輸送で有利か不利か

今日も競馬観戦をしていて、なんか難解そうなレースだなぁとぼーっと見ていたら、

やっぱり予想もしないレース結果でやっぱり難解だったんだなぁとか。

「このままでは札幌記念まで予算が持たない」と嘆く人も。

熱心なファンにとってもこのシーズンの競馬は難解なんですね。


以前も紹介したけど、夏は主要な競馬場では秋に向けた補修作業が行われている。

芝の貼り替えなんていうのはわかりやすい話だけど、ダートもクッション砂の洗浄作業なんてのをやってるらしい。

冬はダートの季節?芝とは違う砂の魅力 (Umabi)

路盤の上にクッション砂を敷いたのがダートコース、馬はクッション砂を掻き分けるように走っているように見える。

このクッション砂は馬が走ると段々砕けていき、埃が舞う原因になったり、水はけの悪化の原因になる。

「洗浄」というのは、この砕けた細かい粒子を取り除くことであり、そうして取り除かれた分は新しい砂が補充されると。

砂を全部入れ替えては大変だし、良質の砂が際限なく取れるわけでもない。そこでこんなことをしてるんだそうで。


その間はローカル競馬場での開催が続くのだが、JRAにとって悩ましい事情もあるようだ。

というのも、この期間の大レースといえば、GIIでは札幌記念があるが、GIはない。

その他のレースでも頭数が揃いにくいレースがしばしばあって、妙に頭数少ないなというのは確かにある。

なので他の時期に比べて馬券は売れず、各地の競馬場への輸送費がかさんで仕方ないそうである。

課題も多い夏競馬 出走馬の質低下、膨らむ開催費用 (日本経済新聞)


輸送費という課題はあるけど、北海道は育成牧場が数多くあるので、

北海道で育てられてきた馬が、そのまま北海道の競馬場でデビューしたり、

北海道で走って夏休みに入る馬、あるいは北海道で夏休み明けを迎える馬など。

ちなみにJRA所属馬は原則としてレース前10日以上前にトレーニングセンターに入ることになっているが、

札幌・函館・新潟・小倉の4競馬場については、牧場から直接入ることができて、これもレースの10日以上前に入ればOKだそう。

北海道以外では、西日本の牧場にいる美浦所属馬が小倉に直接入ることがあるらしい。新潟も北海道から直接入るという使い方があるらしい。

少しでも輸送負担を減らして、よい状態で走らせたいというのは調教師なら誰しも考えることだろうけど。


新潟競馬場と札幌競馬場の2場開催という初めての取り合わせは、輸送が肝心なようだ。

まず、新潟競馬場では栗東所属馬が大活躍。昨日は1レース~10レースで10連勝だった。

本当に新潟競馬場って東日本の競馬場なのかと言われるような状況だった。

栗東所属馬のレベルが高いという要因はあるんだろうが、輸送負担の少なさも要因なのでは? とまことしやかに言われている。

栗東~新潟の輸送は北陸自動車道をひた走ればよく、道中の信号は8つらしく、安定して走れそうですね。

美浦~新潟の輸送は常磐自動車道~磐越自動車道らしい。意外なルートだったけど、茨城県からだとそっちの方が近いんですね。

所要時間で言えば、美浦からの方が近いらしいが、3回の山越えがあるので馬には大変かもねと。


一方の札幌競馬場、こちらはパドックの解説を聞いていると「美浦からの直前輸送」という言葉がしばしば。

そもそも、札幌・函館では多くの馬がある程度の期間、滞在して競馬をすることが一般的である。

「この馬は滞在向きですね」なんていう解説もあるように、夏の北海道だからこそという馬もいると。

ところが美浦~函館だと直前輸送はけっこう多いらしく「中間は美浦で調整され」なんて解説もあった。

函館で走って、美浦に帰って、また函館に来てリベンジと。そういうことをしてた馬もいたわけである。

札幌だと函館よりももっと遠いわけだけど、それでさえ直前輸送は一定あるようだ。


直前輸送は馬にとっては負担かも知れないが、トレーニングセンターには調教設備が揃っている。

さらに各厩舎が競馬場に持っている馬房数にも限りがあるので、滞在するとやりくりに困る場合もある。

それなら、美浦~函館・札幌は直前輸送で行こうというのも作戦なわけですね。

それで実力が出せているのかはよくわからないけどね。


ちなみに本州~北海道の馬の移動は全て青森~函館だけフェリーだという。

美浦~札幌だと八戸~苫小牧のシルバーフェリーがいいんじゃないかとか思うけど、

フェリーの車両甲板ではエンジンを切らねばならず、できるだけ乗船時間は短くしたいので、あくまでも青森~函館のフェリーを使うとのこと。

ちょっと考えてみたけど、一応は青森~函館だけフェリーの方が少し早くて、フェリーの便数も多いので、合理的ではあるようだ。

それにしても美浦・栗東~函館・札幌の輸送を繰り返す運転手も大変だし、馬に付きそう厩務員たちも大変ですね。

それでも直前輸送なら週末だけの出張で済む分だけ楽かもしれませんね。

というか、行った馬がそのまま帰ってくるわけではないということは、馬運車の手配も大変だね。


もう1つの本州以外の競馬場、小倉競馬場は栗東からは直前輸送が基本で、そこは新潟・福島と同じということである。

美浦からは滞在で出走したいが、これもまたやりくりが大変で、直前輸送になる馬もいるみたいですね。

一方で、栗東トレーニングセンターに美浦所属馬が滞在することもできるようで、

ここをうまく使って小倉での出走をする馬もいるらしく、そこは使えるところは使うと。

輸送の負担が軽く、栗東~小倉は直前輸送でよくて、トレーニングセンターなので調教設備が整っているわけだから。


ちなみに、未勝利戦と1勝クラスでは、東日本の競馬場では美浦所属馬が優先、西日本の競馬場では栗東所属馬が優先というルールがある。

第3場(3場開催のときの東京・中山・京都・阪神以外の競馬場)では中立だとか、北海道では中立だとか、いろいろあるようだけど。

このルールができたのは2012年で、当時は馬券の売り上げが低迷しており、経費節減が必要だった。

で、この頃に栗東所属馬が輸送のしやすさを生かして、東日本の競馬場で大暴れしていたらしく、

そうすると輸送費(JRA負担)がかさんで仕方ないということで、こういう制度が導入されたんだという。

美浦所属馬の勝ち上がりのチャンスを確保する目的もあったのではと言われていたそうだが、実際に効果はあったのか?

ちなみに未勝利戦ではこの制度はあるけど、新馬戦では中立なので、栗東所属馬が新潟でデビューすると、

またあのコースでリベンジしたいとなってもなかなか叶わないなんていう悩みもあるらしい。


この先、9月になると中山競馬場・中京競馬場(例年なら阪神競馬場)の組み合わせになり、

両トレーニングセンターから近い方は当日移動、遠い方も前日移動で楽々ですね。

最初に書いたように、これは競馬場の補修のための措置ですから、補修が終われば主な競馬場に帰ってくるわけだ。

そこまでは大変だなぁと思うけど、この時期だからこそのレースもあるので、それを勝利につなげたいというのが調教師らの思いだろうか。