もあったのかもしれない。
それ以上に殿堂入りにふさわしい馬が4頭いたのか? というのはありますがね。
「来年のことを考えると頭が痛い」と書きましたが、
来年はコントレイル、グランアレグリアなどが投票対象に入る。
コントレイルはクラシック三冠(牡馬三冠)、これは通常、顕彰馬に値するが。
グランアレグリアはG1 6勝のマイル王、こちらも顕彰馬候補になりそうだが。
ここに今年、惜しくも殿堂入りを逃した2頭がいるのである
果たしてこれで票が回るのかという話である。
ここに書いた4頭が揃って殿堂入りという可能性はないとは言えないが、
今年の結果を見ると、全員総倒れという可能性すらありうるのが怖い。
JRAの顕彰馬はこれまで34頭選ばれているが、ダートを主戦場としてきた馬は未だに1頭もいないことが知られている。
G1級のレースで11勝を挙げたコパノリッキーもまだ選出されていない。
そんなところからも大レースでたくさん勝てば選出されるというほど簡単ではないことがわかる。
ただ、さっきも書いたように子の活躍により、今後評価が変わる可能性はある。
でも、その道のりは遠いでしょうね。種牡馬も競争が厳しいですから。
顕彰馬に値するほどのダートでの戦績とは何か? 誰も知らないのだろう。
一方で、障害レースでの戦績が評価されて殿堂入りしたのはグランドマーチスがいるんですよね。
となれば、オジュウチョウサンも引退後は? という期待はあるけど、どうでしょう?
アーモンドアイを見てもわかるように75%というのは高い壁である。
顕彰馬にふさわしいと思う人は多くとも果たして票が回るのかどうか?
今の日本競馬にとってはものすごく高い壁に見える。
いろいろな見方はあると思いますが、殿堂入りのハードルの高さが、
それに続く馬の殿堂入りのハードルの高さにつながっているのは確かである。
それを乗り越えられる馬こそ殿堂入りにふさわしいという言い方もできるが。
「来年のことを考えると頭が痛い」と書きましたが、
今のままの制度だと来年には恐ろしい事になるのは目に見えてるんですよね。
制度変更が入る可能性もないとは言えませんが。
最悪なのは、誰も選出されず門番だらけになってしまうことですよ。