天草の牛深と長島の蔵之元を結ぶ三和フェリーの時刻表を見ると、朝から夕方までほぼ全て80分間隔になっている。
これは一隻のフェリーが30分航行して10分で乗降してを繰り返しているためである。
基本的にこういう短距離のフェリーは両側にランプウェイが付いていて、乗り込んだ側と反対側のランプに通り抜けるように降りる。
これだと乗り降りにはほとんど時間がかからないんですよね。
だから10分で降ろして乗せてというのが余裕出来てしまうわけである。
牛深港のフェリーターミナルは道の駅になっている。よく考えればここは国道389号線の途中地点である。
ここでひと息ついてから長島に渡る人、逆に渡ってきてここでひと息つく人もいるのだろう。
登録上は国道266号線になってるみたいだけど。(牛深付近では両路線は重複している)
その道の駅には資料館があるので出発前に少し見ていた。
「軍艦長良記念館」というのがあるが、これは牛深沖で沈没した日本の軽巡洋艦で、毎年牛深では慰霊祭が行われているようである。
バイクを袋に収めて徒歩客としてきっぷを買うと、ちょうど船が到着するところだった。
船からは車がぞろぞろ降りてきて、その中には大型のトラックも。乗る方もなかなか需要旺盛である。
なんでかなぁと思ったのだけど、天草も長島も架橋されているが、それぞれ全く別の方向である。
長島に向かうのに天草を通って海を渡る、天草に向かうのに長島を通って海を渡るというのが合理的なケースがかなりあるのだろう。
徒歩客は少ないなと思ったのだが、この牛深からの便は比較的多かったようで、なぜかというと蔵之元で出水駅行きのバスに接続しているから。
牛深に公共交通で来るという点ではこれが一番楽なんですね。なるほどなぁと思いますね。
ただ、そういう用途でもないと徒歩ではなかなか使いにくい航路だと思う。
蔵之元に到着するとここから鹿児島県である。初めての鹿児島県が長島という人は天草の人でもなければなかなかないだろう。
港から国道389号線が再開するわけだが、いきなり急な上り坂からスタートする。
長島を電動バイクで走るという計画で最大の懸念は勾配である。
天草のときは海岸線を走ることで平坦な区間を多く走れたが、長島はそうもいかない。
結局色々考えたけど、国道をひた走るよりよい方法は思いつかなかった。
この国道は基本的に長島の西海岸に沿って走るルートなのだが、地形の都合上がって下がってを繰り返すことになる。
長島が火山によりできた島で全体的にゴツゴツしているようだ。
そんなので走っていたら道の駅長島 ポテトハウス望陽に到着。
ポテトってなんだ? 後でわかったのだが長島は赤土でのジャガイモ栽培が盛んで、それにちなんだ命名だったようだ。
このあたりは町のいろいろな施設が密集している。フォトスポットも整備されているが。
ここに長島町歴史民俗資料館がある。あまり人はこないんだろうなという感じである。
全体的に説明してもらったのだが、この長島というのは元々は天草の一部として支配されていた。
当然、架橋されていない時代、海を越えた天草とはまんべんなく近かったのが理由だろう。
ところが薩摩を支配する島津氏の支配下に入ることになり、以後は行政上は薩摩→鹿児島県となっている。
ただ、天草や肥前との物資の往来が多く、長島で使われていた陶器を見ると、伊万里焼、有田焼など肥前のものが多い。
どうせ海上輸送になるなら肥前と往来する方が好都合な点が多かったのかもしれない。
このことを指して「南北九州の接点・長島」と展示室には掲げられていた。
今は架橋されたこともあり、すっかり鹿児島県側の経済圏にあるわけですけど。
このさらに高台には「風車公園」というのがある。山の方を見ると風力発電用の風車が見える。
角度的に見えるのはわずかだが、全部で21基もあるんだとか。
戻ってきて再度出発、本当にアップダウンが激しい。
下り坂が続くとブレーキも相当すり減るだろうし、そこもこの車の弱いところですね。
ただ、さすが国道、集落との接続を考えなくていいところは高架橋で飛び越えている。
そんな中で対向車がなにかメロディを奏でながら坂を下っていく。
これはメロディーロードというもので、50km/h(制限速度)で下ると音楽が聞こえるように溝が掘られていると。
残念ながら上り方向にはないし、そもそもこのバイクで溝を踏むとすさまじい揺れに見舞われて音楽どころではない。
そんなこんなで進んでいくと橋が見えてきた。黒之瀬戸大橋である。この海峡が黒之瀬戸と呼ばれているのである。
歩道も付いているのだが、けっこう狭くて怖そうだなと思った。
というわけでここを渡ると阿久根市である。ちょっと寄り道しながら出水に向かう。
やってきたのは荒崎地区の干拓地である。ひたすら田畑が広がる干拓地である。
実はこのあたり、冬になると越冬するツルが大量にやってくるのである。
今の時期はツルはいないけど、鳥にとって好都合であることは確かなようで、けっこういる。
このツルのことについて 出水市ツル博物館 クレインパークいずみ で勉強することに。
出水に来るツルというのは1万羽以上に及ぶが、驚くべきはその比率である。
出水に来るツルで一番多いナベヅルは全個体の9割近く、次いで多いマナヅルは全個体の5割ぐらいが出水で越冬しているという。
いずれも絶滅危惧種のツルであることを考えれば出水の重要性がよくわかる。
なぜこんなに出水に来るのかというと、きっかけは干拓である。干拓によりできた水田がツルの越冬に好都合だったのだ。
乱獲された時期もあったが、ツルを見物するために出水を訪れる人は多く、地元の人たちもツルの保護には協力的である。
行政としても越冬期間は干拓地の田畑を借り上げ、通行規制や幕を張るなどしてツルが休めるようにして、
農作物の食害対策も兼ねてエサとなる小麦を蒔くなど、ツルにとっても過ごしやすい環境なのだろう。
一方でツル観察センターなど人間がツルを観察するための施設も整備されている。
人とツルの共存という点ではユニークな地域ではないかと思う。
展示を見た後で「ツルのVR映像見ませんか」と言われ、ツルが群がる中に設置されたカメラで撮影した映像を見た。
冬の出水に来てもこの距離でツルを観察することはできないが、遠巻きにもこれだけのツルがいる光景が見られるのは貴重だろうなと思う。
あとは明日はほぼ帰るだけである。その帰るだけってのが長いんだけど。
電動バイクというのはいろいろ制約は大きいのだけど、こうして島原・天草を中心に巡ることができたのはよかったなと思う。