今日、阪神競馬場でフィリーズレビュー(GII)が行われた。
3歳牝馬限定の重賞、1~3着馬には桜花賞への優先出走権が与えられるトライアルレースですね。
桜花賞のトライアルとしては、本番と全く同じ舞台で先週行われたチューリップ賞(GII)、
今日に中山競馬場の1600m(距離は本番と同じ)で行われたアネモネステークス(L)、
そしてフィリーズレビューは少し短い1400mと、この距離の違いは気になりますが。
一時1番人気(最終的には2番人気)になるほど注目を集めていたのは熊本生まれの ヨカヨカですね。
九州産馬限定なので
北海道産馬と混ざって阪神競馬場でデビューしてデビュー勝ち、そしてフェニックス賞に勝ち、
「九州産馬のダービー」の異名のある ひまわり賞 に2歳牝馬では異例の57kgで出走し優勝、
昨年末の阪神ジュブナイルフィリーズ(GI)では5着と好走(九州産馬のGI掲示板入りは初めて)、
1600mよりは少し短い方が良いということで、ここで重賞勝ちの栄誉を得て桜花賞へ行きたいという意図だろう。
実はもう1頭、僕が気になっていた馬がいて、それが シゲルピンクルビー だった。
姉(サラブレッドの世界では母親が同じことをそう言う)に シゲルピンクルビー というのがいて、
2年前の桜花賞で2着と好走、秋華賞も3着、昨年12月の中日新聞杯(GIII)でも2着など、重賞でも上位に入れるぐらい強いのだが、
実はこの馬、1着を取ったのは未勝利戦の1勝だけで、「現役最強の1勝馬」の1頭に名前が挙がることもある。
チューリップ賞2着・桜花賞2着と実績を積んでしまったし、それで重賞でも上位に入るとなると、
これはもう重賞しか出るレースはないけど、そこで勝つのは容易ではないという。運がよいのか悪いのか。
その妹、シゲルピンクルビーは新馬戦で勝ち、年末の阪神ジュブナイルフィリーズでは16頭立ての15着、
フィリーズレビューは登録馬が多く、1勝馬は抽選に通るか半々ぐらいだったが、見事に挑戦権を得た。
で、結果なんですけど、1着がシゲルピンクルビー、2着がヨカヨカだったんですよね。
ヨカヨカも惜しかったけど、シゲルピンクルビーが強かったですね。
というわけで、熊本産馬初の重賞制覇はお預けとなった。
ヨカヨカはもともと、ここまで3勝して桜花賞出走はほぼ確実だったけど、これで確定ですね。
一方のシゲルピンクルビーだが、馬主の森中蕃オーナーにとっては JRAサラ系平地重賞初制覇となった。
森中オーナーは「シゲル」を冠した馬を多く走らせている。
ユニークな命名と数の多さからファンからも「シゲル軍団」と親しまれている。
その多くは数百万円程度で購入した馬とみられ、安い馬でも数打ちゃ当たるという作戦に見えるが、
購入費は安くとも、厩舎への預託料など1頭当たりにかかるコストは相応に乗っかってくるので、お金のかかる作戦だと言われている。
でも、これだけ数が多ければ毎週末、地方競馬で活躍する馬も含めれば平日も、とにかく走るからそこは楽しいのかもね。
そんなシゲル軍団の馬はこれまでのべ1000頭ぐらい? (オーナーチェンジもあるとわからないけど)
それだけいれば重賞を勝つ馬も何頭かいるでしょと。
確かに、シゲル軍団にも重賞勝ち馬、いるにはいるんですけど……
- シゲルホームラン (1993~1995年 セイユウ記念3連覇)
- シゲルジュウヤク (2012年 新潟ジャンプステークス・2013年 阪神スプリングジャンプ優勝)
- シゲルカガ (2015年 北海道スプリントカップ優勝)
- シゲルヒノクニ (2019年 京都ハイジャンプ優勝)
まず、シゲルホームランですが、この馬はアングロアラブですね。セイユウ記念はアングロアラブ限定重賞です。
