厚生年金にバッドニュースか?

こういうニュースがあったわけですが。

国民年金の水準低下緩和へ 厚生年金から財源振り分け (共同通信)

基礎年金の給付水準がこの先長い期間にわたって下がり続けることの対策として、

厚生年金から基礎年金に回す額を多くするという案があるという話である。

これは厚生年金の所得比例部分が少なくなることを表している。


ところで今の年金制度ってどんな仕組みになってるかご存じでしょうか?

被用者年金一元化により、サラリーマンは厚生年金、それ以外の人は国民年金に加入することになった。

厚生年金加入者は標準報酬の18.3%の保険料を労使折半でおさめる。国民年金加入者は月16610円の保険料を納める。

際限なく負担が増えないように、この保険料は2007年に固定されたという経緯がある。

ただし、厚生年金加入者の配偶者で国民年金第3号被保険者の場合は保険料を納める必要はない。

配偶者の厚生年金保険料に包含されているわけですね。


では、こうして支払った保険料はどうやって年金給付に回るかという話ですが、

国民年金・厚生年金ともども、被保険者1人あたり17000円ほど一般会計から受け取って、基礎年金勘定に34000円ほど拠出している。

この基礎年金勘定として集められたお金が基礎年金として給付される。

厚生年金加入者はこれに加えて厚生年金勘定から支払われる厚生年金を受け取ることになる。

ここでポイントなのが基礎年金の半分は税金によってまかなわれているということ。

あと、国民年金保険料に比べて基礎年金勘定への繰入額が少し大きいが、

この差分は特別国庫負担といって、保険料免除者や20歳前障害者といった、保険料を納めてないが国民年金の受給資格がある人の分を考慮している。

厚生年金加入者は所得が安定しているからよいが、国民年金加入者は必ずしも保険料を納められる人ばかりではないのを調整している。

とはいえ、基本的にこの基礎年金勘定への繰入額を基準に国民年金保険料が決まっていると考えてよく、

保険料を固定したことからすれば、国民年金保険料を基準に基礎年金の給付水準が決まっているとも言える。


ここに問題があって、人口構造が変化して、保険料を納める人が減り、年金を受ける人が増えると、

保険料を固定したら、年金の給付水準を下げるしかないので、マクロ経済スライドといって給付水準の調整をしている。

ところがあまりに下がりすぎると、基礎年金では結局生活が持たないということになりかねない。

そうなると保険料を上げるという判断も必要に思えるが、今の国民年金保険料ですら所得が低い人には負担が重い。

このことは以前から問題視されていて、2004年~2009年にかけて基礎年金の国庫負担率が1/3から1/2に引き上げられた経緯がある。


というわけで行くも行かぬも地獄という感じはあるが、

1つ影響の小さい方法として考えたのが厚生年金から基礎年金に回す額を多くする方法というわけである。

厚生年金もマクロ経済スライドにより給付水準の調整が行われるが、基礎年金ほど給付水準は下がらない予定だという。

さらに厚生年金というのは基礎年金の上積みだから、給付水準が多少下がっても生活が極端に苦しくなりにくいだろうと。

そこで、厚生年金の給付水準を下げて、その分、基礎年金に回す額を増やせば、

保険料を上げずに、基礎年金の給付水準を保ちやすくなる。その代わり、厚生年金の所得比例分が少なくなるということだが。


これは厚生年金加入者にとって不利に思えるが必ずしもそうとも言えないと思う。

厚生年金加入者も基礎年金を受け取るわけで、国民年金第3号被保険者の分もあればなおさら恩恵は大きい。

厚生年金加入者でも比較的所得が低い人にはメリットがあり、ある程度所得のある人にとって不利な制度であろう。

その上で、厚生年金には障害厚生年金(障害基礎年金よりだいぶ手厚い制度である)などの制度もある。

それらを総合的に見れば、基礎年金に回る分が増えても、厚生年金に加入できるならそちらの方がお得だと思う。


本来は国民年金のみに加入する人は、国民年金基金など別の制度で将来の年金を確保するべきではというのも一理ある。

しかし、国民年金保険料を払うにもギリギリの人にはどうしようもないわけである。

これは国民年金保険料が所得によらず定額であることとも関係があると思うのだが、

所得の低い人には人頭割の基礎年金拠出金の1/2を負担するのもままならないわけである。

国民年金加入者でも、負担能力がある人にはより多く負担して欲しいところだが、

今の国民年金はそういう仕組みになっていないし、そうして負担してもらったところで大した金額にはならんだろう。


