大学ファンドの恩恵を受けるには

こんなニュースがあったのですが。

東工大と医科歯科大 近く統合に向けた協議開始へ (NHK)

東京工業大学と東京医科歯科大学が法人または大学の統合に向けて動くか? とのこと。

もともと関係の深い大学ではあり、大学ファンドの助成を受けられる国際卓越研究大学の認定を狙ったものではないかとのこと。


この大学ファンドと国際卓越研究大学というのはどういうものかという話ですが。

大学ファンドの創設について(pdf) (文部科学省)

大学の教育・研究活動の充実のためには金が必要だが、社会保障関連費で火の車の日本政府が出せる金は限られる。

そこで、10兆円の大学ファンドを科学技術振興機構に作り、このファンドの運用益から大学に助成することで教育・研究活動の充実を図ろうという話が出てきた。

安定した資金が確保できることで、長期にわたる人材確保や設備投資ができるということである。

従来はプロジェクトベースの研究資金に頼るところが多く、研究者の身分の不安定化を招いてきたことへの反省もあるんだと思う。


ただ、このファンドの助成を受けられる大学は5校程度になるのではないかとのこと。

さらに国際卓越研究大学の認定を受けるためには、年3%の事業成長が求められるという。

というのもこのファンドの原資となる10兆円は財政投融資、すなわち借入金なんですね。

事業期間は50年と長く、できるだけ元本に手を付けず、運用益を大学への助成に回すという想定だが、借入金なので返さないといけない。

この大学ファンドの図には大学からファンドに向けて「資金拠出」という矢印があるが、

ファンドからの助成金で教育・研究活動を充実させた先には、集めた資金を積み立てて、

自ら積み上げた基金の運用益で教育・研究活動をさらに充実させることが求められるというわけである。

ファンドから助成された資金には返済義務はないが、事業成長により将来的には自力でファンドを充実させられる大学でなければならないということが問題である。


このことから、単純に研究活動の充実度が上位の大学が認定される形にはならなさそう。

10兆円ファンドの「稼げる大学」に5大学検討 選択と集中へ不安も (朝日新聞デジタル)

大学にアンケートを行ったところ、この時点で前向きな大学は5つあったそう。

名古屋大学・東北大学・早稲田大学・大阪大学・東京農工大学 である。

やはり認定のハードルの高さが課題で、規模や内容面でそもそも見合わない大学も多い。

3%の事業成長が求められるということで、これがかえって制約となり「毒まんじゅう」を食わされることにならないかという警戒もあるようだ。

教育・研究活動の充実には金は欲しいが、なかなか難しいと。


そんな中で実は東京工業大学と東京医科歯科大学は前向きに考えていたのではないかということである。

東京工業大学は理学と工学ということで自然科学の基礎から応用まで扱い、

また東京医科歯科大学もまた自然科学の応用分野の1つである医学を扱う。

医工連携という言葉もよく聞かれるように、自然科学の応用という点では親和性が高い。

もともと関係は深いと書いたが、両大学が1つの組織となることで、

国際卓越研究大学の認定条件である3%の事業成長に向けたストーリーを描きやすくなる。

それを抜きにしても研究基盤の強化という点ではメリットがあるんじゃないかということである。


ところで、かつては国立大学法人が合併する場合、大学も合併することになっていた。

2007年に大阪外国語大学が大阪大学と合併し、大阪大学の外国語学部と言語文化研究科の一部に継承されたのがその一例である。

ただ、2019年以降は1つの国立大学法人が複数の大学を設置できることとなり、

現在は3つの国立大学法人で複数の大学を設置している。

  • 東海国立大学機構 : 名古屋大学・岐阜大学
  • 北海道国立大学機構 : 帯広畜産大学・小樽商科大学・北見工業大学
  • 奈良国立大学機構 : 奈良女子大学・奈良教育大学

大学自体は統合せず法人だけ統合するのは、地域性や専門性という観点だろう。

東海国立大学機構の2大学はそれぞれが総合大学で、注力分野は似ているが、名古屋・岐阜と立地が異なるので、その地域性を重視したとみられる。


奈良国立大学機構の2大学はいずれも奈良市で近接していて、教育系の大学同士、

これだけ見るとなぜ2つある? と思うけど、一方が女子大学ということが大きい。

国立の女子大学ということで、女性リーダーの育成に果たす役割が多く、理学部と工学部(2022年新設)もあり、女性研究者・技術者の育成という役割もあると。

このため奈良女子大学の看板を下ろすという選択は取れなかった。

逆に奈良教育大学を集約するという選択肢もとれない。こちらは男女共学だし。

一方でいずれも比較的規模の小さい大学で、共通点も多いので、法人統合による効果も大きいと考えられたのだろう。

ということでこちらは女子大学という専門性が重視された結果ですね。


東京工業大学と東京医科歯科大学については、大学統合・法人統合どちらの可能性もあるようだ。

国際卓越研究大学の認定がどういう仕組みなのかよくわからないけど。

1つの大学になれば、その大学で認定を取りに行けばよいわけだが、

法人統合の場合、2つの大学が連名で認定を取りに行くのか、

あるいは一方の大学が認定を受けて、他方の大学と連帯するという形になるのか。

そういえばさっき認定に前向きな大学に名古屋大学ってのがあったけど、

同一法人の岐阜大学との関係はどうなんだろ?

大学が認定を受けると国立大学法人の全体の経営に影響するのは確からしいが。


東京工業大学と東京医科歯科大学の統合説はさておいても、

大学ファンドは恩恵を受けられればありがたいけど、難しいというのが現在の各大学の認識なのかなと。

借入金でファンドを作って50年は面倒見るから、その間に自力で基金を積み立てられる大学だけ寄ってこいというのは厳しい。

認定を受けなければ「3%の事業成長」など求められることはないが、金がなくては教育・研究活動の充実もままならない。

というわけで行くも地獄、行かぬも地獄ということになりかねないと。

もっともこういう選択肢があるのは研究活動が極めて充実した一部の大学のみで、

「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」という、特定分野あるいは地域に特化した大学向けの制度に期待している大学の方がはるかに多い。

軽症者なら受診するなというが

最近こういう話が報じられたところだが。

「65歳未満で軽症、基礎疾患なし」なら受診避けて 厚労相呼びかけ (朝日新聞デジタル)

「症状が軽く65歳未満で基礎疾患がなければ、慌てて医療機関を受診することは避けること」という話である。

すでに発熱外来は受診困難な状態になっており、できるだけ中等症以上あるいは重症化リスクの高い人の受診につなげたいという意図があるのだが、果たしてこの意図が正しく伝わっているか。


そもそも新型コロナウイルスの診断・療養体制はどうなっているかという話である。

療養者・濃厚接触者の方へ (東京都福祉保健局)

