昨日、成分献血の話を書いたけど、なぜあのうるさい装置にこだわるのだろうと計算をしてみた。
現在、血小板製剤は成分献血由来のもののみ製造している。
以前は400mL献血から2単位の血小板製剤を作っていたそうだが、これにはいろいろな問題があった。
基本的に輸血に際してはドナーの数が少ない方が好ましい。2単位の血小板製剤を何個も組み合わせるのは不都合なのだ。
製造上の問題もあって、血小板を分離するとき、血小板の方に少し血漿を残す必要があり、かつてはそれで血漿製剤が目減りしていたらしい。
思い切って400mL献血からの血小板製剤製造をやめると、その分、血漿の確保がしやすくなるというメリットもあるようだ。
輸血上も製造上も成分献血由来の血小板製剤が有利なのだ。
それで、血小板成分献血では1人から10単位・15単位・20単位のいずれか採取するのが一般的だそう。
血液製剤の1単位は200mLの血液からできる血液製剤をさすが、血小板製剤については1単位あたりの血小板が0.2×1011個以上というのが規格値だそう。
血小板数は個人差があるが、過去の検査結果を見ると、僕の血小板数は概ね 22×104個/μL=2.2×1011個/L となっている。
ということは、0.2×1011個の血小板というのは、僕の血液の100mL弱に含まれる血小板数と等しいことになる。
血液200mLから1単位の血液製剤ができるという説明とは会わないが、血小板が少ない人とか、製造上のロスなども考慮して、この規格値なんだろう。
ただし、成分献血の場合はその人の血小板数に応じて採取量を調整している。
なので、20単位の血小板製剤を作るのに、200mL×20=4000mLも血液を吸い上げるわけではない。実際はもっと少なく済む。
調べたところ、血小板採血の回収率はおよそ80%程度だそうだ。
吸い上げた血液に含まれる血小板の8割程度は血小板製剤になって、残りは戻されるということかな。
その上でさっきの規格値から、必要な血液採取量を計算してみると、
- 10単位: 2.0×1011個 / (2.2×1011個/L) / 0.8 = 1136mL
- 15単位: 3.0×1011個 / (2.2×1011個/L) / 0.8 = 1704mL
- 20単位: 4.0×1011個 / (2.2×1011個/L) / 0.8 = 2273mL
だいたいこれぐらいの血液を吸い上げる必要があると。
ただし、これだけの血液を一気に吸い上げると問題があるので、
吸い上げて、赤血球を多く含む部分を戻してという操作を繰り返す必要がある。
昨日書いた後で気付いたんだけど、過去にこのBlogで採血装置のことを話題にしていた。
うるさいと書いたのが「トリマ」という装置、あまりうるさくないと書いたのが「テルシスS」または「CCS」という装置だ
テルシスS または CCS では僕の場合400mL前後の血液を取り込んで、処理した血液を戻すという操作を複数回繰り返す。
400mL前後という数字は人によって違うが、僕の場合はいつもこの程度だった。
さっきの必要な血液採取量から考えると、10単位だと3サイクル、15単位だと4サイクル、20単位だと5サイクル必要と求まる。
このタイプで5サイクルというのは過去に1回だけ。3サイクルは数回あったかな。ほとんどが4サイクルだ。
すなわち、主に15単位、時々10単位の血小板製剤を作るのに協力していたと言うことなのかなぁ。
真相はよくわからないんだけどね。看護師に聞けば教えてもらえたかも知れないけど、特に聞いたことはないし。
一方でトリマは基本的には20単位の血小板製剤を作るために使われるらしい。
この装置の特徴はサイクルがないこと。断続的に血液を取り込んで戻してとやっているらしい。
その分、採血時間が短く済むというメリットがある。
そのメリットが特に生きるのは採血量が多くなる20単位の血小板製剤の製造ということになる。
他の装置だと5サイクルとか6サイクルとかなりかねないところを、トリマを使えば短時間で済むよと。
短時間って言っても絶対的な採血量は多いので、1時間半ぐらいはかかっちゃうんですけどね。
これに関連していろいろ調べていてわかったんだけど、原理的にトリマを使った20単位の血小板採血は副反応が大きくなりがちらしい。
成分献血では血液を遠心分離する都合、血液が凝固しては困る。
ここでクエン酸を加えて凝固を抑えているのだが、戻される血液にも当然クエン酸が含まれる。
そのため、成分献血中は血中のクエン酸の濃度が高くなり、しびれなどを感じることがあると。
言われて見ると心当たりはある。400mL献血とは明確に違う。
トリマを使う場合、血液を処理するスピードが速い=時間あたりの流入量が多く、なおかつ採血時間も比較的長くなる。
ということで副反応はどうしても起きやすくなる。なるほどなぁ。
昨日、採血中にタブレットのお菓子(おそらくヨーグレット)を渡された。
これは初めての経験なのだが、クエン酸反応の対策としてやっていることのようだ。
クエン酸反応は血中のカルシウムをクエン酸により消費してしまうのが問題なので、カルシウムを取り込めば緩和できる。
そこでカルシウムを多く含むタブレットを渡してきたわけだろう。
どれぐらい効果あるんでしょうね? 害のあるものではないし、やらないよりマシか。
基本的に20単位までならば無理なく採血できるという想定ではあるんだろうけど、
僕の血小板数を使っての試算を見ても、10単位・15単位に比べて、20単位はかなりきついという印象を受ける。
そりゃ20単位だけは特別な装置を使うわけだって。他の装置では時間がかかりすぎてしまう。
血小板数が多い人なら楽なのかもしれないけどね。けど特別多い人でなければこんなもんでしょう。
体質の問題もありますから、過去の採血で気になることがあれば問診や検査で申し出て検討してもらうということになるんでしょうね。
流量を変えるなどの運用上の工夫でも緩和されることがあるようなので。