NHKが放送波の集約を考えてるらしいと報じられていたが、
2021~2023年度のNHK経営計画が発表されていた。
NHK経営計画(2021-2023年度)(案)(pdf) (NHK)
こういうことである。
◎衛星波の整理・削減を段階的に実施し、将来的には右旋の1波化に向けて検討を進めます。
右旋の3波(BS1・BSP・BS4K)は、コンテンツをより効果的に届ける再設計を計画期間内に行い、公共メディアとしての価値を生きしつつ、2波(4K・2K)への整理・削減を実施します。具体的な実施時期等については、視聴者に対する意向調査等を踏まえて検討を進め、2021年の本計画の議決の際に公表します。具体的には、4Kの普及など変化するメディア環境を見極め、1波への整理・削減に向けてさらなる検討を、在り方の検討にあたっての原則に則って進めます。(BS8Kについての記載は略)
◎音声波は、2波(AM・FM)への整理・削減に向けた検討を進めます。
音声波については、民間放送のAM放送からFM放送への転換の動きや、聴取者の意向などを考慮しつつ、さらなるインターネットの活用を前提に、現在の3波(R1・R2・FM)から2波(AM・FM)への整理・削減に向けた検討を行い、計画期間内に具体案を示します。
まぁ想定の範囲内かなと読んだけど。
NHKの放送波削減と言えば、BS1・BS2・BS-hiを、BS1・BSプレミアム(BSP)に集約して、SD 2チャンネル+HD 1チャンネルをHD 2チャンネル編成にしたのがある。
BS2は地上波の再放送をメインとしていたが、これが多くはカットされ、ニュース・スポーツはBS1、娯楽・教養はBSPと分野別になった。
ただ、この後にBS4K・BS8Kの放送が開始し、放送波削減以前より1チャンネル増えたわけですね。
BS4Kは娯楽・教養番組がメインだが、スポーツ中継が入ることも多い。
衛星放送の集約だが、BS8Kについては、8K番組も視聴環境も限られるものの、将来に向けて意味があるものと考えられる。
一方のBS4Kについては、視聴環境が普及しつつあって、4K番組が増えてくる中で、他の放送波との同時放送もある。
そんな中で4Kが普及すれば、これ1本でいいんじゃないかというのは一理ある話である。
とはいえ、現状は2KはBS1とBSPの2チャンネル編成なんですよね。これを1波にすることができるだろうか?
そんなわけで両チャンネルの番組表を見てみたところ、BS1が意外とスカスカであることに気づく。
BS1は平日では5~8時台、11~12時台、14~17時台、22時台はニュース番組だが、それ以外はスポーツとなっている。
ここには国内外のスポーツ中継、あるいは録画をあてがっているのだが、そこまでするか? という感じはある。
全体としては野球中継が多いけど、民放(無料も有料もありますが)もやっている中、NHKは中途半端にしか放送できないわけで。
とはいえ、平時に余裕があるおかげで大規模なスポーツ大会があっても、生中継・録画合わせればあれこれ放送でき、
特にパラリンピックなんていうのは、NHK BS1の独壇場という印象すらある。(民放もやらないわけではないが)
一方のBSPは全体的に充実した構成に見える。ただし定時番組が多いわけではない。
というわけで、BS1・BSP・BS4Kの集約のポイントはスポーツ中継だと思いますね。
ただ、現状のBS4Kがそうだけど、スポーツ中継が入る時は、それ以外の番組を押しのけてるわけですよね。
現状のBSPの番組表からすると、スポーツ中継が入る時は番組をのけるという対応もそう難しくはないかなと。
ちょっと悩ましいのがBS1で毎時50分から10分間のBSニュースの取扱である。
BSPだと長時間の映画をノンストップで放送したりできるわけですよね。(これはCMが入る民放の無料放送とは異なる)
スポーツ中継のときはサブチャンネルでの放送にしているので、そういう形にすれば中断されないのは確かだが。
サブチャンネル使えば何でもありだけど、それがよいのかはよくわからない。
ラジオだが、ラジオ第1・ラジオ第2・NHK-FMの3つを、AM 1つ、FM 1つにするという構想である。
これも現状の各チャンネルの状況を見てみる。
ラジオ第1については大半の時間帯が生放送で構成されている。これは災害時の即応体制確保のためという意味合いがある。
なので、他のチャンネルに比べると再放送は少ないが、メリハリに乏しいかもしれない。毎時1回はニュースが入る。
あと、全体としては少ないんですけど、のど自慢や日曜討論といったテレビとの同時放送の番組もある。