この下に「新型コロナウイルス感染症に対する保健・医療提供体制」という図がある。

ここに記載されたフローによればこんな感じである。

  1. 発熱相談センターから紹介を受けて、診察・検査医療機関を受診
  2. 陽性の場合、医療機関が継続して観察する場合と保健所に引き継ぐ場合がある
  3. 保健所で入院要否を判断する
  4. 入院が必要な場合は医療機関、酸素・医療提供ステーションへ
  5. 宿泊療養が必要な場合は宿泊療養施設・感染拡大時療養施設へ
  6. 自宅療養の場合は、入院に移行する可能性が高い場合は保健所で対応
  7. それ以外はフォローアップセンター(50歳以上・基礎疾患)、自宅療養さポートセンター(自身で健康観察)

という形で極めて階層化されているわけですね。


このような体制を取る理由は入院が適するが入院が難しい患者が多いことに尽きる。

新型コロナウイルスの患者は軽症・中等症I・中等症II・重症の3区分であるが、

酸素吸入を要する中等症IIの患者でも入院が難しい状態になっている。

このため酸素・医療提供ステーションがあるのだが、まぁ野戦病院だね。

ということは肺炎のある中等症Iや、あるいは軽症でも他の病気との関係で危険と判断されても、これで入院は難しいわけである。

というわけで、宿泊療養か自宅療養(往診が前提だろう)が選ばれるわけだが、急変のリスクが常に伴うので大変である。


だから宿泊療養というのもなかなかありつけないんですよね。

・コロナの症状がある方で、50歳以上の方や心疾患、呼吸器疾患又は糖尿病等、重症化リスクの高い基礎疾患のある方(なお、宿泊療養施設では対応困難な慢性肺疾患、心血管疾患を有する方、内服等でコントロール不能な糖尿病の方等は除きます。)
・同居の家族に重症化リスクの高い基礎疾患のある方や妊婦がいて、早期に隔離が必要な方

宿泊療養施設では中和抗体薬の点滴での投与に対応できる体制があることも、宿泊療養を重症化リスクの高い患者に割りあてている理由の1つである。

このことから本人が無症状またはごく軽症で、専ら同居者への感染拡大を防ぐためには感染拡大時療養施設が使われているようである。

かつての宿泊療養というのはこの点が重視されていた気もするが。


これらに当てはまらない場合、自宅療養以外の選択肢はないのだが、

そもそも新型コロナウイルスの軽症というのが肺炎がないという程度の意味で、高熱などで大変苦しい患者も多いわけである。

そんな中で発熱外来が逼迫しているから、受診するなというのは、

理屈としては正しくてもなかなか厳しいことではないかなと思う。


ところで新型コロナウイルスについて、宿泊療養や自宅療養であっても、生命保険では入院として扱われることが一般的だという。

これは本来入院を要すると判断されたにもかかわらず、入院できず待機施設・宿泊療養・自宅療養となるケースが多いことなどから決められたルールという。

しかし、入院した場合は医療機関から入院期間を表す書類が発行されるが、

入院していない場合は医療機関は書類を発行できない。

そこで入院証明書に代わるものとして、保健所や宿泊療養施設を管轄する行政機関で療養証明書を発行しているようである。

療養証明書が必要な方へ (東京都保健福祉局)

ただ、これが患者数の激増でものすごく逼迫しているらしい。


あと、ごく軽症であっても保険金目当てで医療機関を受診する人が出てくるという問題もあって、これが冒頭の呼びかけの要因の1つでもある。

そもそも現在、新型コロナウイルスということで特効薬が使えるのはかなり限られている。

これは重症化リスクの高い軽症患者に対象にしていることと、併用薬の制限や催奇性などの課題が多いことがある。

塩野義製薬が一般的な軽症患者を対象にした薬の承認を求めているが、有効性を示すデータに疑問符が付いており承認の見込みが立っていない状態である。

このことから基本的に重症化リスクのない軽症患者は対処療法しかない。

服薬でリスクに見合った効果が得られることが確認できている条件は限られているということである。


というわけで大変難しい状況である。

新型コロナウイルスはいつか普通の風邪になるのではないかと言われていたが、

そもそも夏のこの時期にマスク着用の励行や会食を控えるなどの対応が行われていても、これほどの大流行をすることがまず異常である。

その上、軽症と言われる中でもひどい高熱に見舞われる患者が少なくないのに、

まず軽症だと思っても症状が急変して重症化することもまぁあるわけだ。

このあたりはインフルエンザのような対応が難しい要因の1つである。


そうはいってもこの患者数激増に対して回らないのは問題であり、

このことから「陽性者登録センター」という新しいシステムが動き始めた。

東京都「陽性者登録センター」開設 自主検査しオンライン登録 (NHK)

これは抗原定性検査や行政の無料検査で陽性となった人が、医師の診察によらず患者と登録できる仕組み。

登録されると自宅療養さポートセンターによる支援が行われる。

対象は当面は20歳以下で重症化リスクが低いことである。対象者は限られるが。

ただ、課題もあって、それは検査キットが必要なことで、最近は薬局での入手も困難になっているようである。

この制度が始まるに当たって、東京都では依頼すればキットを翌日に届けてくれるシステムを作ったそうだが。

家庭内に感染者がいる場合など、検査によらず症状のみで「みなし陽性」として診断することができるルールがあるが、これは医師による診断に限られるようだ。

最低賃金が上がっても働けないとな

これ自体はまぁこういう結論にしかならないと思うんだけど。

最低賃金 過去最大“全国平均31円引き上げ”答申 厚労省審議会 (NHK)

ただ、比較的低賃金の労働者にこの恩恵が及ぶかというと、一概には言えない気もする。

どうしても雇用によらざるを得ないところは、最低賃金に連動すると思うが、

やはり脱雇用というのが今のトレンドではないか。


1つはギグワーカーとか、業務委託で働く人が増えているということ。

効率よく働ける人であったり、制度上の工夫で手取りを増やせる可能性はあるし、

発注側にとってみれば、最低賃金で人を雇うより低コストにできる可能性があり、

そういう状況だと最低賃金引き上げの恩恵も乏しいということになる。

もう1つはコンビニや飲食店などでアルバイトなど雇うにも高いので、人を雇うのを減らす動きがあると。

その分は経営者が働いて穴埋めしたり、営業時間の短縮などで対応することになろうが。

従来そうして働いていた人にとっては働き口自体がなくなる方向である。


ところで一定時間以上働くサラリーマンであれば、労使折半で健康保険・厚生年金・雇用保険に加入することになる。

これは大変心強いという話をこれまでも書いている。

サラリーマンの社会保険にはある下記のようなものはないから。

  • 健康保険の傷病手当金
  • 障害厚生年金 (障害基礎年金より支給対象が広く、給付水準も高い)
  • 雇用保険の失業給付・育児休業給付金

こういうものを自営業者が備えようとすると、とても大変である。

(税収は増えるが……)

