日記帳だ! with Tux on Libserver

二度目の大改造!! 日記帳…か?を継承し、より柔軟でパワフルなBlogに変身しました。

RSSに対応しています。リンク・コメント・トラックバックは自由にしていただいてほぼ問題ありません。
RSS購読方法、僕のリンク・コメント・トラックバックについての考えを読むことをおすすめします。

<< 過去

未来 >>

なんでデジタル放送だと同一周波数でいいんだろ

地上デジタル放送の特徴として単一周波数ネットワークというのがある。

これができるおかげで、UHF53~62chを携帯電話用に転用したり、

茨城県・栃木県・群馬県でのNHK総合テレビの県域放送ができるようになった。

というわけで、すごく画期的な技術なんだけど、なんでできるようになったんだろ?


同一周波数ネットワークというのは、同じ周波数の送信所を並べてネットワークを作る方式だ。

i-dioがよい例だが、関東甲信越については全ての送信所が105.428571MHzで送信する。

親局の東京タワーも、秦野中継局も、将来できるかも知れない群馬県の送信所も、全てこの周波数を使う。

テレビで全ての送信所を同一周波数にしている放送局はないはずだが、複数の送信所で同じ周波数が使うことは普通にやっていて、

例えば埼玉県のNHK教育テレビの中継局で使っている物理Chを見ると26chと17chの2種類しかない。(cf. 受信情報 (NHKさいたま放送局))


アナログ放送では基本的にこういうことをしない。

なぜならば、同じ周波数で複数の場所から送信すると、複数の送信所からの電波が干渉して受信しにくくなる地域が生じるからだ。

それでも周波数を有効利用するために、同期放送という方法で同一周波数の中継局を設けることがある。

一部のAMラジオ局と、コミュニティラジオ局で採用されている。

複数の送信所の周波数を精密に合わせると干渉の影響を緩和できるという理屈なのだが、

この方式でも干渉が生じて受信しにくくなるエリアは発生するのが実情だそうで。そういうエリアを山間部とかに押し込めてるだけだと。


なんでデジタル放送では単一周波数ネットワークができるようになったのか?

その理由はOFDMという変調方式を使っているからだそうだ。

OFDMってどんな変調方式なのかと調べると、

  • 与えられた帯域を細切れにして、多数のキャリアを並べる (ISDB-Tでは5.57MHz幅に432本×13セグメント=5617本)
  • 各々のキャリアは周波数空間で直交するように選んでいるのでお互いに干渉しない
  • 1つずつのキャリアの帯域は狭い分、シンボルレートは遅くする(ISDB-Tでは1008μsで1シンボル送る)

アナログテレビではキャリア(搬送波)は音声・輝度・色の3つだったはずだから、デジタルテレビは5617本だから3桁も多い。

アナログとデジタルで比べるものでもないとは思うが、キャリアの数が多いというのが大きなポイントだそうだ。


位相差のある複数の波を重ね合わせると、その時々で強め合ったり、弱めあったりする。これを干渉と言っている。

複数の送信所からの電波を重ね合わせたときにも発生するが、1つの送信所から受信する場合でも、長距離伝搬するときは発生する。

というのも、長距離伝搬するうちに反射などで、伝搬経路の違う複数の電波が重ね合わされるから。

遠くのAMラジオ局を受信すると、音量が大きくなったり小さくなったりするけど、これこそまさに干渉だ。

ただ、周波数ごとに弱め合うタイミングと強め合うタイミングが違うから、

キャリアが5617本もあれば、その時々で干渉して使えないキャリアもあるけど、使えるキャリアもたくさんあると。


ところが、これだけでは問題は解決しない。というのも、伝搬距離の差で遅延量にも差が発生するから。

電波が10km伝搬するには33μs、50km伝搬するには167μsかかる。

ということは、50km離れた送信所からの電波は、10km離れた送信所からの電波より134μs遅れて到達することになる。

アナログテレビではこの差がゴーストとして見えていた。ずれた画面が重ね合わされたように見える現象ですね。

音声ぐらいゆっくりした信号ならさほど問題はないんでしょうけど、映像だと大きな問題になる。


しかし、この問題もOFDMのキャリア数が多いという特徴により解決されることになる。

キャリア数が多い分、1つのキャリアで使う帯域幅を狭くする必要があり、そのためには伝送スピードは遅くせざるを得ない。

アナログ変調を例に取るとわかりやすいけど、AM変調でf[Hz]の信号を送るには、2f[Hz]の帯域を使う。

AMラジオは7.5kHz程度の音声しか送らないので、占有帯域幅は15kHzで済む。

これに対してアナログテレビの映像信号は4.2MHzもある。音声信号など含めて占有帯域幅は6MHzとなる。

狭い帯域幅では遅い情報しか送れないというのは、ここからも理解できると思う。

実際、ISDB-Tでは5617本もキャリアがあるが、1つのキャリアは1008μsで1シンボルしか送らない。

1シンボルには6bit(ワンセグ以外)、2bit(ワンセグ)を割りあてている。(1シンボルで表す情報量が少ないということは、その分ノイズに強い)

1秒に1000シンボル、1シンボルで6bitとしても6000bpsだが、これが5617本もあるので30Mbpsぐらいになる。

確かにハイビジョン映像送れそうな数字だね。(実際には情報を冗長化しているのでこれより低いが、実際のデータレートも16.8Mbps程度)

このシンボルレートが遅いという特徴により、複数の電波の重ね合わせで遅延が生じても無視できるようになる。

1008μsで1シンボルということは、1シンボル解読するのに1008μsかけてよいことになる。端は遅延の影響を受けても、真ん中が大丈夫ならOKだ。

さらにシンボル間に126μsのガードインターバルを空けてあるので、送信所同士の遅延量の差がこの範囲に収まれば、シンボル本体は何も影響が出ない。


周波数を細切れにして、多数の周波数に情報を散らし、それぞれの周波数ごとではゆっくり送る。

多数の周波数に情報を散らしているおかげで、干渉でダメな周波数があっても、問題ない周波数で救える。

情報をゆっくり送ることで、送信局同士の遅延量の差があっても、吸収できてしまう。

この結果、単一周波数ネットワークという仕組みが成り立つわけだ。

こういう変調方式が成り立つのはデジタルだからこそというのはあるんだけど、

いろいろあるデジタル変調方式の中でも、同一周波数ネットワークを構築できる条件を選んでいるのは言うまでもない。

遅延量の問題があるので、シンボルレートが速いとどうやってもできないですからね。遅いってのが大きなポイントではある。


他にデジタル放送では、チャンネルにすき間を空けずに敷き詰めてよいというのもある。

6MHz幅のうち、5.57MHz幅にキャリアを敷き詰めても(=片側あたり215MHzのすき間を空ければ)、隣接チャンネルには影響なしというほどだ。

アナログテレビは、隣接のチャンネルから干渉を受けることを防ぐため、すき間を空けて使っていた。

確かに、近畿広域圏ではVHFで2,4,6,8,10,12chと偶数チャンネルだけ使っていたよね。今はそういうことをしなくてよい。

むしろアナログのときはすき間が必要だったのかって話だけど、デジタルになって改善したことの1つではある。


Author : Hidemaro
Date : 2018/01/26(Fri) 23:58
電気・数学・物理 | Comment | trackback (0)
blog comments powered by Disqus

トラックバック

トラックバックURL取得

Tools