地球温暖化対策として二酸化炭素を地中に埋めるという話がある。
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)と呼ばれる技術なのだが、
さて、二酸化炭素を地中に埋めるというのは根本的解決なんだろうか?
と、気になっていたのだが、どうもそれなりの意味はあるらしい。
まず、地中に埋めて漏れてこないのかという話だが、適切な地層を選ぶのが前提である。
ただ、地層で永遠にトラップし続ける必要はなく、数年程度で二酸化炭素は他の形でトラップされるようになる。
1つは岩石の隙間に入り込む残留ガストラップ、こうするとガスは岩石から出られなくなる。
1つは周辺の水に溶解する溶解トラップ、二酸化炭素は水より軽いが、水に溶ければ水より重くなる。
そして最終的には鉱物固定ということで、非常に長い期間をかけて石灰石になっていくわけである。
石灰石には貝などの死骸に由来するものもあるが、炭酸イオンと海水中のイオンの反応により作られたものも多い。
まさにそういう形で地中に二酸化炭素を戻そうとしているわけだ。
以上のことから、二酸化炭素を埋めて、しばらくの間、地底下に保てば、そこから逃げない状態にすることはできる。
そして、これは非常に長い目で見れば、我々が石灰石を掘り出して使うことの逆になるということで、
一応は理屈に合っているということになる。
二酸化炭素を放出する要因もいろいろありますが、地中にある炭素を含んだものが掘り出されることが原因で、
これはエネルギーとしての利用とは限らなくて、例えば泥炭地が乾燥することで自然発火するようなケースもある。
けっこうそういうのはあって、湿地の保全というのも地球温暖化対策のメニューなんですね。
いずれにせよ、地中に安定した状態で炭素分を置いておけるのなら、それは地球温暖化対策である。
それなら積極的に地中に炭素を戻すということで、CCSは妥当性はあるということ。
あと、地中に戻す以外にもコンクリートなど、工業製品として二酸化炭素を保持させるというのもそうである。
こういうことができる素材は限られますけどね。
もっともCCSの大きな課題は、二酸化炭素を分離するために無駄なエネルギーを要することである。
一般的には省エネルギーは地球温暖化対策になると思っているかも知れないし、それは多くにおいて正しいが、
工場から排出される二酸化炭素を分離して、埋めるなどして固定化するというのは、
本質的に二酸化炭素は発生してるんですね。ただ、それが地中に出ないというだけで。
なので、現状で二酸化炭素を出している工場に、CCSをつけると資源の浪費になりかねないわけだ。
でも、もしかすると正当化できるかもしれないケースがあって……
オーストラリアで低品位の褐炭を使った水素製造に向けた動きがあるようだ。
褐炭は石炭ではあるが、水分が多く運搬が難しく、その場で燃やすぐらいしか使い道がなかった。
褐炭は現状では他の地域に運んで使うことが難しい。
その褐炭があるのがエネルギー消費地近くならばその場で発電することはできる。
ところが、オーストラリアの辺境だと、その場で消費するにも限りがあり、実質的に使えないエネルギー源となっている。
そこで、その場で水素やその派生燃料を作って運搬できるようにして、そのとき発生する二酸化炭素は分離して埋めてしまうと。
実質的に使えないエネルギー源を「CO2フリー水素」という付加価値をつけた形にできるのなら、資源の浪費も正当化できるというわけ。
いろいろなロードマップがありますけど、単純な燃料以外の用途だと製鉄用還元剤とか。
製鉄所では石炭とかプラスチックを原料としたコークスを燃料と還元剤に使って、二酸化炭素を放出している。
プラスチックをコークスの原料にすると、同じ二酸化炭素排出でも廃棄物処理と製鉄の2つの役目を果たせるのでお得である。
それで水素を還元剤にすれば、還元剤の分として放出されるガスは水蒸気などになる。(燃料分は引き続きコークスの想定)
「CO2フリー水素」が安価に手に入るようになれば、これを還元剤として投入すると、コークス使用量が減り、二酸化炭素排出量が減る。
まずはコークス炉ガス(製鉄所内で発生)の水素分を使って二酸化炭素排出量の10%の削減を目指しているそうだ。
そういう素材作りに使うところも削減していかないといけないんですね。
ただ、そもそも地中で安定して存在している掘り出さないに越したことはないんですけどね。
省エネルギー・省資源はなにごとにおいても基本だと考えてよいのではないか。
ただし、地球温暖化対策としては、エネルギーの浪費でも二酸化炭素を放出しなければよいとかいう話が出てくる。
それが妥当なのかというのはよく考えないといけない。
でも、多分そういうごまかし方をしないといけないところはあると思いますね。
だって、どう頑張っても石炭の燃焼によらずに鉄は作れなさそうだし。(もちろん鉄をリサイクルするのは前提だけど)