社会保険の適用範囲拡大によってパートタイムで働く人もだいぶ対象になった。

労使折半でも保険料負担はあるが、いざというときにはかなり役立つ。

雇用が安定していることにはそれ以上のメリットがあるということである。


ただ、雇う側にとっては困った話でもあって、労使折半の保険料の負担は重いし、解雇規制も厳しいので、人を雇うことのハードルが高い。

それでも必要な人は雇うわけですが、業務委託の活用ということも考えるわけである。

業務委託が安上がりであるかというと一概には言えないところもあるだろうが、

ただ、業務量に応じて柔軟に変更できたりするメリットもあるでしょう。


そういう働き方よりは最低賃金を割ってもサラリーマンの方がよいという人は少なくないだろうでしょうけどね。

従来通りの働き方で最低賃金に連動して給与が増えれば、それが一番よいが、

それが実現できないとなったときにどうなるのがよいかは難しい。

最低賃金が上がると、それより安い時給で雇用するということはできなくなる。

これに対して実質的に最低賃金以下の単価で業務委託するというのは、それは最低賃金規制に対して本末転倒ではないかという話はある。

しかし、例えば副業としてやるならば、本業で社会保険に加入していれば、副業で新たな社会保険料負担が発生しないので、それでもメリットはあるかもしれない。


いずれにせよ、雇用に対する最低賃金だけでは追いつかず、

業務委託に対する最低工賃とかも考えないといけないのかもしれないが、しかしこれは業務内容や契約によっても様々だから難しい。

今でも家内労働法の規定で内職の最低工賃というのを定めているのだが、最低工賃の定めのない業務だと無力である。

ましてやコンビニや飲食店の経営者ともなれば、これは経営者自身の働いた時間に見合った収益が出るかというのはまたまた別の話である。


というわけで大変難しい問題である。

最初にも書いた通り、最低賃金の決め方としてはこの引き上げ幅にならざるを得ないわけである。

それに応じて物やサービスの価格を引き上げて対応して欲しいということで、

確かに価格には最低賃金に連動する部分はあるので、ここは無意味ではない。

でも企業間の競争の中で全てが全て価格転嫁できるわけではない。

それができないなら事業を畳んでしまえとなれば、単純に雇用は失われるし、

ギグワーカーの活用などで、実質的に最低賃金より安くても働きたい人を集めて対応することもある。

そうすると結局は最低賃金引き上げの恩恵がないことになる。

こういう話は今に始まったことではないけど、段々厳しくなっているのではないか。

地表面沈下が怖くてトンネル工事が難航か?

先日こんなニュースを見た。

5号線「二葉山トンネル」工期延長 追加工事費用はJV負担を (NHK)

公共工事にまつわるニュースでは時々みる話だが、

しかしいろいろ調べてみると工期の遅れの要因は住民団体にあるかもしれない。

別に工事を妨害したとかそういう話ではないんですけどね。


そもそも広島高速5号線とはどのような路線かという話だが、

広島駅の北側から広島高速1号線と接続する温品JCTに至る道路である。

広島高速1号線の先には山陽自動車道と接続する広島東JCTがある。

広島といえば広島空港が広島市街からかなり離れた三原市にあるのだが、

都心から空港へのアクセスに使われるルートこそが広島高速1号線~山陽自動車道のルートである。

このルートを都心直結化するためのルートこそが広島高速5号線である。

その広島高速5号線のルートには山があるので、これを抜けるトンネルが必要である。

そのトンネルこそ二葉山トンネルである。


実はこのトンネル、当初は山岳トンネルでは最も無難なNATM工法が想定されていた。

ところが実際には大半の区間でシールド工法が採用された。

シールド工法というと地下鉄や海底トンネルのような軟弱地盤で使われることが多い。

最近は市街地を地下トンネルで通り抜ける都市高速も多いので、都市高速ではそれなりに見る方法ではあるが。(首都高速中央環状線の山手トンネルなど)

それにしても山岳トンネルではあまり聞かんけどね。


どうしてシールド工法が選択されたか? それはトンネル周辺が都市化しているからである。

冒頭に出てきた市民団体はこのトンネルの計画時から行政に働きかけを行っていた。

その1つが地盤沈下への懸念である。

実はさきほど紹介した広島高速1号線の中に福木トンネルというのがあるのだが、

山肌に住宅が立ち並ぶを突き抜けるトンネルなのだが、最大18cmの地表面沈下が起きて、住宅に被害が出ている。

二葉山トンネルも似たような性質があり、何らかの対策が迫られたわけである。


日本ではNATM工法は都市部でもけっこう使われており、ノウハウはある。

このため、NATM工法でも地上に影響を与えず工事できるという主張はある。

ただ、時にこういう大惨事も起こしているわけですが。

NATM工法は期待されていた

七隈線の博多駅周辺の工事で道路が陥没した事故がありましたよね。

固い岩盤があるので駅部分を効率よく作るにはNATM工法が最善と選ばれたが、

実際には岩盤と砂と境目が複雑で、そこに触れて陥没事故を起こしたと。

その後、復旧に努め、工事も立て直し、来年3月に開業予定である。


検討の結果、広島市・広島高速道路公社はシールド工法を選択した。

NATM工法でも一応問題はないが、シールド工法の方がより影響が少ないのは確かで、

これまでの経緯を考えれば、これが最善の選択であろうとの決断だったようだ。

工事費用がかさむのは課題だが、住民の理解なくして工事はできない。

こうしてシールド工法が選択され、2018年に掘削開始、2020年度末の完成予定だった。

建設費はかさんだが無事に完成してくれればよかったのだが、

掘削開始からまもなくシールドマシンが損傷して工事中断となってしまった。

原因は想定より堅い岩盤にあったようだが、未だに効果的な対策ができておらず、

工事は進んでは止まるという状況を繰り返し、当初計画を過ぎた現在でも全体の半分ほどだという。


工期が延びれば工費も増えるということで、これにどう対応するかが問題で、

建設会社は増額を求めているが、合意に至っておらず、建設工事紛争審査会による調停が行われることになっている。

発注者側の事情、あるいはやむを得ない理由での費用増であれば、これは受け入れる必要があるが、

そもそもこの工事は当初の見積もりにも問題があり、200億円で契約した後、契約金額を287億円に増額するという問題を起こしている。

そのような経緯も工費増額に対して合意できない要因になっているとみられる。


シールド工法を選択したことに全ての理由があるとも言えないのだが、

特注のシールドマシンを作って、それでトンネルを掘り上げるシールド工法では地質の変化に対応しにくかったのはあるんじゃないかと思う。

NATM工法はいろいろな補助工法との組み合わせで、難しいトンネルの工事にも広く活用されるようになっている。

都市部のトンネルにも対応できる柔軟性はそういうところにも生きたのではないか。

そこまでのことを当初予期できたかというと、これも難しいのですが。


というわけでこれが冒頭に「工期の遅れの要因は住民団体にあるかも」と書いた経緯である。

住民団体が地表面沈下への懸念を強く示したことを受けて、

このような条件では一般的ではなく高価なシールド工法を選択することとなり、

想定と異なる地質に工事が難航し、工期を大幅オーバー、費用も?という状況である。

とはいえ、シールド工法を最終的に選択したのは広島市・広島高速道路公社であり、

適切な条件を見積もれなかったことに建設会社の非がないわけはないだろう。


果たしてどうなるんでしょうね?

