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水素で聖火を灯す?

来年には東京でオリンピック・パラリンピックが開かれる。

この聖火の燃料に水素を使うということがにわかに話題になっていたが、

今さら出てきた話ではなくて、だいぶ前から考えられてきたことらしい。

東京の聖火は水素で、トヨタめざす 近く点火実験 (朝日新聞)

こういう記事が2017年に出ているぐらいなので。


ただ、水素というのは炎がとても見えにくい。

かつて照明によく使われていた ろうそく はススを出しながら燃えるので、炭素の発光により明るく光る。

都市ガスやLPガスであっても、完全燃焼しているときは、青い炎になり、けっこう見えにくい。

一般に炭素分が少なくなるほど、炎というのは見えにくくなる。

そして、炭素を一切含まない水素の炎は、ほとんど見えない。

それは聖火としては致命的な問題だが、解決策として炎色反応というのが考えられていて、先の記事でも、

見栄えするよう、水素の炎にさまざまな色をつける演出も考えている。

と書かれているが、これは炎色反応を起こす物質を炎に加えることで、炎を見えるようにするということ。

ナトリウムなら黄色、カルシウムなら橙色、カリウムなら紫色、コスト面からすればこの辺ですかね。


このような提案がなされた背景には、水素が燃えるときに二酸化炭素を発生しないということがある。

聖火の燃料としては都市ガス(天然ガス)やLPガスが一般的で、1998年の長野では都市ガスが使われている。

天然ガスは一般的には環境にやさしい燃料として認識されているが、石炭ほどではないにせよ二酸化炭素を発生するのも確か。

水素を燃やすのならば、燃やすことによって二酸化炭素が発生することはない。

確かにそれはその通りだ。でも、その水素はどうやって作るのだろう?


日本での水素製造の大半を担うのが岩谷産業(イワタニ)である。

イワタニといえば、家庭用のカセットボンベで有名で、LPガス関係の事業が占める割合が高いのは確かだが、

それと並んで存在感があるのが産業ガスの事業だ。

イワタニが手がけている産業ガスとしては、酸素・窒素・アルゴン・ヘリウム、そして水素がある。

酸素・窒素・アルゴンは材料が空気ということもあって手がける会社は多いが、水素とヘリウムはそうもいかず、

水素とヘリウムはそれぞれ国内50%以上のシェアを占め、特に液化水素は国内唯一のメーカーとして大きな存在感を持っている。

液化水素はロケット燃料としての利用が先行したが、現在は水素の輸送手段としても活用されている。


イワタニのWebサイトには水素事業について充実した紹介ページがある。

水素とイワタニ

水素エネルギーハンドブックには現在のイワタニの水素の製造方法が記載されている。

ハイドロエッジ(堺市)での製造方法は天然ガスから水素を作って精製していると書かれている。

同工場では空気を冷却して液化窒素・液化酸素・液化アルゴンの製造を行っているが、この冷却にLNGの気化熱を活用している。

すなわち、イワタニはLNGを購入して、気化したLNGから水素を、気化熱で空気分離ガスを製造するという工夫をしている。

ただ、この方法では天然ガスから水素を取り出した残りとして二酸化炭素が発生する。

岩谷瓦斯千葉工場と山口リキッドハイドロジェンでは、隣接する他社の食塩電解工場から水素を買って、これを精製して製造している。

隣接する食塩電解工場が大量の電気エネルギを投じた副産物を買っていると言うことで、合理的ではある。

ただ、食塩電解というのは、苛性ソーダや塩素の需要次第で動くもので、水素製造の都合で動くものでもないだろう。


水素の製造方法は、基本的には化石燃料を使う方法か、電気分解による方法か、この2つである。

バイオマスの発酵により水素を得る方法もあるが、これは例外的なものだろう。

電気分解というのも電気エネルギーを何で得るかと考えると、今はほとんどが化石燃料の燃焼である。

食塩電解のように他の目的を持って電気分解をするなら、合理的ではあるけど、水素製造のためだけに電気エネルギーを使うのは無駄である。

ただ、最近では季節・時間帯によっては太陽光発電のエネルギーが余剰になるなどの事態も発生している。

このような再生可能エネルギーの余剰分を使って電気分解するならば、電気分解による水素製造も正当化できる。


よく語られるストーリーは再生可能エネルギーでの電気分解による水素製造だが、

それではとても賄えず、本命は化石燃料からの水素エネルギー製造のようである。

オーストラリアで低品位の褐炭を使った水素製造に向けた動きがあるようだ。

褐炭は石炭ではあるが、水分が多く運搬が難しく、その場で燃やすぐらいしか使い道がなかった。

そこで、その場で褐炭を不完全燃焼させる。これにより一酸化炭素、メタン、水素などができる。

一酸化炭素は水蒸気と反応させて、二酸化炭素と水素を作ることができるので、実質的に水素の原料である。

こうやってできた水素を液化して、日本に輸出するということである。


エネルギーの有効利用としてはよいアイデアだが、結局は石炭を燃やしただけの二酸化炭素が発生するんだよね。

そこで、二酸化炭素を地下に封じ込めるCCS技術との併用が前提となっているようだ。

水素製造のためには二酸化炭素を分離する必要があるので、その点ではCCSとの組み合わせは相性が良い。

近くにある油田に二酸化炭素を注入し、これで石油を押し出すことと、二酸化炭素を地下に貯留することを目指しているようだ。

こうやって製造された水素は「CO2フリー水素」として取り扱われるそうである。


そこまでして水素を使うことに意味があるかという話だけど、やっぱり燃料電池でしょうね。

関空にイワタニが水素ステーションを設置して、フォークリフトなどの燃料に使っているわけだけど、

実はもともとフォークリフトの動力源には蓄電池ががよく使われていた。蓄電池なら排ガスは出ないはずだが……

ところが蓄電池にとっての問題は充電時間、そのため軽油を燃料とするフォークリフトを併用したりしていた。

これが水素を燃料とすることで充填時間が短縮され、燃料電池は水以外のガスを出さず、環境負荷が低い。


それに比べれば、たかが炎のために水素を使うのは、そこまで意味はないような気がするけど、

炎を出すためには、何らかの可燃性ガスが必要で、その中では水素が理想的にはもっともよいという言い方はできる。

現状なら天然ガスを燃やすのが、もっとも合理的なのは疑う余地はない。

ただ、来たるべき水素社会においては、これが理想というのは必ずしもおかしな話ではない。

といっても、石炭や石油ならともかく、天然ガスを直接燃やさなくなる時代なんて、なかなか想像できませんけどね。


Author : Hidemaro
Date : 2019/07/28(Sun) 23:49
電気・数学・物理 | Comment | trackback (0)

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