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のれん はいつしか消えるものか

企業会計の用語で「のれん」というものがある。

無形資産の1つで、企業買収に伴って発生するものである。

会社を買収すると、負債や有形・無形の資産はその時の時価で評価し直して、買収した会社の負債・資産に加算される。

ところが、こうやって時価で評価し直しても 資産-負債で計算される純資産 と 買収に要した費用は一致しない。

この差額をどうするかというと、「のれん」という無形資産として計上するのである。


問題は、買収時に計上した「のれん」をその後どうするかということである。

実は 日本基準 と 国際基準・米国基準(日本の企業はいずれかを選択できる)で違うのである。

日本基準では、のれん は最大20年かけて償却することになっている。

のれんが500億円で、10年で償却すると決めたら、(おおざっぱに言えば)毎年50億円の費用を計上することになる。

償却費というのは費用として計上するけど、それ自体は出費ではないというのはポイントである。

一方、国際基準では、のれん を定期的に償却する必要はない。


ただし、日本基準でも国際基準でも、資産の収益性が下がったときは、回収見込額まで減損する必要がある。

製品Aの製造のために工場に生産設備を導入したが、その後にAの市場価格が下がって、想定より儲からなくなってしまった場合、

この生産設備を使って回収できる金額を改めて見積もり直して、帳簿上の価値をそこまで減額しなければならないと。

この減額した分は損失として計上することになる。(日本基準では特別損失になる)

日本基準で減損会計が導入されたのは2005年のことで、国際基準にならって導入されたとのこと。

ちょっと考えは違うが、収益性が下がった資産は減損するというのは共通している。

これは のれん にも言えることで、特に国際基準では のれん が減価するのは減損のときだけである。


のれん とは何なのかというと、買収した会社のブランド力 など、資産として現れない会社の稼ぐ力だと説明されている。

かつて日本基準では、買収時に発生した無形資産は のれん としていっしょくたに計上することも多かったようだ。

日本基準では のれん は定期的に償却されるので、あまり厳密に言わなくてもよいと考えていたのだろう。

一式まとめて耐用年数を定めれば、だいたいうまくいくだろうと。厳密ではないが正しそうだ。

一方で国際基準では、商標権だとか特許権だとか顧客基盤とか、分類できるものは分類して、それぞれ耐用年数を決めて償却しろとなっていたらしい。

分類しきれない無形資産は のれん として計上して、定期的な償却はなし、すなわち耐用年数なしと扱うわけである。


買収した会社が持っていた稼ぐ力が何年で失われるかというのはわからない話である。

生産設備の摩耗や販売用ソフトウェアの陳腐化というのは、見積もるのはそんなに難しくないが、

会社の摩耗なんていうのは定量的に表すのは難しい。かといって、永遠に持続するというのは、現実的な話ではない。

摩耗した生産設備を補修するように、買収した会社も継続的な投資があってこそ稼ぐ力は持続するわけである。

日本基準では買収時に手にした のれん はいつか失われるので、20年以内の期間を決めて償却しなさいと言っているのだろうと。

一方の国際基準では、のれん は自動的に失われるものではないが、収益性が下がれば適宜減損しなさいと言っている。


ただ、収益性が下がったと認識されなければ、永遠にのれんは持続するので、巨額の のれん が計上され続けるわけである。

武田薬品工業(国際会計基準を採用)は、資本の合計が5.2兆円に対して、のれん が4.1兆円となっている。

Shire社を買収したときに発生した のれん と、Shire社がもともともっていた のれん が合算された結果、こんなことになったそう。

武田もShireもこれまで買収を繰り返して、のれん が自動的に償却されることなくやってきて、さらに新しいのれんが1兆円ほど。

2019年度の武田薬品の当期利益のうち、Shire社買収の一時的な影響を除くと4130億円だそう。

10年分の利益を食い潰しうる のれん を持っているということで、けっこうなものである。

というか、Shire社買収で手にした のれん以外の無形資産の償却費だけでも、年3300億円だそうだから、すさまじい数字だ。

あまりに無形資産の償却費が多すぎるので、償却費などを除外した「Core営業利益」なんていうのを算出しているほど。

のれん の償却もしなければ、無形資産の償却費にも目を背けるのはあんまりだと思うのだが、償却費は会社にとって出費ではないのも確か。


なんでこんな話を書いたかというと、とある会社が のれん を減損することを発表していた。

どうも数年前に買収した会社について、想定より収益が上がっておらず、減損することになったと。

買収時に今後何年間でこれだけの収益が上がるという見込みを立てていたのが、市況の悪化で外れたと。

想定からは外れたものの、買収した会社の事業部門によっては堅調に推移しているようだし、

買収した会社の顧客基盤を生かして、既存事業の方で売上が上がっていたり、事業別の収益ではわかりにくい効果もあるよう。

固定資産の減損を決めるのは監査人で、監査人としては想定より収益が上がらないのをみれば、減損を提案するしかない。

その会社は日本基準なんだけど、減損も悪い話ばかりでもない。

確かに減損した年度は損失が計上されるが、その後は のれん の償却費が減少して、利益が押し上げられるわけである。

その年度に減損に耐えられるだけの利益が出ていれば、対外的な説明はなんとでもなると言える。


国際会計基準でも のれん の償却を導入する案があるようだ。

巨額の のれん が持続し続けるということは、いつ巨額の減損損失を出すかわからないということ。

それならば日本基準で導入されている のれん の償却というのは理にかなった話ではないかと。

買収で500億円の のれん が発生して、5年後に将来の回収見込みは100億円しかないと認識したら、国際基準では400億円の減損である。

一方、日本基準で10年で償却していれば、その時点の のれん は(おおざっぱに言えば)250億円なので、150億円の減損である。

多分、この計算で正しいと思うけど、全然インパクトが違いますよね。定期的な償却でリスクが低減されたということだ。

もっとも、のれん の償却という概念のなかったアメリカやヨーロッパの企業には抵抗が強く、具体的な導入見込みは決まっていないようだが。


会社というのは、基本的には帳簿に現れない稼ぐ力を持っているものなんですよね。でも、これを帳簿に書くことは許されない。

だから普通の会社は のれん というものはない、というのが日本の会計基準の背景にはあるんじゃないかなと。

企業買収では、それが金額として明るみになってしまうから、のれん というのが帳簿に見えてしまうと。

もしも、のれん という資産を認めなければ、稼ぐ力を表すはずの金額は単年の損失になってしまう。

それこそ実態に合わないので、のれん の存在は認めるけど、あくまでも一時的なものなので、20年以内で償却しなさいと。

そう考えると納得感は高いと思うが、世界的には一般的な考えではないのが悩みどころ。


Author : Hidemaro
Date : 2020/02/07(Fri) 23:53
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