フライ用のパン粉ってこと

最近、鶏肉が安いもんで買うことが多い。

特にむね肉が安いので、買ってはチキンカツにして食べることがけっこうある。

むね肉の食べ方としては一番好みだ。


そのためには衣としてパン粉を使うのだが、

先日、パン粉についておもしろい話を教えてもらった。

仕事でアメリカに出張していた人が「アメリカでも『パン粉』は”panko”なんだって」と言ってたのよね。

え? それがアメリカでそのまま使われるような言葉なの? と驚いたようだが、どうも日本のパン粉は画期的だったらしい。


そもそも、パン粉というのはもともとヨーロッパにあったものだ。

フランス語では chapelure 、英語では bread crumbs と呼んでいる。(それは今でもそう)

これは日本にもフランス料理とともに持ち込まれた。

もともとフランス料理では、揚げ料理の衣に使ったり、グラタンの表面にかけたりしていた。

……というところまで見ると、なんでアメリカでも panko って言ってパン粉を売ってるのかさっぱりわからんな。


日本の洋食で独自に発展した料理はいくつかあるが、その1つとしてフライというのがある。

もともとフランス料理の côteletteに由来し、日本では英語表記からカツレツとして伝わっている。

これは牛肉にパン粉を付けて、少量の油で揚げ焼きにする料理だった。

ところが日本に伝来して、いろいろやったところ、豚肉にパン粉を付けて大量の油で揚げるポークカツレツが生まれて、評判になったのだという。

このポークカツレツは現在は とんかつ として知られ、和食に分類されることも多いが、経緯からすれば洋食である。


こうやっていると、当初のフランス料理のパン粉と求められるものが変わってきたんだよね。

もともとのパン粉は乾燥して固くなったパンを細かく砕いたものだったのだが、

大量の油で揚げる前提だと、粗く砕いたものの方が衣がサクサクになってよいことがわかった。

こうして生パン粉として知られる、やわらかいパン粉が生み出されたのだった。

日本の洋食で発達したフライを作るには、それに適した日本式のパン粉が必要になる。

というわけで、日本式のパン粉が “panko” として世界各地で売られるようになったのだという。


まさかパン粉がこんなわけの分からんことになってるとは思わなかったのだが、

フライは日本の洋食では特徴的な料理であることは確かだろうし、その用途のために変化してきたというのも分からんではない話だ。

それでも、そもそものルーツとなったパン粉があるヨーロッパをはじめとする各地に再輸出されるってのはただ事ではないよね。

日本料理の材料という理解かもしれないけど、そうとしても、なかなかできるもんではないよねぇ。

いやはや。