国民年金保険料をおさめるのが難しい人は、保険料免除を受けることができる。

ただ、保険料免除を受けると、その期間の加入月数は1/2(国庫負担分のみ)にされて、将来の基礎年金を削られてしまう。

一時的に所得が激減して、保険料免除を受けただけなら、減額も大したことないだろうけど、これが長期化すると低年金につながる。

低年金になると、年金だけで生活が維持できず、老いて働くのも難しければ、それは生活保護を受給することになる。

結局は回り回って税金で養い、その税金を納めるのは結局はサラリーマンが多いわけだ。

真面目に保険料を納めても、それで受け取る年金だけでは生活が持たないという計算が出来れば、

それならそもそも保険料を納めず、働けなくなれば生活保護を受給すれば良いという考えも成り立つ。

基礎年金の支給水準が下がれば、これも現実的な話になるかも知れない。そしたら、なおさら基礎年金の支給水準を維持することが難しくなる。

結局、それで割を食うのは、給与天引きで厚生年金保険料を納めるサラリーマンということにもなりかねない。


というわけで、結局は回り回ってサラリーマンが割を食うことになりかねないので、

それならば厚生年金の所得比例部分の切り下げを受け入れた方がマシという考えは成り立つと思う。

ただ、いかにも場当たり的な方法ではあって、制度の抜本的な見直しも考えるべきだと思うが。


実はこのあたりの問題は、健康保険・介護保険に通じるところがある。

健康保険も大きく国民健康保険と被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合短期給付など)に分けられていたが、

構造的な問題として国民健康保険には所得が低く医療費がかさむ高齢者が多いわけである。

それを抜きにしても国民健康保険は所得が安定しない人が多いが、それはおいておいて。

そこで、65~74歳の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者のそれぞれで対策が取られているのだが、

特に後期高齢者は全員が同じ保険制度に入って、保険給付を 高齢者の納める保険料:現役世代からの支援金:税金=1:4:5 で分担することになった。

これにより後期高齢者は金額の大小はあるが保険料を納めて、医者にかかり、

現役世代の納める保険料には支援金が相当割合で含まれるようになり、税金からも相応の負担がされているというわけである。


これにより国民健康保険が高齢者医療費で圧迫されることはだいぶ減った。国民健康保険からも支援金は払ってるけど、軽減額の方が大きい。

この支援金というのは、当初は人頭割だったのだが、2017年から総報酬割となり、実質的に所得に応じて負担することになった。

これにより保険料が引き上がって、メリットが乏しいと健康保険組合を解散して、協会けんぽに移行する流れが一部にあった。

とはいえ、これは裏返せば今までサラリーマンは高齢者の医療費負担をだいぶ免れていたということである。

後期高齢者医療制度ができて、後期高齢者の医療費負担が明確化され、それを現役世代の負担能力でばらまくというのは、

わりと公平性のある仕組みで、制度間の保険料負担を平準化する効果はかなりあったといえる。


介護保険は40歳以上の人が保険料を納め、40~64歳の人は健康保険料と合わせて支払い、最終的に市町村に回る。

一方の65歳以上は原則年金天引きで保険料を支払うが、低年金の人はそういうわけにいかない。

これはどういうことかというと、年金から介護保険料を払えない人は、資産を取り崩して保険料を納めることが求められていて、

介護保険料の未納で資産差し押さえになる高齢者が増えているそうである。

とはいえ、ない袖は振れないのである。介護保険料未納のまま介護サービスを受けると負担が重くなるので、

もはや差し押さえる資産もなく、介護保険料を払う年金もない人は、これは生活保護を受給するしか道はないということになる。

ちゃんと介護保険料を払えるだけの年金がある人にとっても、介護保険料が増えると年金が実質目減りするということである。


高齢者の医療費は高所得のサラリーマンが従来よりかなり手厚く負担する仕組みになっているし、

年金を受け取る世代の高齢者が負担する健康保険料・介護保険料がより高くなっている。

これが理由で資産を差し押さえられる人はいるが、一方で年金で支払えるのが前提であるのは言うまでもない。

こういう流れも勘案したとき、厚生年金から基礎年金へ流れる額を増やすのは不可避かもなと思った。

ない袖は振れないのだから、残念ながら払える人が払うしかないのである。