しかもこのトンネルが完成しても暫定2車線、完成にはもう1本トンネルが必要になる。

1本目のトンネルを掘ったときのデータを元に2本目のトンネルの計画を立てるので、

基本的に見積もりの精度はよいと思うのだが、これがどうなるか。

1本目が完成しないとそれどころじゃないですけどね。

死刑されては神格化されかねない

朝のニュースでこういう話があって、そうか6年も経ったのかと。

相模原障害者施設19人殺害事件から6年 再建された施設で追悼式 (NHK)

事件後、施設の在り方について議論もあったが、結局は重度の障害者のすみかというのは同様の施設によらざるをえないという結論になった。

規模を縮小して現地再建ということになり、昨年8月に開所している。


当時、このBlogではこういう記事を書いている。

ご存じの方も多いだろうし、この記事にも書かれているけど、容疑者はもともとこの施設で働いていた。

すなわち、障害者福祉の最前線にいた人で、きっと多くの障害者を見てきたはずだ。

そういう人がこういうことを決断したということは非常に重いメッセージだ。

ただ、その手紙をよく見てみると「意思疎通がとれない人間を」とか「重度・重複障害者を」とかかなり限定が入っていることに気づく。

(社会で受け入れできる限界はあるか?)

共生社会のためにやるべきことはまだたくさんあると思うわけだけど、

しかしこの事件を起こした人というのは、障害者福祉の最前線で働いていた人で、

その人が重度障害者について、社会で受け入れがたいと語り事件を正当化することは、どうにも考えさせられることである。


現実にそういう限界があるのではと裏付ける1つがこのことである。

犠牲者のうち、遺族の意向を受けて7人の名前が刻まれた「鎮魂のモニュメント」

亡くなったのは19人、でも慰霊碑に刻まれたのは7人の名前だけである。

確か事件直後に名前が明かされてたのは1人とかそんなんじゃなかったっけ?

障害者施設の入所者ということで警察から公表するのが差し控えられたのはともかく、

最終的に慰霊碑に名前を刻まれることすら拒んだ家族がこれだけいたのかと。

それが1人とか2人でなく、19人中12人ですからね。


というわけで大変難しい問題を突きつけた事件である。

当時もそういうことは思ってたけど、6年経って改めて難題だと思った。

6年経過したが重度障害者を取り巻く環境はこれといって変わったわけでもない。

配慮があれば働ける程度の障害者にとっての居場所は増えてきていると思う。

でもそういう受入の限界を超えた障害者を取り巻く環境はこの通りである。

むしろ入所施設に入る障害者が減り、非常に限られた施設に集約される傾向である。

当施設が規模を縮小したとはいえ現地再建を選んだことは、それを如実に表すものである。

代替できる入所施設も乏しく、だからといって施設を出ることもできないと。


事件後、容疑者は裁判にかけられ、2020年に死刑が確定している。

まだ執行には至っていないが、死刑となると神格化されやしないか。

それは先の記事で容疑者からの手紙をNHKが公表したことについて「公共放送がテロを扇動するのか」という感想を書いたとおりである。

重度障害者を排除したことを肯定的に見る人は実はけっこういるのではないかと。

そういうことをおぼろげに思っていたところで、先日、奈良市で安部元首相が襲撃される事件があった。

報われない大量の輸血

この事件には被害者・加害者ともに神格化の懸念があり、

特に被害者である安部さんについてはその懸念は現実のものになっている。


まず被害者である安部さんは、長きにわたり総理大臣を務めたことは大きいが、

やはりそれだけに自民党内、あるいは支持者の中では特別な思いがあったようである。

それだけに死後まもなく国葬を求める声が挙がったわけである。

内閣法制局から報告「それなら国葬で」 岸田首相、急な決定の舞台裏 (朝日新聞デジタル)

総理大臣経験者でさえ異例の国葬の実施が決断されたわけだが、

これ自体は外国要人の弔問が多く見込まれるという実務的な理由が大きいと思う。

そもそも従来よく行われていた内閣・自民党合同葬もある種の国葬ではある。

内閣府自身が行うことは異例だが、実務的にはそれだけの理由があると考えている。

(こういう理由は国会などで明確に語られたものではないが)

ただ、自民党内ではこういうことが言われてるそうである。

国葬発表後、安倍氏に近い自民党議員は「首相らに『保守派はみんな国葬にするべきだと言っている』と働きかけた。首相はよく判断した」と語った。首相は、党内外の保守派からの評価も手に入れた。

安部さんを支持してきた党内外の人たちの主張に沿って特別扱いしたのではないか。

もしそのように認識されれば、そういう人たちが安部さんを神格化していくのではないか。これが僕の懸念である。


加害者にも神格化の懸念があると書いた。

安倍氏を銃撃した山上容疑者の“減刑”求める署名が始動も「まだ起訴前」「お気持ちで司法歪める」と物議 (Yahoo!ニュース)

この背景には加害者の親が宗教にのめり込むばかりに経済的に破綻し、

このことへの報復として、その宗教とつながりがあると見た安部さんを襲撃したと。

宗教の指導者を襲撃するのは難しかったということもあるのだが、創始者の没後に分裂を起こしていることも外部の関係者の襲撃に至った理由でもあるらしい。

このような背景に理解する人は少なくないということである。


まだ起訴もされていない段階でどのような刑が科せられるかはわからないが、

やはり殺人罪の法定刑の1つである死刑ということも十分考え得るところである。

言うても被害者1人だからそこまで行かないんじゃないかという見方も多いが。

もしも死刑になり、それが執行されたとすれば、生活を破綻させた宗教に刃向かった英雄として神格化されるのではないか。

まだなんとも言えませんがね。


死刑というのはあまりいいことはない刑罰だと思いますがね。

更生困難と死刑を主張する声はいろいろ聞くけど、更生困難でも法定刑に死刑がない犯罪(例えば窃盗)とかだと選べませんからね。

死刑になりたくて凶悪犯罪を起こすような人すらいるような状況では、

死刑が犯罪抑止に貢献しているというのは完全な幻想ではないかと思う。

とはいえ、法定刑に死刑がある以上、選ばざるを得ないことはあると思う。

でもそれが本当によい選択なのか? 懸念はここに書いた通りである。

BA.5とはなんぞや

最近、新型コロナウイルスの感染者数がまた増えている。

夏休み前というタイミングであり、これといった行動の変化があったわけでもないと思うが、やはりオミクロン株の一種BA.5がすさまじいと。

この状況では全国旅行支援をスタートさせることもできず、

ローカルな旅行支援キャンペーンも続けられなくなるかもしれない。


それにしてもBA.5とはどんな変異株なのか?

