ラジオ第2がなくなると惜しいこと

NHKラジオ第2の廃止が正式に決まったようである。

NHKラジオ第2、来年3月末の廃止が正式決定 支出削減目的で再編 (朝日新聞デジタル)

ラジオ第2は主に語学や高校講座などの教育番組と外国語ニュースを放送している。

ラジオ第2は深夜帯は放送を休んでいて、さらに再放送が多いチャンネルでもある。

らじる★らじる の聞き逃し配信も活用できるようになり、再放送の必要性も減っている。

このためラジオ第1(名称は変わりそうだが)とNHK-FMへの集約は可能という判断のようである。


NHK-FMはNHK社内では音楽番組に重きをおいている。

全ての都道府県で地域放送が可能という特徴もあるためニュースも一部あるが、

これは主にラジオ第1の役目と考えられているのでごく少ない。

このため現在のラジオ第2の教育番組の移行先は主にFMになるようだ。

再編後の新AMではニュースや生活情報に、新FMでは高品質な音楽番組や教育番組などに注力するとしている。

正直どうかとは思うんだけど、NHK社内の考えとしては一貫している。


AM(中波)とFM(VHF)では電波の伝播の仕方が大きく異なる。

FMについては山や塔の上から電波を発射して、そこから見通せる範囲に電波が飛んでいく。

東京スカイツリーから電波を飛ばすと、関東平野をカバーできるが、

それが西日本まで伝播したりすることは通常はない。

飛ぶ範囲をコントロールしやすいため、細かく中継局を置くことも容易である。

電波というのは高い周波数ほど帯域に余裕があることが多く、

日本ではFM放送に1局あたり200kHzの帯域幅を与えている。

帯域幅が広いのでFM変調を適用できて、ノイズに強くて高音質での放送ができているというわけ。


一方のAMラジオ、中波については地平に沿って伝播していく特性がある。

NHK東京放送局だと久喜市の平地に巨大な送信所があるわけだけど、

あそこから地平に沿って関東平野一円、さらにその先まで伝播していく。

低地にある送信所も多く、津波・洪水・高潮の懸念も多いのは課題である。

帯域幅は余裕が少なく、1局9kHzしか与えられていない。

それが遠方まで伝播するので、遠くの送信所との混信も考えないといけない。

さらに夜間を中心に電離層で反射してかなり遠方まで飛んでしまうことがある。


この特徴を考えるとAMラジオは大出力の送信所で広くカバーするのがよいという結論に至る。

細かく中継局を置こうにも、その中継局が他と混信しては困るので、

出力はごく小さく、周波数も使い回しにせざるを得ない。

これでは結局あまり効果がないんですよね。

ラジオ第2は全国放送という特徴もあり、大出力の送信所を中心に構成している。

札幌・秋田・東京・大阪・熊本の各放送局が500kW(大阪は300kW)と大出力である。

これらの送信所や隣接府県の送信所でカバーできるところはラジオ第2の送信所は設置されていない。


一方のラジオ第1は地域放送のため隣接府県からカバーできるからともいかない。

広域放送を行う関東・中京・近畿は1つで広くカバーするため、

東京(300kW)・大阪(100kW)・名古屋(50kW)はそこそこ大出力だが。

これに並ぶのが札幌(100kW)と福岡(100kW)だが、

札幌は道内広くカバーする意図があり、福岡は長崎県の離島をカバーする意図があるよう。

(北海道内には札幌以外の放送局もあるし、長崎県は離島も本来は長崎放送局の管轄だが)


ラジオ第2の番組は教育番組と外国語ニュースがほとんどだが、

そこにあてはまらない番組が2つあることが知られている。

それが気象通報と株式市況である。株式市況は現存最古のラジオ番組である。

いずれもひたすら情報を読み上げるだけの番組で、アナウンサーにとって過酷な番組だったが、

現在はいずれも番組も合成音声による放送になっている。

この中で気象通報は海上での受信も考えて大出力のラジオ第2での放送になっていると言われている。


株式市況はもはや役割を失っている番組に思える。

取引終了後の夕方にタイムリーに流すのは難しくなるので廃止かなという気はする。

一方の気象通報は1日3回の放送が2014年に1日1回に減らされたが、

それでも残っているのは、海上安全という観点はかなりあるのだろう。

とはいえ、ラジオ第2の大出力局を中心としたネットワークとともになければ効果は薄れる。

AMラジオというのは遠くまで伝播するため、世界レベルでの電波計画があり、

大出力の送信所というのは既得権として活用できるとよいのだがどうしたもんかなと。

もしかするとラジオ第2の周波数に集約される局も出てくるかも知れない。


地域放送は全部FMにしますっていうなら話は簡単だったんですけどね。

そしたらラジオ第2のネットワークを基本にすればよいわけで。

ただ、今後もラジオ第1での地域放送は行われるわけですよね。

教育・教養番組はFMでの放送がメインだとこれは概ね全国一律である。

少し前までは深夜帯のNHK-FMはラジオ第1と同じ番組を放送していて、

これは夜間にAMラジオの受信環境が悪化する問題への対策だったのだが、

この体制は今はやめていて、現在は深夜帯にラジオ第2の教育番組の再放送を行っているよう。

ラジオ第2集約を先取りしたような体制になっているのかな。

こういうのも残念ではあるんですけどね。