こんなニュースが出ていて、予兆はあったが実際出てくると驚く。
米競馬界に激震、全6戦の新3歳王者決定シリーズ創設 プリークネスS排除で伝統の3冠が事実上の解体へ (スポニチAnnex)
ちょっと大げさなタイトルなのだが、実際それぐらいのインパクトはありそうな話。
各国の競馬で3歳の三冠レース体系があるところ、そもそもないところありますが、
ヨーロッパにおいてはほとんど形骸化したと言われている。
そういう中では日本とアメリカは近年でも三冠挑戦、三冠達成はあると言われてきた。
日本では本家イギリスのクラシックレースの体系をよく残しており、
特にセントレジャーを本来の形に近い形でやっているのはイギリスと日本の菊花賞ぐらいで、
その本家セントレジャーは三冠挑戦なんてまず見ない状況になって長いから、
日本の菊花賞は世界的に見てもとても特異的なレースだとされている。
クラシックレースにはない秋華賞を加えた牝馬三冠も挑戦・達成が多い。
一方アメリカは ケンタッキーダービー、プリークネスステークス、ベルモントステークスからなる短期決戦の三冠レースが行われている。
完走するだけでも大変な短期決戦を勝ち抜くのが強いということだろう。
近年でも2018年にJustifyが三冠達成しており揺るぎないと思っていたが、
ここ最近はケンタッキーダービー優勝馬がプリークネスステークスをスキップする傾向がある。
今年もGolden TempoはKYダービー優勝後、プリークネスステークスを飛ばしてベルモントステークスを連勝している。
(もっとも2024~2026年はベルモントパーク競馬場の工事のため本来の2400m戦ではなく2000mである)
さっきも書いたようにアメリカの三冠レースは完走するだけでも大変で、
3レース完走すると中1週・中2週と走らないといけない。
これがプリークネスステークスを飛ばすと中4週となりだいぶ楽になる。
そういう既成事実を元にして、チャーチルダウンズ社とニューヨーク競馬協会が組んで、
ケンタッキーダービー、ベルモントステークス、トラヴァースステークス、
そして9月にチャーチルダウンズ競馬場で新設されるレースを中心としたシリーズを立ち上げると言ったわけである。
トラヴァースステークスは8月にサラトガ競馬場で行われ、ミッドサマーダービーの異名がある。
ブリーダーズカップの前哨戦として使われることもある重要レースである。
なんか聞き覚えがあるなと思うわけですよね。
そう、2024年から始まった日本の3歳ダート三冠である。
ヨーロピアンスタイルの3歳ダート三冠
元々、日本でも短期決戦の三冠レースだと南関東(大井)や兵庫では行われてきた。
ところが地元馬所属馬限定のレースとダートグレード競走が入り交じるなどの事情もあり、
なかなか上手く行っていなかった実情というのはある。
そこで元々南関東のローカル重賞だった羽田盃と東京ダービーをJRA所属馬を含む全国の馬に開放、
ジャパンダートダービーあらためジャパンダートクラシックを10月に移設、
それに合わせた前哨戦を整備する「全日本的なダート競走の体系整備」が行われた。
ダートなのにイギリス式の三冠という組み合わせになった。
これと新しい「サラブレッドチャンピオンシップシリーズ」はすごく似てるんですよね。
元々トラヴァースステークスというのがあるので、
9月にチャーチルダウンズに新設されるレースとの関係は気になるが。
しかし、いずれにしても共通して言えるのは、その先にブリーダーズカップがあるということである。
ケンタッキーダービーからこれらのレースを転戦するのもあるだろうし、
そこは逃したがベルモントステークスなどから合流してチャンピオンを目指すのもあるが、
いずれの場合でもブリーダーズカップの前哨戦として大きな価値を持つレース体系である。
ここがすごく日本と似ていて、ヨーロッパとは違うんですね。
菊花賞・秋華賞まで3歳戦を走りきった先にはジャパンカップや有馬記念などがある。
ジャパンダートクラシックもRoad to JBCとして優勝馬にはJBCクラシックの優先出走権が与えられる。
地方競馬はJBCを重視していて、JBCにつながるレース体系というのが重要だったと。
日本では一流馬でも長く現役を続けることが多く、特にダートは出走枠争いが厳しい。
3歳秋にスムーズに古馬戦に合流するには秋の3歳戦が重要と考えられたと。
転戦先としてはJBCとともにチャンピオンズカップもあるのだけど、
なんと移設初年の優勝馬はBCクラシック参戦のためにアメリカに渡っていったのだった。フォーエバーヤングのことである。
