衆議院比例区のブロック制のデメリット

衆議院の比例区の定数を180人から100人に減らす法案を出す予定だ、ということがニュースにあった。

ニュージーランドなどで取り入れられている小選挙区比例代表連用制にするとかいろいろ噂はあったがあんまり引き延ばすわけにもいかず、というところだろう。

(参考 : 小選挙区比例代表連用制で全体的に比例を得よう)

これをどう見るかは立場によって変わってくるだろうが、小選挙区制中心という衆議院の特色がより強くなることだろうと思う。

それでテレビのニュースで比例区の定数を180人から100人に減じたときのブロックごとの割り当て議席数のリストが出てたのだが、

四国ブロック3議席とか出てきて、これで比例代表制というとかどやねんと思って見てた。


衆議院議員選挙の比例区は北海道・東北・北関東・南関東・東京都・北陸信越・東海・近畿・中国・九州の11ブロックごとに選出が行われる。

普通、比例代表制といえば全国1区で行うのが一般的で、参議院議員選挙では全国1区でおこなっている。

ところがどういうわけか知らんが衆議院議員選挙では比例区をブロックごとの選挙区で行うことにした。

なんか比例区の議員にも地域性を出すためだとか聞いたことがあるけど、ろくでもない制度だなと以前より思ってた。


というわけで計算してみましょう。

2009年衆議院議員選挙では、比例区11ブロック合計で、民主党87議席・自民党55議席・公明党21議席・共産党9議席・社民党4議席・みんなの党3議席・新党大地1議席を獲得している。

細かい事を言うと、小選挙区との重複立候補者で小選挙区で供託金没収となった立候補者がいたためにみんなの党はあと2議席得る権利を失い、

民主党は近畿ブロックであと2議席得られるところを立候補者数が不足して得られなかったということがあった。

なので純粋に比例区で当選する権利のある人数が何人かということを見るならばちょっと変わってくる。

さて、もし全国1区で比例代表制の選出を行ったら各政党は何人得ることが出来るか? 得票数の全ブロック合計より求める。

この中には新党大地など一部のブロックでしか立候補してない政党などもあるが、それらもそのままの得票数で計算する。

すると各政党の得られる議席数は、民主党78議席・自民党49議席・公明党21議席・共産党12議席・社民党7議席・みんなの党7議席・国民新党3議席・新党日本1議席・幸福実現党1議席・新党大地1議席となる。


比較してみると驚くべきことは実際には1議席も獲得できなかった国民新党が3議席も獲得してることですね。

北海道ブロックでしか立候補してない新党大地の3倍ほどの得票を全国合計すれば獲得してるのに、分散してるもんでどこでも当選に至らなかったんですよね。

共産党が9議席から12議席に増えてるのも注目するべきところだろう。あと少しで1議席っていうのをかき集めたら増えたようだ。

新党日本・幸福実現党からも1人ずつ当選者が出てるが、全国からかき集めればそれぐらいの当選者は出るようだ。

と、ブロック制にしてるせいで小さな政党にとっては不利な結果となってることがこれらの結果からわかる。


小さな政党には不利とはいえ、よい面もないわけではない。

ヨーロッパでは比例代表制で小政党が乱立しないように、一定以上の得票数を得なければ足きりされる制度が設けられている。

たとえばドイツの場合、5%の得票数を得ないと比例代表での議席が一切得られない。

衆議院ではブロック制にしたことにより、ある程度の得票数を得ないと1議席も得られないようになった。

一番数の多い近畿ブロックでも定数29だから、おおざっぱに1/29=3.4% ぐらいの得票数を得ないと当選者が出せない。

3%ぐらいの得票数を得ないと比例区での当選者が出ないというのは妥当かなとも思う。


しかし四国ブロックのように極端に定数の少ないブロックでは、1/6=17% ぐらいの得票数を得ないと1人も当選者が出せないことになる。

定数削減が行われてもこのままの制度だと3人になるそうだから。1/3=33% ぐらいの得票数がいるということで、

これではあまりに死票が多くなりすぎてしまう。比例代表制のメリットがなかなか生きない。

四国の主要な政党以外の支持者はどこに票をぶつければよいのだろうか?

あとさっきの共産党のようなこともある。足きりされるほどでもないがそんなに大量に当選者が出せない政党だと当選者は出ても不利になる。


以前よりブロック制は問題だということは言われてきたのだけど、定数削減でその問題点がより際だってきたように思う。

制度の細かいところに手を入れる時間はないとはいうけど、ブロック制を廃するだけならそんなに手間はかからないでしょうし、

せめてそれぐらいはやってほしいと思う。

足きりも導入するべきだろうと思うけど、定数100人なら全国1区でも1%ぐらいの得票は必要で、それなりの足きりにはなる。

2009年の選挙を全国1区定数100人で計算すると、民主党44人・自民党28人・公明党12人・共産党7人・社民党4人・みんなの党4人・国民新党1人で、

新党日本・幸福実現党・新党大地といった小政党には当選者が出ないことになる。なのである程度効果はあるようだ。

足きり制度を導入するとなると合意に手間取るだろうが、それすらいらないなら本当に楽な話だ。ぜひやりましょう。


参考までにブロック制を維持したまま、100議席に減らした場合の計算結果(小選挙区との重複立候補者が供託金没収になった分は考慮済み)は、

民主党54議席・自民党30議席・公明党10議席・共産党4議席・みんなの党2議席となるよう。

どうも気持ち悪い結果である。社民党の方がみんなの党よりも全国合計の得票数多いはずなのに。共産党・社民党・みんなの党の議席の少なさもおかしいし。