基本的には今年1月頃から急激に感染者を増やしたオミクロン株ではあるらしい。

とにかく感染性が強く、とはいえかつてのデルタ株のように重症化しやすいというものでもないところが悩ましい。(ワクチン接種が進んだという要因もあるけど)

このオミクロン株の中でも変異があって、その1つが今回問題となっているBA.5である。

「BA.5」肺で増殖か 「BA.2」の18.3倍 病原性も高い可能性 東大医科研 (テレ朝NEWS)

感染性が高いというのはウイルスの排出が多いということであろう。

ある実験ではこれ以前に流行していたBA.2(これも大概感染性が強い)の18倍のウイルス量になったとのことである。

一体最初の新型コロナウイルスからして何桁感染性が増してるのだという話だけど。


特に重症化しやすいという根拠はないにせよ、従来と同程度の割合で重症化するとすれば、患者数が増えた分だけ重症患者が増えて行くわけである。

新型コロナウイルスの患者の区分としては、中等症I(肺炎がある)・中等症II(酸素吸入を要する)重症(人工呼吸器・ECMOを要する)・軽症(それ以外)に分けられる。

軽症といってもけっこう苦しいし、他の持病もある人には大変なことである。

入院できる病床が限られる中で、中等症II以上を優先して入院させるには、軽症はもちろん、中等症Iでも入院が難しいという話がある。

これは地域の状況にもよるが、やはり厳しいのが沖縄県である。

沖縄県は医療機関に手術の延期などを指示、他の病気の治療にも不便を来すようになった。

【速報】沖縄県、初の「緊急フェーズ1」に引き上げ 手術や診療制限し病床確保へ (琉球新報)

他の地域も時間の問題ではないかと思う。


どういう対策が効果的かというのもよくわからないところはある。

学校での感染が多いという話もあるから、夏休みに入るのはよいことかもしれない。

これは2つの意味があって、学校が休みになるからというのもあるけど、

学校が休みになることで、ワクチン接種に行きやすくなるというのもある。

12歳未満のワクチン接種は今年3月頃からスタートしたが、

小児科の医療機関で保護者同伴で受ける必要があり、大人の接種に比べるとどうにも柔軟性に欠ける面がある。これは仕方ないのだが。

このため夏休みまではどうにも難しい人が多かったと思われる。

従来、10代だと新型コロナウイルスに感染してもかなり軽く済むことが多かったが、最近はなかなかそうとも言えないようである。

ワクチンで感染を防ぐのは難しいが、感染拡大を抑える効果は少しあるとみられるので、この夏休みでワクチン普及を進めたいところである。


やはり宴会の取りやめなども考えていかないといけないところかなと思う。

夏休みということで親戚・旧友集まってというのを考えていた人もいるかもしれないが、なかなか危ないのではないかと思う。

その点で全国旅行支援がGOにならなかったのは一定の効果があるのではないか。

(これは旅行がダメという話ではなく、積極的に推奨できないということ)

とはいえ、それと学校の夏休み以外はこれといった策はないのも実情である。

現実的な対策はすでに大概なされているから。

それでさえこれだけ感染拡大をするというのは異常な感染症である。


打開策になるかわからないのが、オミクロン株ベースのワクチン開発である。

日本で主流のmRNAワクチンは配列を変えれば変異にも対応しやすいとは言われていて、

それがやっと実現するということなのだが……

一応、オミクロン株のウイルスに対する抗体価が増えることは確からしい。

それがどれぐらいの効果をなすのかという話でもあるし、

あるいはそれも乗り越える変異が現れるかもしれないし、正直よくわからない。


果たしてどうなるのか。

5月連休での感染拡大が心配されたが、実際はそれほどのことはなく、

それで夏休み前にこれというのは、気の緩みだとかそういう話じゃないんだよな。

本当にタチの悪いウイルスである。

埋立地1つに消防署3つ

ちょっと話題になっていたのですが。

「アイドル博」で熱中症などで複数の女性が搬送 (Yahoo!ニュース)

今日の東京はとても蒸し暑かった。(引きこもってから知らんけど)

詳細は不明だが、出演者の待機場所に空調がなく(というかテント)、

これが出演者の熱中症での救急搬送が相次いだ理由のようである。


あまりの状況に消防署もスーパーアンビュランスという大型救急車を寄越してきたという。

(救急車)特殊救急車 (東京消防庁)

過去にこの車が出動したのは、大規模な傷害事件や大規模火災など。

病気のために出動したのはおそらく初めてではないかと思う。

現場で応急手当できる体制もなかったということですね。

まぁ異常事態であることは間違いないですね。


いろいろアップロードされていた写真を見て、

「東京消防庁 深川消防署」と書いた垂れ幕、おそらく現場で指揮を行うテントに付けていたようだ。

そうか、深川消防署なのかと。

確かに青海をはじめとする江東区の埋立地は、深川地区に位置づけられることが多い。

なので消防署の管轄としてはそんなに不思議な気はしなかったが。

とはいえ、本来の深川地区というのは門前仲町駅があるあたりが中心部なので、そうするとけっこう遠いなという気はする。

埋立地にも有明分署などあるので、まずはそこから駆けつけるのだろうけど。


とはいえ、これでいろいろ気になって掘り下げたら思わぬことが見えてきた。

青海は13号地と呼ばれる埋立地の一部だが、この13号地は3区に分かれている。

港区台場・江東区青海・品川区東八潮である。

江東区側から埋立が進んだ経緯は踏まえつつ、港区(レインボーブリッジ)・品川区(東京港トンネル)と道路でつながることから、3区に分けられた経緯がある。

3区に分けられたが同じ埋立地であるから、全て同じ消防署の管轄と思い込んでたが、

台場は芝消防署、東八潮は大井消防署の管轄であることがわかった。

なんと行政区分通りに消防署の管轄区域が切られていたのである。


まさか消防署がそんなことになってるとは思わなかった。

郵便局の集配区域(晴海郵便局が13号地を全て担当)も、警察署の管轄(東京湾岸警察署)も一体だから。

特に警察署と考え方がこんなに違うのは意外だった。

東京都では東京消防庁が特別区域と稲城市以外の多摩地域を一括して消防業務を行っている。

この点ではあまり行政区分にこだわる必要はない気がするのだが、

実際にはかなり行政区分を重視しているようで、こういうこともあったらしい。

消防署の管轄区域の変更のお知らせ(pdf) (東京消防庁)