ともかく、秋の3歳戦を走りきって古馬戦に合流するのは理にかなっているわけである。
ヨーロッパの場合、10月にある凱旋門賞やチャンピオンステークスが平地では1年の締めくくりとされる。
その後は障害レースの季節らしいですね。
セントレジャーをこれらのレースの前哨戦に使うことはできるものの、
1970年に三冠達成後に凱旋門賞で2着に敗れたニジンスキーが頭によぎるのか、
もうこの時期になればわざわざ3歳戦を走ることはないという考えになって行ったようだ。
なお、1970年以来、本家イギリスのクラシック三冠を達成した馬はいない。
ヨーロッパでは一流馬だと3歳引退も多く、日本ほど古馬戦の壁はないのだろう。
アメリカも日本ほどは古馬戦の壁は高くないとは思うが、
一方でその後ろにあるブリーダーズカップの前哨戦に好適で、
すでに定着しているトラヴァースステークスともども盛り立てていこうということだろう。
ここはまさにRoad to JBCに位置づけられたジャパンダートクラシックととても似ているわけだ。
ケンタッキーダービーを境にして、その前哨戦はRoad to the Kentucky Derbyで出走枠を競い、
それ以降はサラブレッドチャンピオンシップシリーズとしてチャンピオンを競うと。
ただ、気になる部分もある。それは今のプリークネスステークスとの関係である。
冒頭に書いた「プリークネスS排除で伝統の3冠が事実上の解体へ」というタイトルは大げさなところはあるが、
全く的外れな話でもなく、メリーランドジョッキークラブはこの枠組みには関与していない。
調べてみると、メリーランドジョッキークラブはプリークネスステークスの権利の全てを今年取得したそうである。
メリーランド州、チャーチルダウンズ社からプリークネスSの知的財産権を取得(アメリカ)【開催・運営】 (JAIRS)
チャーチルダウンズ社がプリークネスSの権利を取得しようとしたら、
メリーランドジョッキークラブが優先取得権を行使したという話のようだ。
このあたりは複雑な話だけど、私企業と公企業が入り交じる事情によるもののようだ。
もしかすると三冠レースの再配置を目論んでいたが、思った通りには行かなかったのかも知れない。
今後のプリークネスステークスの位置づけがどうなるかはわからない。
もっとも単純なのは今の三冠はそれはそれで続くというものである。
三冠目指してプリークネスを走る選択もあるし、それを飛ばしてチャンピオンを目指すのもある。
なんやかんや言っても伝統あるレース体系は重視されるものである。
あるいは新たなシリーズに合わせて三冠や四冠が定着するのかもしれない。
その場合はプリークネスステークスは別の意義を見いだす必要がある。
思い返して見れば日本の3歳ダート三冠は大井競馬が三冠ボーナスを含む賞金を用立てすることで実現した。
所属馬の出走機会に困っていたJRAにとっては渡りに綱だったが、
他の地方競馬主催者にとってみればご当地ダービーを失うなどの問題もあった。
そこで「全日本的なダート競走の体系整備」で全国的なレース体系を見直したと。
兵庫チャンピオンシップは1870m→1400mに短縮して3歳短距離チャンピオン決定戦に、
今はJpnIIだが、将来的にはG1級を目指すという方向性が示されている。
「3歳秋のチャンピオンシップ」最終戦のダービーグランプリ(地方全国交流)をやっていた盛岡は、
これに代えてジャパンダートクラシックの重要な前哨戦を行うこととなった。
これが不来方賞で、地元重賞の名前を引き継いでいるが、ダービーグランプリの実績からJpnIIとなっている。
地方デビュー馬への新たな優遇策としてネクストスターという地元デビュー馬限定の重賞が設定された。
しかし、プリークネスステークスよりベルモントステークスが重視されるんですね。
ベルモントステークスは世界的にも珍しいダート2400mのG1である。
ダート競馬では1800~2000mに重要なレースが集中している。
芝の3000m級ほど吹っ飛んだ数字には思えないが、
ダート競馬の世界では2400mというのは異様に長いレースである。
ここ3年はサラトガの2000mで代替開催されていたという事情はあるが、
プリークネスSを飛ばしてKYダービーと連勝するのが続いたことで、この流れは決まったということなんだろうな
日本のダート三冠でも2000mより長い距離を考えたような話がある。
ただ、先に続くレースがないということで、ジャパンダートダービーを引き継いで2000mになったとされている。
芝だと菊花賞の先には天皇賞(春)があるのだけど、ダートは今からでは難しかろうと。
それはそうだねと思っていただけに驚いたわけですよね。