高速道路とラウンドアバウトの組み合わせ

高速道路のインターチェンジというと、典型的にはトランペット型で一般道と接続される。

トランペット型インターチェンジ (通信用語の基礎知識)

この方式を使う最大の理由が両方向の料金所をまとめられること。

両方向の料金所をまとめられて、平面交差がなく、立体交差が1箇所で済む方法はこれしかない。

ただし、小さな面積に収めようとすると小さな半径で270度旋回する必要があったり、不都合もある。

立体交差の数を増やしてよければY型という方法もあって、これもそこそこ使われているらしい。


一方で、無料の高速道路では、料金所のことを考える必要が無い。

そのため、名阪国道では、ダイヤモンド型のインターチェンジが多い。

ダイヤモンド型というのは高速道路の下か上を走る一般道に十字路でランプウェイを直結しただけの構造。

この方式は平面交差が発生するが、面積も小さく出来てシンプルなので、無料の高速道路にはもってこいの方式だ。

名阪国道 上野東IC (Yahoo!地図)

これでいいんだよね。ただ、ランプウェイを出てすぐに信号なので、出口渋滞がすぐに本線に延びそうとか問題も多いが。

名阪国道は山間部にも小規模なインターチェンジが多いが、それができるのはこんな簡単な構造で済むからこそ。

今でこそ自動料金収受装置とかETC(スマートIC)とかで料金所集約の必然性はなくなったが、名阪国道ができた1965年にはあり得なかった。


そんな中、新しい試みとして、全部立体交差にはしないけど、

平面交差部をラウンドアバウトで処理するインターチェンジが今後出てきそうという話がある。

まず、無料の高速道路のダイヤモンド型のインターチェンジにラウンドアバウトを導入する例。

ラウンドアバウトの体験走行を実施します~山陰道 朝山インターチェンジ(仮称)に日本初のダブルラウンドアバウトを導入~ (pdf) (松江国道事務所)

山陰自動車道は採算性の問題から、陰陽連絡道路と接続する一部区間以外は無料の国道バイパスとして整備されている。

なので、簡単な構造であるダイヤモンド型のインターチェンジも取り入れられるが、それはそれで問題もある。

問題の1つが、料金所もなく、十字路で分岐するだけだから、簡単に逆走できること。

実際、名阪国道では逆走による事故がたびたび起きているようだ。

ここで十字路をラウンドアバウトにすることで、逆走防止になると書かれている。

なぜ逆走防止になるかというと、環道と分岐・接続する部分に角度を付けると、間違えた分岐になることを防げると。

あと、ラウンドアバウトはその構造上、速度を落とす必要があるので、交差部での事故が減らせるということを期待しているようだ。


有料の高速道路でも、コストダウンのためにラウンドアバウトが使われることがあるようだ。

トランペット型は立体交差1箇所で済むが、急カーブを防ぐためにはそれなりの面積が必要になる。

Y型にすれば狭い面積で設置できるが、立体交差が複雑になるので、コストが高くなる。

そこで平面Y型ということで、一方のランプウェイは平面交差で処理するという妥協策がとられることがある。

ただし、高速道路から出てきていきなり平面交差かよって話になるし、いろいろ問題もある。

そこで、この部分をラウンドアバウトで処理するという方法が新東名高速道路で建設予定のスマートICで採用される。

新東名高速道路(仮称)新磐田スマートICの設置に向けて②(pdf) (磐田市)

このスマートICは新たにランプウェイを作るということで、スマートICにしてはお金がかかるタイプ。

ただし、せめて低コスト化のために平面Y型にするという工夫はあった。ただし平面交差部に安全性の懸念がある。

そこでラウンドアバウトにすることで、安全に交差できるようにしようとなったようだ。


ラウンドアバウトは日本では2013年から環状交差点として制度化された。

当初は複雑な交差点を整理するという形での導入から始まったような気がする。

初期はなじみのない制度だったこともあって、交差点の入口は「止まれ」にしていることも多かったようだが、

「止まれ」ではラウンドアバウトのメリットが薄れるので、現在は「止まれ」ではなく「ゆずれ」になっていることが多いよう。

具体的には、交差点入口に環状交差点標識、そして路面には停止線と「ゆずれ」と書かれていると。

「ゆずれ」ってそんな標示あったっけって調べたら、実は「止まれ」という標示も規定外の標示だったよう。

「止まれ」標識 か 赤点滅信号 のどちらかで一時停止を示した上で、参考情報として「止まれ」と書いてあると。


じゃあ「ゆずれ」に対応する標識って何なのかというと、環状交差点標識がその役目を果たしているようだ。

環状交差点標識があると環道優先という意味になるので、環道に車が走っていれば一時停止の必要がある。

これは通常の交差点(信号も「止まれ」標識もない)で優先道路に車が走っている場合と同じだ。

ただし、これだけではわかりにくいということか、規定外で「ゆずれ」標識を付けているような例もあるようだ。

「ゆずれ」標識が制度化されている国も多いのだが、日本では交差点には信号を作るか、一方を一時停止にしてしまうことが多かった。

制度上は 前方優先道路 という標識・標示があるのだけど、そもそも使う機会が少ないのは、そういう理由だろう。

ラウンドアバウトは全ての車が徐行しなければならないので、あえて一時停止を必須とするメリットもないとも言える。


高速道路でラウンドアバウトというのは意外な気がしたけど、

高速道路と平面交差は単純には相性が悪いけど、ラウンドアバウトを介せば、徐行してそのまま通過できる場合も多そう。

さほど通行量の多くないインターチェンジでの利用なので、ほとんど無停止で通過できるという想定もあるのだろう。

一方でいくら無停止といっても、環道をぐるりと回る必要があるので、徐行は必須になる。

いきなり信号とか、いきなり一時停止ではなく、ラウンドアバウトというのはちょうどいい選択肢ではあるのかなと。

ただ、日本ではあまりなじみがないのも実情なので、完成してみると新たな課題も見つかるかも知れないけどね。