もともと臨港消防署(中央区晴海周辺と東京湾の水面)が管轄していた中央防波堤埋立地について、

一部を大田区・大半は江東区となることが決定したことをうけて、

消防の管轄区域を深川消防署(江東区域)・大森消防署(大田区域)に移管するという内容である。

そもそも今まで東京湾の水面という位置づけだったのが謎だが。


ただ、これは緊急対応という点ではあまり問題ないのだと思う。

消防にしても警察にしても、緊急時には駆けつけられるところから行くものである。

さすがに消防本部を越えて応援を依頼するのはハードルが高そうだが、

東京消防庁の中であればどの消防署からでも駆けつけるのは当然でしょう。

むしろ緊急対応というより平時の業務を考えての管轄なのかなと。


こういうのは警察でもあるんじゃないかと思う。

消防に比べれば警察の管轄区域は川・幹線道路などで分かれていることもあり、

市町村の飛び地があっても警察の管轄区域では解消していることも多い。

とはいえ、行政区分で切られているケースが圧倒的に多い。

平時の活動を考えれば行政区分と合っている方がよいことが多いでしょうが、

緊急時対応となればその限りではないと思う。でもそこは適切に対応しているのではないか。


でも、13号地が3区に分けられたのは、領土争いにおける妥協策であって、

住民の生活や企業活動が各区の方向を向いているのかは怪しいですよね。

住民が住んでいるのは台場だけか。

特に東八潮が品川区なのは実務的にはかなり無理がありそうだが。

ほぼ全域が潮風公園なので、それで困ることはほとんどないんだが。


13号地の消防署の管轄区域はわかるようなわからんようなという感じですね。

そこまで行政区分にこだわるほどの価値はないような気もするが、

だからといって緊急対応に困るわけではないかなと。

どのみち深川・芝・大井のいずれの消防署(本署)から見ても遠いんですよね。

深川消防署有明分署からは近いですけど、分署だしなぁって。

報われない大量の輸血

昨日のBlogは福島県沖で携帯電話の電波が拾えるチャンスを狙って書いた。

夕方になると海上が荒れるかもとなんと入港が1時間早まるという案内もあったが。

Blog書いたり、風呂入ったりしても、なおしばらく暇ということでテレビを付けたら、

ワンセグが受信できるかできないか微妙な地上波のNHKを選局したら、

「安倍元首相 血を流して倒れる」というニュースが見えた。

ただ、不安定なので詳細を知るのはNHK BS1に切り替えて、BSニュースになってからである。

心肺停止という情報があったが、ドクターヘリで搬送される映像もあり、

これは一体どうなんだろうかと思ったが、結局は同日死亡とのことだった。


この件で僕が最もやるせないなと思ったのがこのことである。

安倍氏は午後0時20分に心肺停止の状態で病院に運ばれ、死亡するまで心肺停止の状態が続いたという。病院は外来処置室で20人態勢で治療に当たった。手術では胸部を開き、出血点を探して止血するとともに、大量の輸血をした。輸血量は100単位以上だったという。

(銃撃された安倍元首相、心臓と大血管を損傷 死亡確認の病院が会見 (朝日新聞デジタル))

大量の輸血をするも助からずという一報を見た時点でも苦しかったのだが、

100単位以上とみて、400mL献血が2単位に相当するから、50人以上の献血による赤血球製剤を投与しても、結局は救命できなかったということで、唖然とした。

400mL献血に協力してくれる人を50人も見つけるのは本当に大変なのにと。

結果だけ見て言ってよいものかとは思うが、本当に勝ち目があると思っての輸血だったのかという疑念は未だぬぐえないところがあり、

長年にわたり献血に協力してきた1人としては大変苦しい思いである。


こういうことを思ったのは初めてのことではない。

2014年に長年患ってきた病気により祖母が亡くなったのだが、

亡くなる少し前に病院に運び込まれ、いろいろ治療がなされたわけである。

運び込まれてから最終的な診断に至るまではいろいろあり、医師としても難しい判断があったんじゃないかと推測するところである。

そんな中で僕が病院に行った時に「輸血を受けている」という話を聞いて、「えっ」と思った覚えはある。

消化器からの出血があって、それに対して輸血をしたということだと思う。

この出血は対処できないという判断で、これ以上の輸血はないとのことだったが、

こうして血液製剤が使われているのか……という実情を知り、どうにも複雑な思いがあった。


もちろん血液製剤により救われた命は多くいるわけである。

現在、血液製剤の使用先として多いのが がんの治療だというが、

治療により造血機能に影響をきたし、継続的な輸血を要する話もあると聞いている。

血液製剤の安全性向上のため赤十字社と献血者は努力しているが、それでも輸血のリスクは高い。

それでも他に代えがたいということで、そこに可能な限り協力するのは使命だと思っている。

しかし、そのような懸命な治療も実らない例があることもまた実情である。

これは理解するが、治療効果が見込みがたいのに漫然と輸血するのは違うよねと。


50人以上もの献血からなる血液製剤を投与されたのは、

元首相だから? というひねくれたことを言う人もいたが、それはないと思う。

ただ、特別扱いされる要因があったとすれば、犯罪被害者であったということである。

ドクターヘリが急行して救急隊から引き取った時点ではすでに心肺停止、

救急隊員も医師も病院に収容されるまでの間、救命のためにできることはやっていたと思うが、

少なくとも救急隊から引き取ってからは心肺停止から回復することはなかったという。

何十分も心肺停止が続けば、その場は救命できても極めて悪い状態にしかならないことは目に見えているわけである。

にもかかわらず積極的に止血・輸血に取り組む意味はあったのだろうか?と。

これは医師の判断としか言えないのだが、被害者と加害者のことを考えればやらないわけにはいかなかったのではないかと。


被害者とその親族・その他関係者にとっては、安易に引き下がることになれば犯罪に屈したことになるからということ、

加害者にとっては、救命できるかどうかがその後の更生に影響するからということ。

そのためには最善を尽くす必要があったと。

今回はドクターヘリの効果もあって早期に医師が介入し、かなり早い段階で高度な医療体制の整った県立医大病院に運び込むことが出来た。

これが遅れれば、そもそも止血・輸血の効果は全く期待できない判断だったかもしれない。

結果的には治療効果は得られなかったが、単純な結果だけ見て言える話でもない。


この一件だけ見れば、50人以上の献血による血液製剤は十分な効果を得なかったということになるが、

巨視的に見れば、外傷による輸血は血液製剤の使用量のうち3.5%でしかない。

その中には100単位以上という輸血を要する外傷もいくらかはあるのだろう。

それでも全体としてはこんなもんである。

血液製剤の有効利用を語るならば、各種手術 や がん などの治療に関わる輸血の方がよっぽど重要なことであり、ここの効率化こそが課題である。

そういう形で考えを改めて見ると、ちょっと気が楽になってきた気がする。


安部さんは内閣総理大臣を辞して現在は衆議院議員の1人ではあるが、

だからといって無防備だったわけではなく、警察もそれなりの体勢で警備していたようである。

今回の事件の背景が政治的なものであれば、他党への報復攻撃ということもあるかと思ったが、動機はそうではなかったらしい。

「特定の宗教団体に恨み。近い安倍元首相を狙った」 容疑者が供述 (朝日新聞デジタル)

