特定原付のルールなどで「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」の話をしばしば書いているが、
名前を見て、変な名前の法令だなと思うわけですよね。
理由の1つはこれは道路交通法と道路法の2つの法律で必要な標識・標示を規定しているためで、
基本的には根拠法が違っても同種の規制には同じ標識など使うようにしている。
ところで道路標識って誰が設置しているかご存じですかね?
警察? と思ったかも知れないが、標識の種類によって違う。
案内標識・警戒標識は道路管理者が設置することになっている。
通勤途中に 学校ありの警戒標識と「通学路」を付けたポールがあるが、
そのポールには「○○市」と道路管理者の市の名前が書いてある。
規制標識・指示標識は種類によって道路管理者が設置するか、公安委員会(警察)が設置するか、どちらでも設置できるか決まっている。
どっちでも設置できる標識の1つに「通行止」がある。
冬季通行止めなど道路の管理上の都合で通行止めにする場合は道路管理者が設置する。
富士山の登山道は主な区間は静岡県・山梨県の県道で、道路法の規定により冬季通行止めになることが知られている。
一方、バス専用道では 通行止+「路線バスを除く」のような組み合わせがある。
これは道路交通法の規定で設置されるものである。
「自転車・歩行者専用」「自転車専用」は道路交通法と道路法でちょっと効力が違うみたいな話もあるのですが……
自転車道を走れる自転車って?
でも、そういうのは例外で基本的には同じ標識・標示は同じ意味を持つ。
その特徴に基づくルールとして、下記の2つがある。
- 道路法の「道路中央線」の区画線は、道路交通法の「中央線」の標示とみなす
- 道路法の「車道外側線」の区画線のうち、歩道のない側の路側にあるものは、道路交通法の「路側帯」の標示とみなす
道路管理者の引いた中央線・車道外側線は、警察が引いた中央線・路側帯と同じ効力を持つという意味である。
中央線でも はみ出し禁止 の黄色の線は道路交通法の規定によって警察が引く必要がある。
この場合は標識もセットで設置する決まりである。
駐停車禁止路側帯(実線+破線)や歩行者専用路側帯(実線2本)も同様である。
ただ、そういう特別な標示を除けば、道路管理者が引いていいわけですね。
しかし、管理者が引いた線を道路交通法の標示とみなすルールは「道路」にしか適用されないのである。
今日から中央線・車両通行帯・中央分離帯がない道路の法定速度が30km/hと定められた。
これは従来のゾーン30に相当する規制が中央線のない道路に自動的に適用されるということである。
ゾーン30の標識なんてやめたい
中央線のない道路でも標識を付ければ制限速度を上げることはできる。
とはいえ1車線の道路だとせいぜい40km/h規制ではないかと書いている。
そんな中で従来と同じ規制を維持するために60km/h制限の標識を設置している道路もあるそう。
その中にはどう見ても中央線がある道路に設置しているものもある。
雪国で中央線が雪に埋もれる懸念から設置しているなんて話を見たが、
農道・臨港道路という「道路」以外のものに設置している地域があるそうだ。
さっき書いた通り、道路管理者が引いた線が道路交通法の標示とみなすルールは「道路」にしか適用されない。
一方で道路交通法の規定は「一般交通の用に供するその他の場所」にも適用するとなっている。
道路とつながった私道、農道・林道・臨港道路など道路法の規定によらない公道にも適用される。
しばしば工場や店舗の敷地内で速度制限や「止まれ」などの標識が設置されていることがあるが、
これは通常は所有者が設置しているもので、道路交通法上の効力はない。当然ですが。
こういう道に中央線や車道外側線を引いても、道路交通法上の効力は生じない。
私道に所有者が線を引いて道路交通法上の効力が生じるわけはないが、
公道の管理者が引いた線でも「道路」以外では同じ扱いになる。
この問題の打開策の1つとしては警察が中央線や路側帯を引くという方法がある。
交通規制情報オープンデータを調べると、広域農道らしきところに「中央線」を設定している例が見つかった。
しかし、見た目で「道路」とそれ以外の公道の区別が付かないように、
道路交通法の規定による中央線と、管理者が引いた線の区別も付かない。
標識の場合、警察が設置した標識は裏面に公安委員会のシールが貼られている。
走っている車から視認することはできないが、じっくり見れば区別は付く。
でも、標示ってそういうのないんですよね。
はみ出し禁止のように標識とセットで設置するルールがあれば検証できるが……
一方で効力のある中央線や路側帯がなくても困らないという考えもある。
中央線がない道路では道路の中央より左を通るルールである。
すなわち中央に引かれた中央線はあってもなくても道路交通法の適用上は差はない。
従来はそのように考えられてきた側面はあるわけである。
路側帯は歩行者の安全には重要だが、そのような生活上重要な道は通常は「道路」にする。
(農道として整備された道でも、市町村道に認定されることはある)
あるいは歩道があるなら路側帯のことは考える必要はない。
ところが道路交通法上の中央線の有無で法定速度が変わるとなって、
今さらわざわざ警察が道路交通法上の中央線を引くよりは、
60km/h制限の標識を立てる方が手っ取り早いという判断が起きていると。
60km/h制限と明示してくれるのはありがたい話ではあるけど、
裏返せばそうでなければ中央線が見えても30km/h制限の可能性があるということで、
それで速度違反で検挙されてはたまったものではないのだけど。
原付の法定速度はどのみち30km/hだから、自分の車は関係ないけど。
私道に勝手に引いた線が道路交通法上の効力を持つのは問題なのはわかるが、
管理者が引いた中央線・車両通行帯に類似した線は基本的には認めるべきだったのでは?
これらの道路でも警察が引いた中央線であればよいわけだし。
ただ、道路法の規定によらない道ってあんまりルールがないんですよね。
なので「道路」以外の公道を規定するのが難しかったのかなと想像した。
結論からすれば見た目では明確な区別はできないということである。
農道・林道・臨港道路であることがわかったとしても、道路交通法上の中央線がないとは断定できない。
そのような状況である以上、中央線が見える道では30km/hの法定速度で取り締まりはできないだろう。
曖昧さを減らすには2車線以上の道にはできるだけ明示的な速度制限を付けるべきというぐらいかね。
ゾーン30を徹底的に適用するよりは、2車線以上の道路の全てに標識を付ける方がまだ現実的ではある。
そのあたりの方針も変わっていくかもしれませんね。