ちょっと不思議な話なのですが……
ハワイアン航空、成田-シアトル25年5月就航 JALと北米アジア需要獲得へ (Aviation Wire)
ハワイアン航空がハワイ州とは全く関係ないシアトル発着便を飛ばすと。
ますは成田だが、続いてソウル~シアトルも考えているという。
ハワイアン航空とシアトルと聞いて、何のことかすぐに理解できた人は鋭い。
今年、アラスカ航空はハワイアン航空の買収を行った。
このアラスカ航空の本拠地こそがシアトルである。
(以前も紹介したがアラスカ航空という名前だが、本拠地はアラスカ州内ではなく、アラスカ州からの路線が集まるシアトル)
アジア~ハワイ間の需要が落ち込みハワイアン航空の機材も余剰になりかねないところ、
アラスカ航空グループとしてはシアトルを拠点にアジア路線を充実できるということでこうなったと思われている。
アラスカ航空自身の路線網は概ね北アメリカ周辺に留まっており、
他地域への接続路線はJALなど他社路線ばかりだったのだが、
今回、ハワイアン航空の手で、アジア路線が開設されることで、
初めて社内でシアトル発着のアジア路線を運航することとなる。
そう考えるとけっこう大きな話なんですよね。
なお、JALはハワイアン航空・アラスカ航空とともに提携関係にあり、
成田というのはJALのアジア路線との接続も意識したものだろうと。
というわけでハワイアン航空がハワイと全く関係ない路線を飛ばすわけだが、
こういう話を聞くと思い出すのがJTAの羽田~小松・岡山線である。
日本トランスオーシャン航空(JTA)はアメリカ統治下の沖縄で設立された南西航空に由来し、
現在はJALと沖縄県などが出資する航空会社で、那覇空港を本拠地としている。
プロペラ機での運航は子会社の琉球エアコミューター(RAC)に移管しており、
JTAはジェット機で運航する県内路線、JALが運行する那覇~羽田・伊丹以外の県外路線を担当してきた。
ところがこの県外路線のうち、宮古・石垣~羽田は繁忙期に高い需要があり、
機材を大型化したいのだが、JTAはボーイング737-800しか持っていない。
このため2021年からJTAの羽田発着便をJAL他との共同引受に改めJAL便名とした。
共同引受になると日によりJTA運航・JAL運航と機動的に変更できるため、
普段はJTAの737、繁忙期にはJALの787というような対応ができるようになった。
これはこれでよいのだが、こうするとJTAの737が余ってしまう。
なので、この逆に普段はJALが運航している羽田発着便にJTAが入ることになっており、
現在のところ対象路線は羽田~小松・岡山とのこと。
なぜ、羽田発着便の中でも小松・岡山なのかという話だが、
JTAの県外就航地は羽田・中部・関西・福岡・小松・岡山とある。
これらの就航地のうち羽田発着便で普段から737を使っているのは、関西・小松・岡山の3地点。
この中から小松と岡山を選んだということだと思われる。
本業の那覇発着便の時刻表を見てみると、小松は13:35着・14:15発でとんぼ返りだが、
岡山は20:25着・8:30発ということでナイトステイをしている。
当然、JALの羽田~岡山でも夜に到着して朝までナイトステイするのがあるので、
岡山空港で入れ替えを行うことでJTA機は本拠地である那覇と往来しているようだ。
JTAは沖縄路線の需要が旺盛であるがゆえJALの手を借りた結果、余剰機材が出稼ぎ、
ハワイアン航空はハワイ~アジアの需要が減退したのでシアトル路線に回ったということで、
事情はだいぶ違うのだが、機材・乗務員の有効活用という観点では共通する点が多い。
それぞれ地域の航空会社としての役目を果たすために、無縁の路線も飛ばすということになる。
特にJTAは沖縄県などの少数株主もいるわけで、単独でも利益を出さなければいけませんから。
(同様のことは奄美群島の市町村が出資するJACにも言える)