この団体については警察も名前を伏せている状況である。

ただ、どうも調べてみると自民党というのはいろいろな宗教団体などと関係があるようで、世間ではカルトとされるものも少なくないようである。

直接関係ないとみられるが、少し前にこんなニュースもありましたね。

「同性愛は精神の障害か依存症」 自民会合で配布の文書に差別的内容 (朝日新聞デジタル)

神社がカルトであるという話にはならないと思うが、神道政治連盟という団体はかなり先鋭的な団体であることをうかがわせるところがある。

安部さんはこの神道政治連盟とも関係が深い議員の1人でもある。


近年は社会が不安定化して、それがこのような凶悪事件の後押しをしているのでは?

という見方もあるところで、そこに安部さんの総理大臣在職期間が重なることもまた1つの側面である。

これについては自民党、ましては総理大臣だけに要因を求めることはできなくて、

国内外の情勢を考えれば、どうしてもこういう形にしかならないところはある。

ただ、安部さんは長きにわたる総理大臣を努めたこともあり、象徴的な人物であったことは確かである。

それが狙われる要因になるか? と一報を聞いたときには思っていた。


このような社会情勢は各政党にもいろいろな影響を与えていて、

1つは立憲民主党・国民民主党の2つの民主党問題である。

相容れないところがあり分裂し、以後2つの政党は先鋭化を強めている。

大阪府を中心に台頭している日本維新の会(大阪維新の会)もまた先鋭的な政党である。

そういう状況には「国民政党」を自認していた自民党も無縁ではなかったのだろう。

未だにそれなりに多様性はある政党だとは思うが、だんだんと先鋭的な主張に蝕まれるようになってきていたのは確かである。

先ほど紹介した神道政治連盟の主張は自民党を蝕むものの1つではないか。


いろいろ書いてきたが、やはり亡くなったことは無念ということに尽きると思う。

総理大臣は辞したが、一議員あるいは派閥の代表として今後も活躍が期待されていた人である。

動機を聞くと、完全なとばっちりだし、この点も悔しい話である。

総理大臣時代は苦しいことも多かったと思うが、それで結末がこれでは報われない。


今回、警察の警備についての不備も指摘されている。

ただ、今回使われた手製の銃というのは、遠目にはカメラにも見える不定形のもので、

それを事前に警戒してどうこうという話は難しいのが現実だと思う。

そもそも日本では銃やその他凶器の規制は相当に厳しく、ゆえに手製の銃が使われたとも言えるが、それで襲撃を成功させることは並大抵のことではない。

なかなかここまでの事態は予想できなかったんじゃないか。

奈良市での演説は直前に決まったことで準備が不十分だったという指摘もあるが、

これでも元首相という立場から警備は厳しい方であったのであって、

多くの議員または候補者は、警備なんてほとんどない状況で機動的に動いているところである。

全ての議員・候補者・政治団体を守ってこそ、自由な政治活動があると思うが、

今回のような襲撃は規制や警備でどうにかするのはやはり難しいのではないか。

未然に防ぐ努力が必要だといわれても、組織犯罪ならともかく、ローンウルフ型と言われているが今回の様に1人でやられては事前の対処も難しいだろう。

太陽光発電と空調は少しズレている

東京電力管内で「電力需給ひっ迫注意報」ということで、

原因としては6月としては暑すぎるということである。

確かに家を出るときにはもうだいぶ暑かった。


具体的に逼迫する時間帯は15~18時とのことだった。

17時ごろまでは出勤しているので、帰ってきてから電気を使うのを遅らせるとよくて、

今日は夕方に買い物に行くのだから、さっさと行って、帰ってきてから冷房など付けるとよいということになる。

この時間帯は工場などでの電力消費は落ち着いてくるが、

家庭で調理は始まったり、帰宅した人が電気を使い出したりするので、

そういうので厳しくなるようなので、ずらすのが効果的ということである。


冬の夕方が電力需給が厳しいというのは、太陽光発電が普及した時代の常識だが、

夏の午後もそうなのかと思って、でんき予報の需要予測と太陽光発電のグラフを比較してわかったのは、

当然、晴れる日は太陽光発電は多いのだが、ピークは12時ごろである。

ただ、暑さのピークは14時ごろで、その暑さは夕方になっても、夜になっても続く。

15時以降は太陽光発電の発電量はガクッと下がってくるが、空調にかかる電力はむしろ高い時間帯で、ここが厳しいわけですね。


逆に余裕があるのが午前中である。

太陽光発電は割とたくさん発電するが、空調がまだ少ないからである。

というわけで、夕方の工場の操業を一部制限する一方、そこまではしっかり稼働することで稼働時間も十分確保できるという理屈である

残業よりは早出がいいということですね。実際そういうことをしているかはわからないけど。


それにしても6月でこれだけ暑いのもそうだけど、

もう梅雨明けらしいと聞くと、心配なのはダムの貯水率ですね。

特に西日本が心配で、四国だと銅山川のダムが貯水率17%、早明浦ダムが35%とかで、もうずっと水不足が続いてるんですよね。

大雨が降れば一気に回復するが、なかなかそういう見込みもない。

四国の水不足はいつものこととはいえ、例年になく厳しい年になる可能性が高い。

関東平野については、利根川流域のダムは洪水期(7月から)の制限容量に向けて水位を減らしている段階なので、特に問題はないとみられる。

実は厳しい期日前投票の要件

こんなニュースがあったのですが。

選択肢に「介護」なく 選管職員が期日前投票拒む 名古屋市 (産経新聞)

宣誓書の選択肢が選べなくて、期日前投票できなかったという話。

どれを選べばよいかは、投票の背景を説明すれば教えてくれると思うのだが、

職員が積極的に聞き取ることはなく、どれか選ばないと投票できないとしたことが問題である。

投票に来た有権者にも落ち度はあるような気はするが、職員の対応に問題があったということである。


でも在宅での家族の介護ってどの選択肢になるんだろう?