シゲルジュウヤク・シゲルヒノクニ は「ジャンプ」とあるように障害重賞の優勝馬ですね。
シゲルカガ は地方開催(門別競馬場)のダートグレード競走である 北海道スプリントカップ(JpnIII) の優勝馬で、
JRA所属馬にとってもダートでは地方開催の交流重賞は重要だし、これも日本国内ではGIII勝ち相当と考えて良いが、
なんとなく地方開催ということで格が落ちる感はある。賞金もJRAのGIIIに比べると少し安いですね。
ちなみにシゲルカガは引退後、種牡馬となり、2020年生まれが初子で、その子にもシゲル軍団入りする馬は出てくるのだろう。
JRA所属馬にとって重賞というと、
- JRA平地重賞 (年139レース、現在は葵ステークスを除いてGI・GII・GIIIの国際格付けを有する)
- JRA障害重賞 (年10レース)
- 地方開催のダートグレード競走 (年40レース、東京大賞典はGI、他は日本ローカルのJpnI・JpnII・JpnIII格付け)
- 外国のパートIのグレード・グループ競走 (たくさんあるが実際に遠征するレースはそう多くない)
なんて考えると、レース数だけ考えれば一番チャンスがありそうなのはJRA平地重賞なんですけどね。
単にJRA平地重賞とだけ言えば、昔のアングロアラブの重賞も含まれるが、多かった時期でも年10レースもなかったはず。
希少度で言えば、障害重賞優勝(しかも2頭で3回も!)、今はなきアラブ重賞優勝の方がすごいとは思うが。
JRA平地重賞って多くは芝のレースですけど、この王道路線というのは数打ちゃ当たるとはならないということだろう。
2019年のジャパンカップ(GI)、外国馬の遠征がなく「国際色豊かなのは騎手ばかり」と揶揄されたレースだが、
このレースに出走した15頭中11頭がノーザンファーム生産馬というのは、そんな一例かもしれない。
今や日本競馬のチャンピオン決定戦のはずのジャパンカップが「ノーザンファーム大運動会」になってしまったのである。
結果も掲示板入りした5頭のうち4頭はノーザンファーム生産、1頭は社台ファーム生産だが、これも同根ではある。
(ノーザンファームは社台ファーム早来が1994年に独立したもの)
これこそが日本競馬の王道路線で戦うことの難しさを表しているとも言える。
実はシゲルピンクルビー、そしてその姉のシゲルピンクダイヤも、1千万円超とシゲル軍団の中では比較的高額な馬である。
「ピンクダイヤ」という命名も、かつて宝石商をしていた森中オーナーが希少で高価ということで思いついた名前という。
【桜花賞】森中蕃オーナー、シゲルピンクダイヤで初舞台初G1奪取だ!桜も『令和』由来梅の花もピンク「縁起いい」 (スポーツ報知)
そんな勝負掛かった馬でGI挑戦、出走できるだけでも名誉あることだけど、そこで2着というのは大活躍である。
……その結果、未勝利戦に続く2勝目から遠ざかってしまったのはともかくとして。
その妹も同じく勝負掛かった1頭、1勝クラスからの重賞挑戦は運も必要だが、見事に抽選をくぐり抜け、
そうして挑戦して、見事に走ってくれた結果、森中オーナーは王道路線の重賞を初めて制覇できたわけである。
一方で高い馬を買えば勝てるというほど簡単な話でもない。特にGIはそうだ。
有名なのは「サトノ」を冠した馬で知られる里見治オーナー、セレクトセールなど億超えの馬も含めて高額馬を買い続け、
GI初制覇はサトノダイヤモンド(2016年菊花賞)、馬主になってからなんと24年もかかったという。
重賞初勝利もサトノプログレス(2008年ニュージーランドトロフィー)だから15年はかかってるんですね。大変だな。
