昨日から今日にかけて大嘗祭が行われていた。
皇室の行事として毎年行われている新嘗祭の特別なもので、天皇の在位中に一度だけ行われる。
大嘗祭にあたっては全国各地から米とアワ、そして各地の農水産品が「庭積の机代物」として納入された。
都道府県ごとの特色が出ていて、おもしろい。
奈良県の「柿」「緑茶」「吉野葛」というのはブランド力の高いものを3つ選んだのだろうと。
香川県の納入物は、「干しシイタケ」はあまりおもしろくもないが(シイタケは26都府県から納入されている)、
「オリーブ」「キウイフルーツ」というのは瀬戸内らしいし、「小麦」「煮干しイワシ」は うどん だな。
東京都からは「キャベツ」「大根」「ウド」「シイタケ」「テングサ」が納入されたとある。
テングサは伊豆諸島が日本有数の漁獲量を誇っており、ウドは多摩地域が一大産地で「東京ウド」としてブランド化されている。
あとはそんなに面白くない気がするが、大根は日野市の伝統品種「東光寺大根」だとか。(cf. 伝統受け継ぐ 大嘗祭に都内の特産品 (東京新聞))
大嘗祭は新嘗祭の特別なものだとは書いたが、仮設の大嘗宮を建てたり、装束・調度など、大変大がかりなものである。
当然のことながら、相応の費用がかかり、その費用は宮廷費によってまかなわれている。
儀式,国賓・公賓等の接遇,行幸啓,外国ご訪問など皇室の公的ご活動等に必要な経費,皇室用財産の管理に必要な経費,皇居等の施設の整備に必要な経費などで,平成31年度は,111億4,903万円です。宮廷費は,宮内庁の経理する公金です。
(予算(宮内庁))
儀式にかかる費用といえばそうなのだが、宗教色の強い行事の費用には通常使わないと言う。
普段の宮中祭祀は天皇家の私的な行事という位置づけになっていて、その費用には内廷費を充てるという。
天皇・上皇・内廷にある皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるもので,法律により定額が定められ,平成31年度は,3億2,400万円です。
内廷費として支出されたものは,御手元金となり,宮内庁の経理する公金ではありません。
どちらも国費なのだが、内廷費は渡し切り、宮廷費は宮内庁の支出というところに違いがある。
大嘗祭の費用は27億円ほどとのこと。年間の内廷費より1桁多い。
内廷費は毎年定額と決まっているので、特別な儀式に対応することは出来ない。
とはいえ、天皇の即位にあわせて伝統的に行われてきた儀式で重要性が高いということで、
宮廷費を充てるという対応が1990年に行われた大嘗祭からとられている。
日本国憲法の政教分離の原則に反するのではという訴えもあったが、いずれも斥けられた。
今回の大嘗祭にあたって、異議をとなえる団体もあったのは確かだが、前回ほどではなかったという。
大嘗祭「政教分離に違反」 キリスト教系、なぜ孤軍奮闘 (朝日新聞デジタル)
大嘗祭の費用が特別に高額だからあれこれ言われるんであって、
普段から国費で宗教的な活動をしているのは事実なんだよね。
内廷費はそういう儀式も行われることを前提に金額が決まっているわけですから。
内廷費でまかなえる範囲で大嘗祭をやるべきではという話もあるようだが、国費であることに違いはない。
大嘗宮の建設や装束・調度の調達に費用がかかっているのは事実だが、伝統文化の継承というところに一役買っているのも確か。
伝統的に行われている儀式だからというところで、正当化できる部分は多いのかなと。
こうして作られた仮設の大嘗宮だが、11/21~12/8の期間で一般公開されるそうだ。
大嘗宮一般参観及び令和元年秋季皇居乾通り一般公開について (宮内庁)
伝統文化の継承に一役買っているであろうと書いたが、やはりそのことが広く理解されてこそ意義がある。
一体、どの程度のものが見られるのかはよくわからないが、都合を付けて見に行きたいな。
あと、大嘗宮の木材については、何らかの方法で再利用を図ることが検討されているそうだ。
建材としての再利用は難しいようだが、公園などで活用できるだろうと考えているようである。
意外にも木材の再利用というのは新しい試みだそうだ。
儀式ごとに新しく作るというコンセプトは残しつつ、省資源化の要求に応えたとも言える。
膳屋と斎庫という儀式の周辺の建物でプレハブが使われたようだが、
費用もそうだけど、調理場と倉庫ということで機能性も考慮したものなのかなと。省資源化にも貢献するものですしね。