最初に思ったのは「病気等」の選択肢だが、家族の介護って自分の病気ではないよなぁと。

そこで公職選挙法の期日前投票の規定を確認したら、厳密なことをいうと期日前投票の条件はかなり限られていることがわかった。


第四十八条の二 選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については(略)期日前投票所において、行わせることができる。

一 職務若しくは業務又は総務省令で定める用務に従事すること。

二 用務(前号の総務省令で定めるものを除く。)又は事故のためその属する投票区の区域外に旅行又は滞在をすること。

三 疾病、負傷、妊娠、老衰若しくは身体の障害のため若しくは産褥じよくにあるため歩行が困難であること又は刑事施設、労役場、監置場、少年院、少年鑑別所若しくは婦人補導院に収容されていること。

四 交通至難の島その他の地で総務省令で定める地域に居住していること又は当該地域に滞在をすること。

五 その属する投票区のある市町村の区域外の住所に居住していること。

六 天災又は悪天候により投票所に到達することが困難であること。

1~6の理由が見込まれることが条件となっている。

実際には状況が変わってこれらの条件を満たさなくなってもよいが、投票時点ではいずれかの見込みが必要である。


さて、それでそれぞれの理由を詳しく見てみると、

1.は総務省令という言葉が出てくるが、これは公職選挙法施行規則ですね。

これを見るといろいろ書いてあるのだが簡潔に言えば冠婚葬祭ですね。

このためうちの市の宣誓書には「仕事等」というくくりで「仕事、学業、地域行事の役員の仕事、本人又は親族の冠婚葬祭、その他」と書かれている。

2.は投票区外に外出することである。外出の理由は問わないが、自宅近くだと条件を満たさないし、ましてや在宅では該当しない。

1.も外出という点では同じような気はするが、在宅での仕事や、自宅近くでの葬式や地域の仕事も対象になるので、これが1.と2.の要因を区別する理由である。

3.は完結に書けば「歩行困難または刑事施設に収容」ということになる。

これはうちの市の宣誓書では「病気等」というくくりになるのだが、

条文上は、病気などの理由で歩行困難でなければ期日前投票できないように読める。

おそらくそこまで厳しく捉えられてはいないと思うのだが……

5.は他市町村での不在者投票の対象としてよく知られている。

6.は台風による悪天候が見込まれるときや、災害からの避難中に使われる。

新型コロナウイルス対策で混雑を忌避して期日前投票する場合もここに該当するという。


4.はほとんど該当する人はいないので、宣誓書の選択肢に書かれていないこともある。

無人島なのに期日前投票? 投票所入場券の謎、記者がたどった (朝日新聞デジタル)

総務省令(公職選挙法施行規則)で定める地域というのは相当限られた地域である。

しかも、そこに挙げられた地域には無人地帯も多い。

東京都では小笠原村の硫黄島・南鳥島・母島が該当する。

硫黄島は自衛隊、南鳥島は気象庁関係など、仕事か他市町村居住を理由とした不在者投票が行われる。

母島は普通に投票所があるが繰り上げ投票になる。(期日前投票所もある)

輪島市の舳倉島(投票箱が運べなくなる懸念から島内には当日の投票所がなく、臨時の期日前投票所が設けられる)のような例外はあるが、ほとんど機能していない。


冒頭に出てきた人の場合、どこに該当するのか。この条文からはわかりにくい。

普通に歩けて、在宅の理由が一般的な家事ならば、対象にはならなさそうだ。

ただ、おそらくは在宅での介護は「職務又は業務」に該当するとみられる。

このため「仕事」を選べばよかったわけである。


最近は当日の投票所設置が人員配置の面で難しいということで、

投票所を集約して、期日前投票所の巡回で対応するケースが増えている。

巡回の期日前投票所は選択肢の1つで、常設の期日前投票所の近くに行くときに投票することもあるし、むしろそっちの方が多そう。

あるいは従来より遠くなるとしても、当日に投票できる投票所もある。

しかし、よくよく考えてみると当日在宅の人は、さっき書いた舳倉島のような例外を除けば、投票所が遠いというだけで期日前投票はできないのである。

実際、どういう理由を選んでいるのか。

巡回投票所を使うのは高齢者が多いだろうから「病気等」を選んでいるのか、

外出する可能性もあると汎用的な「レジャー・用事等」を選んでいるのか。


なかなか実態に即しているとは言いがたいが、期日前投票制度が始まってからはあまりあれこれ言われることもなくなった。

不在者投票できる条件について、詳しく解説することもない。

宣誓書の「病気等」という選択肢は、条文上は「歩行困難」なのが条件だが、そこまで厳しいと思わせない記載になっている。

これは意図的に誤解を狙っているのだと思う。

実際には「レジャー・用事等」を選ぶべき、歩行困難とまで言えない人の通院・入院でも「病気等」を選んでいることは多いと思う。

でも、それを問いただすことはないので判明することはない。


そもそも期日前投票の宣誓書っているの? という話もある。

今住んでいる市では投票所入場券の裏面に宣誓書が刷り込まれている。

これに記載すると期日前投票所で渡すだけで投票できると。

期日前投票の場合、投票所入場券を持たずに来る人の割合は当日よりは多いとみられる。

このため投票所にある宣誓書に必要事項を書いてもらった方が好都合というのはあるかもしれない。

とはいえ、大半の人は投票所入場券を持参して、期日前投票に来るんですよね。

宣誓書にはなんとなく記載されていることを確認して、あとは入場券のバーコードを読み取って、氏名を確認して投票用紙を渡して、書類を回収するだけである。

回収した宣誓書の集計は別途行うかも知れないが、その程度である。


このあたりは不在者投票の制度をそのまま引き継いだことが問題なのかも。

もともと不在者投票の条件はそこそこ厳格だったし、投票用紙の郵送先などの情報が必要なので、何らか書類の提出が必要なのは確かである。

しかし期日前投票になって、投票所入場券を持参して、その場で投票して帰るだけの人に追加で得るべき情報は、期日前投票を行う理由程度である。

そもそもその理由だってだいぶいい加減な運用がされているのだから、

それってそもそも必要なの? というのはもっともな指摘である。


郵便での不在者投票とか、職員以外による代筆とかは、不正投票の原因にならないかとか、選挙の秘密への懸念などの心配があり、難しい面がある。

ただ、期日前投票についてはそういう懸念はあまりなくて、やりたければどうぞという感じの制度である。

なので、あれこれ細かい事を言わんでいいような気はする。

ほとんどはかつての不在者投票の名残だと思うのだが……

もうちょっと広く「当日に投票所に到達することが困難と見込まれる」とすればよくて、それが事実であることを宣誓させるほどでもない気がする。

投票所入場券のない人は、宣誓書のような紙に書いてもらったほうがよいが、それはまた別の問題でしょう。