熊本県で発生した地震について、いろいろ情報が入ってきている。
総じて言えば、限界を超えた揺れにどう対処するかは難しいということである。
以前も書いたことがあるが、日本では1981年の新耐震基準が耐震化の1つ大きな基準となっている。
そこから45年が経過し、建物のライフサイクルを考えると耐震性はかなり向上している。
震度6強に達する地震でも死者なしということも珍しくはない。
ただ、震度6強あるいは震度7というのは、十分な耐震性を持つ建物でも深刻な被害から逃れるのが難しい場合があるように見える。
特に今回の地震は地域によっては想定を超える揺れに見舞われたのではないかと推測する。
今日14時時点で熊本県が把握している死者12人とのこと。
他に心肺停止の報告がある人や安否不明となっている人もいるが。
このうち5人が日本製紙八代工場、3人がイオンモール熊本で、
これらの場所では安否不明者やその後に死亡が報告された人がいるので、最終的な数字は増えるであろう。
まだなんとも言えない部分はあるが、揺れによる人的被害という点ではこの2箇所が多くを占めそうである。
それぞれ何が起きたかという話だが、日本製紙八代工場では煙突が倒壊した。
配管などが密集した場所が大きく倒壊したため救出活動が難しい状況が続いている。
重機の搬入が難しいことも救出活動が困難な理由のようだ。
八代市では震度7を観測している。想定を超える揺れだったことは容易に想像できる。
後で書くが八代市内では想定以上の揺れによる被害がいろいろ出ている。
もっと大きな被害が出ていても不思議ではなかったところ食い止められた部分はある。
イオンモール熊本(嘉島町)では地震からしばらくたって爆発が発生した。
これにより建物の外壁が吹き飛ぶという被害を出している。
地震当時、客が3000人ほど、従業員1500人ほどがいたそうだが、
避難誘導は順調に進み、客は全員避難完了、従業員も完了したはずだった。
その後に爆発が発生、建物外への避難は継続していたが、何らかの理由で建物内にいた従業員が10人程度巻き込まれたようだ。
救出された人もいたが、爆発の規模が大きく、こちらも救出活動が難航している。
爆発源がLPガスとみられるものの、本来は地震の揺れやガス漏れで遮断されるはずで、
なぜ爆発にいたったのかという点は今後調査がされるのではないか。
これも想定を超える揺れが原因にあった可能性はある。
死者が出たのは残念だが、おおかた避難後の爆発だったことで被害は大きく減らせたとは言える。
避難がまごついたら、爆発が早期に起きたら、ケタ違いの被害だった可能性はある。
地震発生後、建物の安全が確認出来れば建物内に留まりたいものだが、
八代市役所では免震構造の損傷により、建物が使えず屋外に災害対策本部が設置されることに。
実は八代市役所は2016年の熊本地震で損壊し、2022年に改築が完了した経緯がある。
その際に大地震でも機能を維持できることを目指して免震構造が採用された。
免震というのは地面と建物を積層ゴムなどでつなぐことで、地震の揺れを建物に伝わりにくくする方法である。
建物の倒壊を防ぐだけでなく、建物内の揺れによる被害も軽減できるということで、
病院や防災拠点として重要な施設で使われることが多い手法である。
それだけの手法を取り入れた施設なのに使えなくなってしまったのだった。
何が起きたのか?
八代市庁舎の免震構造が損傷 建て替えたばかり、工事では汚職事件も (朝日新聞デジタル)
地震の揺れを吸収するためのダンパーが破損したということである。
こういう地震の揺れに耐えた結果として壊れるものというのはしばしばある。
このため建物の倒壊を防ぐという点では想定通りの機能をしたようだ。
基本的には破損した部材を交換すれば耐震性は戻ると思われるが、
問題はこういう部材を交換することができるのかということである。
さっきも書いたように免震構造は重要な施設で使われていることが多いが、
免震構造が損壊して安全性が保てない状態が長期間続くとなれば、それはそれで問題である。
倒壊が防げるのは最低限、免震構造はそれ以上を目指して導入される手法であると考えていた。
でも、もしかすると今まで気づいてなかった欠点があったのかもしれない。
これも想定を超える揺れによる被害ではないかというのが、高速道路の高架橋である。
熊本地震での高速道路の桁ズレ、「わざとズレるように設計している」はNEXCO西日本が否定 (トラベルWatch)
航空写真でも早々報じられていたが、妙見第一橋では橋桁がずれ落ちていた。
ただ、完全に橋桁が落ちておらず、これで防げた人的被害もあったのかもしれない。
想定通り機能したのかはよくわからないが、日本では橋桁に落橋防止装置を付ける設計が広く採用されている。
これは1964年の新潟地震で橋桁が落ちたことを教訓に開発された装置で、
手法はいろいろあるのだが、橋桁に何か紐状の物を付けて、橋脚や隣の桁に繋いでおく点では共通する。
こうすると万が一、橋桁が外れても完全に落ちてしまうことは防げるというわけである。
というわけでいろいろ想定を超える事象が起きているようだ。
一方でこのような被害が起きた地域は熊本県内でも限られている。
診療を継続できなくなった病院もいくつか出てはいるが、
熊本県内の比較的近い地域の病院への転送などでカバーできている。
インフラの寸断など、広域にわたる被害が続いている部分はあるが、
電気・水道は順次復旧しており、影響範囲はだんだん狭まるのではないかと思う。
思い返して見れば2024年の能登半島地震は交通の便が悪く、
加賀地域への広域避難も容易ではなく、救援活動にも大きな制約があった。
それに比べればずいぶんよいのかなとは思う。
今回は揺れ自体の被害は甚大だけど、津波や大火事など広域で深刻な被害を出すことはなかった。
避難が続く中で新たな被害が出る可能性は当然あるけど、周辺地域でカバーできる状況であれば軽減できるのではないか。
まだ救出活動も続く状況で、それどころではないんだけど、
想定を超える地震が来る可能性に対してどう備えるのが正しいのか。
うまく働いた部分もあるのだろうし、改善できる点もあるのかもしれない。
これまでも津波では想定を超える可能性は真面目に語られていた。
その状況によっては、より高い地点、より早く避難できる地点を選ぶ必要もあるということである。
ただ、揺れについてはあまり語られていなかったように思う。
今回の地震は非常に稀なケースだとは思うが、その稀なケースでも影響を小さく抑えるにはどうするか、考えるんでしょうね。