都府県が国に連帯することの意図
東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県が国に緊急事態宣言の発令を要請したというニュースはよく知っての通りだが、
そこに至るまでの経緯が紹介されている記事があった。
緊急事態宣言 動かした小池都知事、最後に乗った千葉 (朝日新聞デジタル)
確かに当初は東京都・埼玉県で連帯してという話だったのが、いつのまにやら神奈川県・千葉県も加わっていたという話だが、
千葉県は当初消極的だったところ、神奈川県も加わるなら加わるという話で、神奈川県が要請に加わることとなって、
その約束通りに千葉県も含めて南関東4都県で国に要請することとなったということが書かれている。
東京都が隣接する3県を巻き込んだのは、積極的対策に消極的な国を巻き込むためには、
東京都の暴走と思われないようにするための政治的な意味合いも大きかったんだと思う。
一方で、これに隣接3県が乗ったことにはそれなりの理由はあって、千葉県が少し消極的だったというのも、
東京都市圏の人の動きがそうなっているからということで説明できるんじゃないかという気がする。
というのも、都市雇用圏の東京都市圏(東京都特別区域などに10%以上の通勤がある地域)というのは、
- 東京都 : 島しょ部を除くほぼ全域
- 埼玉県 : 深谷市が北端、秩父地域・本庄市周辺などを除く地域
- 神奈川県 : 箱根町を除く全域
- 千葉県 : 南端は富津市、東端は山武市、成田市周辺・安房地域・銚子市周辺などを除く地域
あと、茨城県の取手市・守谷市周辺、山梨県の上野原市も含まれる。
こうして見てみると、神奈川県・埼玉県も都市圏という観点ではほぼ全域が東京の一部なんですね。
千葉県については、成田市周辺が独立した都市圏として成立していることと、地形的要因により房総半島南端や銚子市付近などは含まれないが、
その一方で、東京都に近い東葛地域だけで千葉県の人口の半分近くに達するなど、千葉市と並んで重視される地域である。
千葉県全体を巻き込むには少し踏ん切りは付かないが、やむを得ないという判断はあったのだろう。
もちろん南関東4都県も地域性はあり、一様に感染状況が悪いとも言い切れないところはあるが、
一方で東京都だけに収まっているとも言えないのも確かで、周辺都市も含めて対策が必要であるのは事実である。
巻き込まれたと思う地域もあるだろうが、そこは妥協して欲しいということである。
現状がそこまでひどくなくても、地域内に飛び火するのを防ぐ効果もありますからね。
なんてわけで南関東についてはこんなもんかと思う一方で、近畿圏でもこんな話があるらしい。
大阪府が9日にも緊急事態宣言の再発令要請へ 兵庫と京都も同時要請検討 (毎日新聞)
大阪府が兵庫県・京都府を巻き込んで国に要請するか? という話らしい。
当初、大阪府では大阪市内に集中して対策をしていたが、府内の他地域での感染拡大が問題となっていること、
兵庫県でも神戸市や阪神・東播磨などで感染者の報告が多く、医療機関の逼迫が問題となっていること、
京都府では京都市内での感染拡大が続いていることが背景にあるようである。
もっとも兵庫県は少し前まで慎重だったところ、神戸市からの申出などもあって検討した結果、このようになったとのこと。
大阪府は全域にわたって強い対策が必要なんだろうなというのはなんとなくわかるものの、
兵庫県と京都府はかなり広いので、この辺は地域性もあるような気はする。
とはいえ、兵庫県はなんやかんやいって広範囲に影響が及んでいるようですね。
阪神地域は大阪との行き来が多いので、ここは同一視して対処する必要があっただろうなと思ったが、
神戸市やそこに隣接する東播磨地域での報告が多いようで、兵庫県内の事情だけ言えばそっちのほうがきつそうですね。
京都府については大阪府とは直接連動している感じはしないが、京都市での蔓延は根が深そうだ。
大阪府・兵庫県・京都府にはそれぞれ蔓延度が高い地域があり、効果的に対処する必要があるという点では一致してるが、
ただ、大阪府を除けば府県の区域が広いというのが問題で、ここをどうするかが悩み所かなとも思う。
特に両府県にとって北部の丹波・丹後・但馬地域は、京都府南丹地域を除けば問題の地域との行き来は少ないはず。
こういうところで特別な対応をする必要があるのか、地域性を考慮して段階的な対応を取るのか、
それとも穴をふさぐことを重視して一律に厳しい措置をとるのかというところが悩ましいところでしょうかね。
南関東4都県は一律でもかまわないという割り切りはあったが、この3府県は難しい。
というか、よく兵庫県も京都府も乗ろうとしたなという感じはある。
運用上の細部は府県側で決定できるので、そこら辺は各府県の事情に合わせてということになろうと思う。
面的に対策を取った方がいいのかなと思うが、納得感も重要だと思うので、そこはよく検討しないとならんだろうと思う。
近畿圏の都市雇用圏は、大阪・京都・神戸がそれぞれ独立した中心都市である一方で、
大阪府・兵庫県の府県界はあまりに行き来が多く、神戸市でも東灘区などは大阪の郊外としての色も濃い。
このことからすると、大阪府から阪神・神戸・東播磨にかけてはあまり段差なく対応できた方がいいように見える。
一方で、大阪と京都の間は明確に人の向きが変わるところがある。(府県界に近いが少しずれている)
なので、また違う話で、京都府は話を見る限りは京都市に集中しているので、まずはそこなのかなという感じはする。
大阪府との間を埋めるように乙訓地域や八幡市なども取り込んで対策してもいいのかもしれないが。
こういう人の流れも考慮してみると、兵庫県と京都府は大阪府と連帯する意図に少し違いがありそうなことが想像ができる。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/07(Thu) 23:30
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