国鉄時代の最後の生き残りがここ?

ちょっと話題になっていたのですが。

JR西日本「やくも」381系に国鉄色リバイバル編成、上下各2本を運転 (マイナビニュース)

昔はこんな色の特急もいろいろ走っていましたが……

実は岡山~米子・出雲市で運行されているやくも号は、今となっては貴重な国鉄時代の特急車が使われる特急列車である。

本州あるいは電車では唯一の存在である。

2024年以降新型車両に置き換えられることが決定した。

このためこの形にこの色というのはもう見納めということで、話題になっている。


ちょっと前まではこんなの各地で走ってたのになぁと思うかも知れないが、

やはり老朽化は問題であって、特急として求められるサービスレベルを考えれば、新車への置き換えが進むのは必然だった。

JR西日本だと北陸新幹線の一部開業で北陸を去った特急を改造したり、

JR東日本だと常磐線や中央本線の特急に新車を入れて、そこで浮いた車両を持っていったり、

老朽化した車両の置き換えを進めるのに好都合な要素はいろいろあった。


しかし、どうして国鉄型の特急電車最後の地が やくも号 になったのだろうか?

おそらく2つの理由があると思うのだが、1つはこの車両がアルミ製であること。

錆びないですから維持しやすい面はあったと思う。

もともとこの車両は くろしお号 でも走っていたが、2012年以降、段階的に新車に置き換えられていった。

そこで余った車両は一時的に北近畿地区を走っていたことがある。

本格的には北陸新幹線の一部開業(2015年)の後に北陸を去った車両を改造して置き換えられたのだが、それを待つ間のつなぎだったんですね。

その役目を終えた車両はほとんど廃車されている。


もう1つはこの車両が振り子式車両だったということ。

カーブを安全に早く曲がるためには、車両を傾けて曲がるほうがよい。

遠心力には逆らわない方がよいということだとも言えるが。

そんなわけでカーブが多い路線の特急の高速化のためにしばしば使われる技術である。

もっとも車両が高価になりがちで、維持管理も大変というのが課題である。

このため、従来は振り子式車両を使っていた列車でもやめてしまったり、

あるいは最近のトレンドとしては、空気バネをつかって車両を傾ける技術で代替されることがある。

東海道新幹線(新幹線では比較的カーブが多い)のN700系で採用されて知ってる人も多いかもしれないが。

振り子式車両だと5°ぐらい傾けるが、空気バネだと2°ぐらいに留まる。

でも、コスト面では有利だし、それでも十分な効果が得られることが多いですから。


もともと381系はJR西日本では くろしお号 と やくも号 で使われてきた。

くろしお号については、振り子式車両をやめるという決断をした。

所要時間は若干延びたのだが、大阪市内~新宮でも5分程度の所要時間増で済んでおり、許容範囲という判断がなされたようだ。

振り子式車両導入時には40分ぐらいは短縮されたらしいから、恩恵は大きかったが、

それから時代を経て、車両性能が上がればそういうことも問題にはならなかったと。

なお、新型車両の一部は「パンダくろしお」ということで、アドベンチャーワールドとコラボレーションした装飾がされている。

昨年に白浜に行った時に乗りましたね。記念撮影する人も見たっけ。


そして最後に残ったのが やくも号 である。

JR四国から車両を借りてきて実験したりしていたのだが、結果的には「車上型の制御付自然振り子方式」の車両で置き換えることに決定した。

空気バネ式ではなく、遠心力で車両を傾ける車両を選んだということですね。

電車でこの方式を選択するのはけっこう久しぶりで、国内では25年ぶりのことだとか。


実はJR四国もぶち当たった問題なのだが――

あまりにカーブが多い路線では空気バネを駆動させるための空気が不足するらしい。

JR四国では高知方面の特急では空気バネ式は使えないという判断となり、振り子式車両を採用している。(これはディーゼルカー)

おそらくJR西日本もコスト面から空気バネ式の採用可否を慎重に検討したんだろうが、これは無理だとなったんでしょうね。

車両の置き換えに時間を要したのも、そのような厳しい路線だからというのはあるのかもね。


置き換え後の車両は大幅に快適になるはずである。

エチケット袋も見納めに? 特急「やくも」381系引退で 追求される「酔わない工夫」 (乗りものニュース)

現在のやくも号、かつてのくろしお号にはエチケット袋が備え付けられていたという。

鉄道でこういうのが備え付けられるのは異例なのだが、それだけ乗り物酔いが多いのだという。

理由は車両を傾けるのが完全に遠心力頼みのため。

カーブ進入時に不自然な揺れが発生するのだという。

この問題を打開するために開発されたのが「制御付自然振り子方式」で、傾斜を適切にコントロールして乗り心地を改善したと。

未だに従来型の自然振り子方式の車両が残っていたことの方が問題かも知れない。

最新鋭の制御方式により、快適な車両になることは確かではないか。


なお、冒頭で国鉄時代の特急車は「本州あるいは電車では唯一の存在」と書いたが、

JR北海道・四国・九州のディーゼルカーでは一部残っている。

これらも老朽化という課題はあり、第一線からは退きつつある。

ただ、四国・九州では観光列車に転用されたものも多い。

観光列車は週末だけとか1日1往復だけとか比較的走行距離が少ないので。

そういうところで余生を送っているうちは全廃はまだ先なんだろうけど。