それ日本製造ワクチンなんですわ

最近、新型コロナウイルスのワクチンについての話題が多いけど、ニュースになることも多いですからね。

日本政府が無償提供のワクチン 台湾に到着 (NHK)

このワクチンはアストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンなのだが、実は日本製である。

このワクチンが日本製であるということが大きなポイントである。


現在、日本で承認が出ているワクチンは ファイザー、モデルナ、2社のmRNAワクチンと、

アストラゼネカのウイルスベクターワクチンの3つだが、この中でアストラゼネカは日本国内での製造が可能ということで、

日本ではJCRファーマ、KMバイオロジクスらが製造体制を整えて準備をしていたのである。


知っての通り、日本で最初に承認されたのは世界的にも早期に供給開始されたファイザー製のワクチンだった。

極低温での輸送・保管体制が必要ということで、冷凍庫を準備して各市町村の接種会場に配備したり準備を進めて、

そのうえでベルギーから運んできて、各市町村に配送して接種がスタートしたのだった。

最初の頃は供給量が少なかったが、現在は週800万回程度のペースで供給されている。

モデルナ製ワクチンは少し遅れてスイスから輸送が開始され、東京(大手町)・大阪(中之島)など広域の接種センターで使われている。

この2社のワクチンは併用はできないが、原理が同じmRNAワクチンなので効果や副作用が似ているので説明しやすかった。

また、この2社のワクチンで住民への接種は一通り完了する見込みである。


というわけで、アストラゼネカ製ワクチンは日本国内での製造が可能であるにもかかわらず、

日本国内では大して使われない見込みになってしまった。

本来であれば冷凍保存が必要ないなど、離島やへき地での接種に適するかと思われたが、

そのような人口が少ない地域ではワクチン輸送上の都合(箱単位での冷凍輸送が必要だったため)、

高齢者向けの接種のタイミングで全成人対象にファイザー製ワクチンの接種を済ませてしまったところも多く、

おそらくアストラゼネカ製ワクチンはmRNAワクチンが適しないごく一部の人に使われるだけ?

日本国内で開発されたワクチンの供給開始時期によってはそれすらないかも。


とはいえ、日本国内での製造体制を整えてくれたメーカーをむげに出来ない事情もある。

今年3月頃、ヨーロッパではイギリスからのワクチン輸入が滞るなどのトラブルが起きており、

この影響を受けて、EU域内で十分なワクチン確保ができるように、ワクチンの輸出時には承認が必要なことになった。

さっき書いたように日本で使われるmRNAワクチンはファイザーはベルギー、モデルナはスイス(EU加盟国ではないが関税同盟に入ってる)からの輸入のため、この承認が得られるというところに懸念があった。

このため、国内製造可能なアストラゼネカ製ワクチンへの期待はあったわけである。

しかし、結果的には日本向けの輸出許可はスムーズに出ている。(cf. 日本へのワクチン、7200万回分に EUの輸出許可 (朝日新聞デジタル)


そんな中で日本からほど近い台湾でワクチンの供給が不足していることが問題となっていた。

台湾ではすでにアストラゼネカ製ワクチンが多く使用されていたが、在庫がほぼ尽きていた。

逆に日本では国内製造体制が整うも国内での使い道が決まらないアストラゼネカ製ワクチンの在庫があった。

せっかく製造体制を作っても、それが使われなければメーカーは投資を回収できないわけですから、

このことから日本製増分のアストラゼネカ製ワクチンを無償提供することは日本・台湾両地の利益にかなうことだった。

かくして、現在、日本にある在庫全て124万回分を台湾に輸送したのだった。


台湾の人口は2360万人、ワクチンの必要数は2回接種で4200万回と見込んでいるそう。

これに対して124万回分というのはいささか少ない気もするが、画期的な供給量でもある。

というのも、今まで台湾で供給されたワクチンは88万回なので、その1.5倍にもなる量だったのだ。

ということで、これで当面の接種スケジュールが決められ、ゆっくりながらも接種が進むようになった。

今後も日本製造のワクチンで台湾に運ばれる分はあるはずだ。


今後、日本製造のアストラゼネカ製ワクチンは東南アジアや太平洋諸島へ供給されるんじゃないか。

台湾に続き、ベトナムへの供給計画が動き出したという話もある。

政府、ベトナムにワクチン提供へ (ロイター)

ベトナムもアストラゼネカ製ワクチンの使用実績があり、供給不足を補うにはよいと考えられる。

国内ではmRNAワクチンの接種体制が整っては出番なしかと思われた国内製造のウイルスベクターワクチンは海を渡ることになったのだった。


台湾でワクチンの供給が滞っていた理由はいくつかあるようだが、中華人民共和国の介入もあったようだ。

1つにおいてはファイザー・ビオンテックの共同開発ワクチン(日本でファイザー製ワクチンって言われてるやつ)を購入しようとしたら、

ビオンテックの中国地域の代理店を通さずに購買することができず頓挫したという話があった。

中華人民共和国は台湾政府が外国と直接交渉することをよく思っておらず、今回の日本から台湾へのワクチン供給も抗議にあったという。

一方で中華人民共和国も国産ワクチンの供給を提案していたというが、台湾住民の拒否感も強いようで、この申出は拒絶している。

そんな特殊な事情も、日本製造のワクチンが最初に台湾に向かった背景としてあるようだ。


そういえば、これ書いてて思ったけど、日本国内ではmRNAワクチンでの接種体制が整って当面はこれ一本だが、

変異を続け、世界的には蔓延の長期化も懸念される中でワクチンの継続接種という話も出てくる。

そこでは日本国内のメーカーが開発しているワクチンが適用されるのかなと思っているが、

そういえば主なところだけでもワクチンの原理が違うんだよね。

  • アンジェス : DNAワクチン
  • 塩野義製薬 : 組み替えタンパクワクチン (B型肝炎ワクチンなどと同様の方式)
  • KMバイオロジクス : 不活化ワクチン(インフルエンザワクチンと同様の方式)

アンジェスと塩野義は比較的先行しており、年内にも接種できるのでは? という話はある。

どちらも製造性はいいらしいので、作り始めれば早そうではある。問題はどうやって承認を得るかである。

なにしろワクチンは健康な人が大量に接種を受けるということで、安全性の要求が極めて高いと考えてきた。

とはいえ、何かしらの妥協は必要だろうということで、外国の同種のワクチンの実績なども考慮して承認へ向かうんじゃないか。


ただ、ここで日本国内で複数方式のワクチンが承認されると、どうやって使い分けるのかという話が出てくる。

どうするんだろうね? 地域ごとに決めるんだろうか? こういうことは他のワクチンでは経験がないですからね。

複数社が供給することは普通だけど、方式の違うワクチンが併存することは普通はないですからね。

(時期によってワクチンの原理が変わった例は、ポリオワクチンが経口生ワクチンから不活化ワクチンに変わった例などある)

日本でアストラゼネカ製ワクチンの接種開始が見送られたのは、mRNAワクチンに統一するのが好都合という判断はあったとみられる。

とはいえ、国内開発のワクチンも結果的には一本化される可能性もありますけどね。

塩野義の組み替えタンパクワクチンは同方式のワクチンをNOVAVAX社が開発して外国での承認に向けて動いており、

このデータを引用してスムーズに承認に進むんじゃ無いかという話もある。どうだろうね。