なぜかラジオ第1で放送されている紅白歌合戦もその1つですね。(cf. なぜラジオでも歌合戦をするか)
ラジオ第2は4:00~24:40ということで終夜放送ではなく、なおかつ再放送が半分ほどを占めている。
割合として多いのは教育番組と外国語ニュースである。緊急時の外国語での情報提供もラジオ第2が担っている。(cf. 必死で「すぐにげて」と言うから)
一方で気象通報とか株式市況というひたすら情報を読み上げるだけの番組もある。(両番組は世界的にも古いラジオ番組である)
現在は音声合成なので、ロボットアナウンサーが担当する番組である。
こういうラジオ第1には編成しにくい番組もあるのがラジオ第2の特徴である。
気象通報については、ラジオ第2の送信所が概して大電力なので、海上でも受信しやすいのが理由だと聞いたこともあるが。
NHK-FMについては、音楽番組が多く、クラシック音楽もポピュラー音楽もある。
一方で全都道府県で地域番組を組めるのはNHK-FMの特色であり、全体としては少ないが地域ニュースも編成されている。
娯楽番組筆頭はラジオドラマということで渋いが、それ以外でも娯楽色の強い番組もけっこうあって、
夕方~夜はラジオ第1もFMも生放送で娯楽色が強いので、雰囲気は似ているかも知れない。
深夜帯についてはラジオ第1と同じラジオ深夜便を放送している。深夜はAMの混信がおきやすいのでその対策の意味もあるよう。
「民間放送のAM放送からFM放送への転換の動き」なんて書かれているが、
地域によってはAMラジオの受信環境は悪く、NHK-FMは概して安定して受信できると思うが、ニュース放送は限定的である。
そこに失望した人はいるかもしれない。確かに災害時はNHK-FMで情報提供されるわけだけど、平時がこれではね。
というわけで、NHK-FMでの総合編成を希望する視聴者は少なくないと思う。
ただ、そうすると割を食うと思われるのがクラシック音楽番組である。これは明確にNHKの特色である。
なので、AMで総合編成をやる時間と、FMで総合編成をやる時間を分けるとかすればよいが、ちょっと複雑である。
ラジオ第2の番組については、できるだけ残したいが、らじる★らじる の聞き逃し機能もあるので、再放送は減らせるかなと。
ただ、世界最古番組であるところの株式市況はさすがにお役御免かもしれない。
というわけで、放送波の集約が可能であると考えるポイントと、難しいと考えるポイントを紹介してみた。
BSPは娯楽メインだけど、地上波で編成しにくい番組が多く集まったNHKらしいチャンネルだと思うんだよね。
ただ、NHKがやらんでもいいだろうというのはあるのも確かで、民放との競合という点では踏ん切りが付きやすいかなとも思う。
かといって、現状のBS1とBSPが1チャンネルになると、ニュースかスポーツかどちらかは犠牲になるんじゃないかと。
ラジオについては、NHK-FMの姿が大きく変わることをどう考えるかで、やり方次第ではかえっていいんじゃないかと思う。
ただ、NHK-FMはそれはそれで独自の役割を担ってきた経緯もあるので、何が肝心かはよく検討しないといけないね。
あと、AMは1波にするときに、ラジオ第1のネットワークに集約するか、ラジオ第2のネットワークに集約するかというのはある。
ラジオ第1は地域放送ができるが、小電力の送信所が多く、コストの割には聴取が難しい面もあろうと思う。
一方のラジオ第2は全国放送前提で、大電力の送信所に集約しており、遠くても大電力の方が聴取しやすいのがAM放送である。
どうせAMでは地域ごとの編成なんてやらないよって、ラジオ第2に集約した方がコスト面でも聴取環境でもよいかもしれない。
どちらにしてもAMが聴取しにくい人にとっては らじる★らじる なのでどっちでもいい。
僕が一番納得のいかないのは、民放はNHKに不平を言う割には、ろくな番組を編成しないじゃないかということである。
確かにNHKはチャンネルを少し持て余し気味ではあって、そこを無理に使っているような面もあるとは思うのだが、
そのおかげで、災害報道とか議会中継とか政見放送、あるいは ややマイナーなスポーツの中継ができているのは確かなんだよね。
そこでBS1は緩衝地帯として重要な役割を果たしているんじゃないかと思うんですよね。
取捨選択する中で、テレビは平時ならチャンネル減らしても収まるけど、いろいろ重なると収まらないということが起きそうではある。
こうして同時間に重なる番組が軒並みNHKがやらなければ誰もやらない番組だということもあろうから困るのである。