里見オーナーは相当なお金持ちだから(サミー元社長、現在はセガサミーホールディングス会長)、高い馬を何頭も買えたけど、
数を絞って高い馬を買っても、それが無事にデビューして好走できるかというと、それは相当に難しい。
一方で森中オーナーのように比較的安価な馬を多く揃えても、数打ちゃ当たるとはなりにくいし、
なにより預託料など1頭あたりのコストがのしかかるので、必ずしも安上がりとは限らないわけである。
一方で、障害重賞3勝なんていうのは、これは数打ちゃ当たるというところはある。
平地では成果の出ない馬で、障害レースで走れると見込まれ、実際に障害レースで勝って、重賞まで勝つというのは、
これは狙ってやるのは難しくて、多くの馬をJRAでデビューさせているからこその結果と言える。
森中オーナーは極端だけど、高額馬に偏らずに多くの馬を所有する馬主だと、障害レースでは目立ちますね。
そんなこんなで桜花賞のトライアルレースも終わり、桜花賞のメンバーも固まりつつある。
今のところで出走確実と言われている馬だけでも濃いメンバーがそろっていて、
- ソダシ (阪神ジュブナイルフィリーズ優勝・白毛馬初のGI優勝馬)
- メイケイエール (ここまで重賞3勝・曾祖母がシラユキヒメ(=ソダシの祖母)という白毛一族だが鹿毛)
- サトノレイナス (阪神ジュブナイルフィリーズ2着・里見オーナーが約1億円で購入した高額馬)
- ヨカヨカ (熊本生まれ・前述の通り)
- アカイトリノムスメ (クイーンカップ優勝・両親がともに金子オーナー所有の三冠馬)
- シゲルピンクルビー (現役最強?1勝馬の妹・前述の通り)
みんなチャンスはあるとおもうのでよい走りをしてくれれば。
ところで今日のWIN5は大波乱だった。
シゲルピンクルビーも単勝8番人気・最終オッズ13.9倍からの勝利だったので、けっこうな波乱だったのだが、
それ以上の波乱が金鯱賞(GII)、昨年の牝馬三冠を手にしたデアリングタクトが出走、単勝1.4倍の断然の1番人気、
それだけにWIN5では点数を絞って買った人が多かったはずで、特にここはデアリングタクト1点でとした人は相当に多かったはず。
しかし、このレースを制したのは10番人気、最終単勝オッズ227.3倍のギベオンだったのである。
デアリングタクトもクビ差まで追い込んだけど、追いつきませんでしたね。
雨で馬場が悪く、あと少しが届かなかったようである。それでも2着に入るんだから強いのは確かだけど。
このレースは香港遠征(クイーンエリザベス2世カップ)に向けての前哨戦としての出走だった。
これまでのレースでの課題点は克服できたようですから、本番ではよい結果が出せるといいですね。
地元の Golden Sixty(香港三冠馬、昨年の香港マイルからGI 3連勝中)は手強そうだけど。
デアリングタクト自身はそれでもいいんだが、WIN5は勝ち馬を当てるものだから2着も着外も変わらんのだよ。
大波乱の金鯱賞、そこまでいかずともけっこうな波乱のフィリーズレビュー、他も3番人気以下での決着と。
WIN5は792万票中1票が的中で、払戻金は約5.5億円ということで、WIN5の最高払戻金記録を更新した。
1レース単位で見れば作戦はいろいろあるが(例えば金鯱賞ではデアリングタクトから馬連総流しをした人は900円で13570円取れた)、
WIN5は各レースの1着を当てるというシンプルな仕組みがゆえに、単勝200倍以上の馬が勝つのは当てにくい。
どの馬が勝つかわからないレースは全通り買う作戦もあるが、金鯱賞でそれをやるのはちょっと……
一体どういう買い方で5.5億円を当てたんだろう。税金はたくさん払わないといけないけど、おめでとう。