加算運賃はいつなくなるか?

一部の鉄道路線では、建設費の回収などの理由がある路線に加算運賃を設定している。

この加算運賃、実際に建設費の回収が進んで比較的短期間でなくなるものもあるし、

あるいは利用状況に応じて段階的な引き下げが行われることもあるが、

かなり長期間にわたって徴収が続いている路線もある。

国は加算運賃を設定している各社に対して加算運賃の回収状況を公開することを求めている。

計算式にはやや疑問のあるところはあるが、各社一定の計算式で公表している。


ただ、加算運賃の設定理由もいろいろなんですよね。

まず、一番わかりやすいのが自社で借入金を調達するなどして建設したケース。

京急空港線(天空橋~羽田空港)がそのようなケースに該当する。

この区間は1998年の開通から23年経過し、回収率85%と出ている。

これは加算運賃の累計額が投資額と支払利子の合計額の85%であるということ。

加算運賃の状況について (pdf) (京浜急行電鉄)

回収状況が良いことから2019年に加算運賃を大きく引き下げている。


最近多いのが、上下分離方式ということで、別会社が借入金と補助金で線路を建設して、線路使用料という形で実質的に借入金の返済を行うというもの。

例えば、阪神なんば線がそうなんですけど。

加算運賃 (阪神電車)

阪神も車両購入費などの投資はしているが、多くは西大阪高速鉄道(株)による投資である。

阪神電鉄は西大阪高速鉄道へ40年分割で線路使用料を支払い、これで同社は借入金の返済を行うものとみられる。

回収率は61%と出ているが、これは阪神自身の投資額と線路使用料の支払累計が61%なので、

阪神電鉄・西大阪高速鉄道を合計した投資の61%を回収したとは言えない。

一方で2016~2019年の単年では、線路使用料・支払利子をやや上回る加算運賃があるので、順調に投資額を回収できているとみてよいのではないか。


ただ、投資額を回収する以外の目的での加算運賃もあって……

瀬戸大橋線における加算運賃の状況について (JR四国)

瀬戸大橋線は瀬戸内海を渡る鉄道・道路併用橋をメインとしているが、こういう長大橋は維持費が高いのは言うまでもなく。

このためこの加算運賃は今後撤廃される見込みはない。

本四利用料という道路橋との併用部分の維持費支払額の累計と、加算運賃の累計の比較で回収率を掲載しているが、この数字には特に意味は無いとみられる。

ちなみに瀬戸大橋線はJR四国では唯一の黒字路線だと言われている。

黒字といっても、他の香川県内路線の赤字も賄えないぐらいの金額だが。


ところで、これらと似たような性質があるのに、回収率の公開がない路線がある。

例えば、京成成田空港線である。

北総線の既設区間を借りているところもあるのが複雑だが、新線区間は成田高速鉄道アクセス(株)と成田空港高速鉄道(株)(JR平行区間)が建設した線路を利用している。

京成電鉄は線路使用料を支払うことで、両社の借入金を返済することになる。

当然、そのことを意識した料金設定になっているのだが……

京成成田空港線は北総鉄道の古い運賃表をベースとした運賃表を別に規定している。

基本運賃+加算運賃というシステムではなく、成田空港線の基本運賃なんですね。


加算運賃が認められるためには、設定区間の基本運賃+加算運賃が「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものである」必要がある。

基本運賃は既存の運賃表を適用する前提で、加算運賃という制度を使うんだろうが、

投資額と想定される利用状況によっては加算運賃が認められないこともあると。

実際、路線の性質によって、加算運賃を適用しない新線もわりとある。


あとは建設費の回収どころではない路線もある。

加算運賃の現状について (名古屋鉄道)

名鉄には加算運賃の設定路線が知多新線・豊田線・羽島線・空港線の4路線もある。

豊田線は回収率49%で比較的良いが、開通42年となると、もう借入金の返済も済んだ頃では?

空港線については中部国際空港連絡鉄道(株)の建設・所有しているので、

線路使用料として借入金の返済をしているわけだが、2019年の数字で加算運賃で賄えているのは半分ぐらい。

知多新線と羽島線は投資額はさておき利用状況が悪すぎる。

知多新線は47年を経て回収率19%、羽島線は39年を経て回収率8%……

しかも今後利用が伸びる要素はほとんどない。

このあたりの路線は建設費の回収どころか、営業費用の回収すら怪しい。


ところで建設費回収目的の加算運賃とは別に、ローカル線の加算運賃制度というのもある。

名鉄は自社路線をA,B,Cの3グループに分けて、BはAの1.15倍、Cは1.25倍の運賃を設定している。

これは各路線の収支状況を見て設定されたもので、永続的なものである。

名鉄の加算運賃設定路線のうち、豊田線・空港線はB区分、知多新線・羽島線はC区分にあたる。

さっき瀬戸大橋線の加算運賃は瀬戸大橋区間の維持費を考慮した永続的なものと書いたが、

実は在来線時代の青函トンネル区間は地方交通線扱いで、ローカル線の運賃制度で高額な維持費を賄っていたという。

青函トンネルの所有者は鉄道建設・運輸施設整備支援機構で、JR北海道は使用料を支払っているが、建設費を回収できる水準ではない。

JR北海道が負担する日常的な維持費だけでも大赤字という大変な路線である。

現在は北海道新幹線となり、運賃は幹線扱いになったが特急料金が必須である。

それでも維持費がかさみ北海道新幹線は赤字、青函トンネル以外の新設区間の建設費回収も困難である。


加算運賃だけ目の敵にしても仕方ない気はするけど。

(値下げ前後とも)京急空港線にしても阪神なんば線にしても、それだけ払っても実質安いし。

とはいえ、気になる加算運賃があるのは事実で、やっぱり京阪鴨東線(三条~出町柳)ですかね。

この区間は京阪と叡電を鉄道でつなぐプロジェクトという側面があり、

従来、大阪方面~叡電沿線は三条~出町柳はバス連絡だったのが、出町柳の乗換1回で済むようになるという点で画期的なものだった。

しかし、そもそも叡電が割高な上に、京阪の加算運賃が60円となると……

  • 四条~一乗寺 410円 vs (市バス)四条河原町~一乗寺下り松町 230円(均一区間拡大前でも240円)
  • 伏見桃山~岩倉 600円 vs (近鉄+烏丸線)桃山御陵前~国際会館 490円

バスは遅いので、多少高くても鉄道の方がという考えはあるかもしれないが、

四条~一乗寺はバスの1.7倍ぐらいするのはさすがに高くて迷いそう。

あと、烏丸線に近いところもあって、目的地次第という面もあるが……

比較対象として持ってきた、桃山御陵前~国際会館も2社またがりで大概高いのだが、伏見桃山~岩倉はさらに110円高い。

京阪というより叡電が高い面はあるが、それが悪目立ちするのは加算運賃もあるのかなと。

加算運賃がなければそれぞれ350円・540円ですからね。


そもそも鉄道の運賃が「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」という原点に返って定期的に見直されているかということが問題ですが。

認可を得るときにはこの点を検証してはいるとは思うが、

その後は本体価格を値上げしない限りは、基本的に検証されませんからね。

その観点で見ると、投資額を考えても高すぎる加算運賃というのはあるでしょうし、

逆に加算運賃の徴収を続けたところで全然見合わない路線もあるでしょうし。

どうなのかな? とは思いますね。