ラグビーのリーグワンで出場選手カテゴリを今冬から変更することになっていたが、
ここに新たな経過措置が追加されることになったようである。
ルール変更で不利益を被るとされた選手からの苦情によるもので、
あまり他のプロスポーツでは見ないタイプの騒動だったのでは?
前提としてラグビーでは所属協会主義というのがある。
一般的にはナショナルチームは当該国の国籍を有する選手で構成する必要があるが、
ラグビーでは国籍ではなく所属するラグビー協会ごとにチームが編成される。
なお、これはワールドラグビーの管轄する大会における話で、オリンピックの7人制ラグビーでは国籍が必要である。
代表チームの選手を得るためには下記のいずれかを満たす必要がある。
- 当該国で出生している
- 両親・祖父母の1人以上が当該国で出生している
- 60ヶ月間継続して当該国の協会のみに登録されている
- 通算10年、当該国に滞在している
この要件には国籍は全くないので、日本国籍があっても要件を満たさない人はありうる。
逆に外国籍であってもいずれかの要件を満たす場合はあり、そういう人は代表チームにもけっこういると。
もっともこの条件を満たす国が複数あるからといって、自由に選べるわけでもない。
過去にいずれかの国の代表チームになった人は原則他の国の代表チームに入ることができない。
これまでのリーグワンの選手区分A・B・Cというのは、
Aはすでに日本代表チームの選手資格を有する人、
Bはこのまま日本でプレーし続ければ代表チームの選手資格を取得できる人、
Cはそれ以外だが、それは過去に他の国の代表チームに入ったことがある選手であろうと。
ナショナルチームの強化という点ではこれでもよかったのかもしれないが、
ラグビーが地域に根ざしていく中では、中学以前より日本に居る選手の活躍を見せられる場を確保するべきではないかと。
そういう考えがあったようで、カテゴリAをA-1とA-2に細分化することになった。
まず、代表選手資格の日本生まれ、両親または祖父母の1人以上が日本生まれ、
そして義務教育年代の9年間のうち6年間を日本に過ごした人をA-1とすると。
それ以外は基本的にA-2だが、日本代表で60キャップ以上出場した選手はA-1とする特例がある。
これは対象となる選手は2人だけで功労者枠だねということで。
カテゴリA-2にあたる選手はカテゴリB・Cほどではないが、出場できる選手数に制限が入る。
試合登録の23人のうち、従来はカテゴリAで17名以上だったが、
来シーズンからはカテゴリA-1で14名以上、カテゴリA-1・A-2で17名以上となる。
カテゴリA-1に該当しない選手の起用には全体的に影響のある話で、選手の契約にも影響が出ていたわけである。
そんな中でカテゴリA-2に分類される選手が訴訟を起こすという事態に。
義務教育期間を日本で過ごしていないという理由で他の日本生まれの日本人選手と差を設けられ、出場機会にも影響が及ぶことは、独占禁止法に違反すると考える
といってもこれは無理のある主張ではないかと思う。
もともとリーグワンでは国籍という観点を全く持っていなかった。
居住歴を重視してきて、その居住歴の考え方をより細分化したに過ぎない。
そんな中で新たな経過措置が導入されたが、対象は概ねこれまでに帰化で日本国籍を取得した選手である。
ジャパンラグビー リーグワン 2026-27シーズンからの選手登録におけるカテゴリ登録区分の一部見直し(特別措置としての追加)について (ジャパンラグビーリーグワン)
前身のトップリーグの時代には日本国籍を取得するということに意味があって、
他にもアジア枠など日本人と同一扱いするルールがあったそう。
このルールにあてはまっていた人と、2025年5月までに帰化した人は、
経過措置としてカテゴリA-1に区分するということである。
昨シーズンまでカテゴリAにいた日本国籍の選手は引退するまではカテゴリA-1になるということである。
現在は国籍によるルールはないが、オリンピックのためなどに日本国籍を取得した人もおり、
過去の経緯なども踏まえて日本国籍の有無を経過措置の条件にしたようである。
他のプロスポーツでも外国人枠と呼ばれるものはあるが、
一方で外国人であっても日本人と同一視される選手というのもいる。
野球の場合、日本のドラフト会議の対象者であるというところが重視されていて、
中学校・高校で3年以上在学、大学で4年以上在学、5年以上居住して社会人野球で3年以上プレーなど。
ラグビーの場合、高校・大学年代で日本に来て長年プレーしている選手が多く居るが、
そういうのは野球の場合は外国人枠にはあたらないということである。
むしろドラフト会議を経る必要が無いというのが外国人選手のメリットで、外国人枠の目的はそこにあると思われる。
なお、外国人枠で長年プレーしてフリーエージェント資格を得た選手も外国人枠を外れるとも規定されている。
バスケットボールではBリーグには外国人選手とともに帰化選手の制限もある。
一方で日本で義務教育を修了するか、親が日本人の場合は国籍によらずこの制限を受けない。
(もっとも親が日本人であれば通常は日本国籍を持っているわけだが)
帰化しても生まれながらの日本人や義務教育年代から日本にいる外国人とは違う扱いを受けるという点では、
ラグビーのカテゴリA-2に通ずるところはあるのかもしれない。
サッカーの場合は現在は日本国籍があるかないかである。
外国籍は全員制限される一方で、帰化すればすぐに制限がなくなる。
このあたりはナショナルチームの強化を重視しているからだろうが。
ただ、独特な制度としてホームグロウン選手というのがある。
これは各クラブで12~21歳の間に3シーズン以上登録された選手を指す。
各クラブの育成組織で育成された選手を想定している。
ホームグロウン選手にあたる選手を一定保有する必要があるため、地元出身の選手が優遇される形になっている。
この点ではラグビーが考えている課題の解決策の1つとは言える。
ただ他の競技だと、学生なら学校のチームでプレーする方が優先という考えだろうけど。
そう、サッカーだと高校のチームに所属するか、地域のクラブに所属するかというのは両にらみなのである。
義務教育年代から日本にいた選手を優遇する制度の妥当性はなんとも言えない。
高校・大学から日本に来て長年プレーする選手は大事にしていくべきではないかという意見はある。
逆にそういう選手が出場機会をかっさらっていくのではおもしろくないという意見もある。
バスケットボールは必要な選手数が少ないこともあり、この考えが強いのかなと思う。
ラグビーの場合、高校・大学年代から日本でプレーする選手は今後も依然重要である。
制限はかかるにせよ、カテゴリB・Cの選手とは違うわけである。
将来的にはサッカーのホームグロウン選手のような制度にすることも考えているようで、
2026-27シーズンから導入する登録区分は、リーグワンの普及育成の強化施策の一環として導入するものです。リーグワンでは現在各チームがラグビースクール・アカデミーの運用や、地域ラグビースクールを含む地域ラグビーの支援を通じ、ラグビーの普及育成に取り組んでいます。(略)
スクールやアカデミーの制度がさらに充実した場合には、当該基準についても、適宜見直しを検討してまいります。
感覚的には高校年代から日本でプレーしているなら、それは評価してよいように思うけど、
それだけでは不十分というのが現状の判断なのかなと。
経過措置については元々考慮されるべき内容だった気がするが、
あくまでもカテゴリAの細分化で、カテゴリA全体として見れば従来通りなので、
なかなか経過措置にも向かない内容だったのかなという気はする。
告知した翌シーズンから実施は厳しかったとも言えるが。