Zホールディングスの親会社はAホールディングス
今日はZホールディングス(ZHD)とLINEの経営統合完了日、
新生LINE社はZHDの子会社となり、旧LINE社はAホールディングスと名前を改め、
ソフトバンク(通信会社)とNAVERの合弁会社として、ZHDの親会社の役目を果たす。
なぜAホールディングスなのかといえば「A to Z」という意図があるらしい。(他にもいくつか理由はあるよう)
Yahoo!の次ということでZホールディングスが生まれ、Zで終わるアルファベットの最初のAを取った会社が親会社というのは、
もうほとんどダジャレみたいな話だと思うけど、期待度は高い。
経営統合記念ページに東日本大震災から10年と書いてあったが、よく考えたらLINEが生まれるきっかけはこれなんですよね。
大災害でも電話網に比べて比較的持ったインターネット網を使って、家族・友人とコミュニケーションできるようにと、
当時ハンゲームを運営していたNHK JAPANで開発が行われ、2011年6月にリリース、そこから爆発的に普及した。
2013年にゲーム部門を分社化し、LINE と NHN JAPAN(ゲーム部門)は兄弟会社として別れることになった。
話は前後するけど2012年にはライブドアのポータル部門・データセンター部門を吸収しており、
データセンター部門はNHN JAPAN側に付き(現在のNHNテコラス)、ポータル部門はLINE社のもう1つの柱となった。
こうして見てみると、LINEとNHN JAPANにとっては激動の10年間だったことがわかる。
もう一方のYahoo!にとっても防災は大きなテーマである。日本最大のポータルサイトの使命だろうか。
パッと見てPayPayとLINE Payというスマートフォン決済サービスの1位・2位(だよね)の合併、
早速、コード決済についてはユーザースキャン方式では、PayPay加盟店をLINE Payで利用できるようになり、
来年4月にはPayPay側に一本化する方向で検討を進めるとのこと。(一本化されるのは日本国内のコード決済と限定しているが)
ZホールディングスとLINEの経営統合が完了 (Zホールディングス)
やはりそっちなんだね。LINE Pay特有のVisaバーチャルプリペイドカードなどの行方はどうなるんだろう。
あと、もう1つ指摘されているのが宅配アプリですね。
さっきのニュースリリースにも書いてあるが、出前館はLINEが出資しており提携関係にある。
また、ソフトバンクグループはアメリカのUberの筆頭株主である。Uberは日本ではUber Eatsのフードデリバリーで存在がある。
(PayPayアプリでUber Eatsのアイコンが目立つところに置かれているのはおそらくこの関係性による)
というわけで、日本のフードデリバリーの2強が共にソフトバンクグループとの関係を持つことになった。
話によれば日本は世界でも数少ない Uber Eats がうまくいっている地域なんて話はあって(日本でも地域によるが)、
そんな中で日本土着の出前館が日本におけるUber Eatsを飲み込む? なんて大胆な話も噂されている。
真相はさておき、今日から始まったPayPayのキャンペーンではUber Eatsと出前館の双方がボーナス付与対象になっている。
でもやっぱりZHDの最初の狙いはEコマースみたいですね。
LINEがやりたかったができなかったことと、Yahoo!が頑張って育ててきたことがここで重なるわけですね。
2013年に「eコマース革命」を掲げたときのYahoo!ショッピングというのは散々なもので、
そこでロイヤリティー無償化(現在も大きくは変わっていない)という策をとって、モールの充実を進めたわけだが、
気づいてみればちゃんと儲けを出せる事業になったわけである。立派ですね。
これとLINEがつながる日がもうすぐそこまで来ているわけですよね。
国内ECモール筆頭の楽天に食らいつくことができるか。チャンスはあると思いますけどね。
Author : Hidemaro
Date : 2021/03/01(Mon) 23:52
社会 | Comment | trackback (0)
名前は似てるし同根だけど無関係
意外と知られてないんだなと思ったんだけど、
三井住友銀行と三井住友信託銀行って名前は似ているけど、資本的に関係のない全く別の銀行なんですよね。
確かに同根ではあるし、三井住友銀行の設立時に、さくら信託銀行の株式を当時の中央三井信託銀行に譲渡した経緯もあるらしく、
全く無関係とも言えないところはあるが、そうはいっても両行は競合分野が多すぎることでも知られている。
そもそも「信託銀行」というのは銀行なんですよね。
銀行傘下の信託銀行は銀行業務はおまけ程度だったりするわけだけど、
三井住友信託銀行は独立系の信託銀行なので銀行業務だけでもけっこうな規模になっている。
確かに他の都市銀行に比べると店舗数は少なめかもしれないが、けっこう見るなぁという印象はある。
この点から都市銀行的な側面もけっこうある。都市銀行だって明確な定義はないけど……
信託業務を併営して複数の大都市圏に店舗網を持つ商業銀行というだけなら、りそな銀行も三井住友信託銀行も変わらない気がする。
世間の認識は多分そうではないだろうけど。
やはり両社が明確に競合する存在になったのは、SMBC信託銀行の設立なんじゃないのかなぁ。
他の都市銀行が信託業務を行っていたり、信託銀行を傘下に入れる中で、三井住友銀行は信託銀行を傘下に入れてなかった。
この結果として、住友信託銀行と中央三井信託銀行が独立系の信託銀行として取り残され、
独立系信託銀行としての生き残りをかけて2012年に合併、三井住友銀行とは資本的に関係がない「三井住友信託銀行」が誕生したという経緯があったそう。
ところがその後、三井住友銀行は富裕層をターゲットにしたプライベートバンキングに手をのばしたいということで、
2013年にソシエテジェネラル信託銀行(フランスのソシエテジェネラル社の子会社)を買収、これをSMBC信託銀行に改めた。
まぎらわしいよね。三井住友信託銀行があるので、それと被らないで三井住友銀行(SMBC)傘下であることを示すためにこうなった。
その後、2015年にシティバンク銀行の個人部門の譲渡を受け「PRESTIA」ブランドを立ち上げている。
PRESTIA=SMBC信託銀行なのか、それは違う概念なのかよくわからないが、
ともあれシティグループと提携した外貨関係の業務と、富裕層向けのプライベートバンキング業務を行う銀行が誕生したのだった。
富裕層に興味があるのは三井住友信託銀行も同じこと。
そんな三井住友信託銀行が興味を持ったのは、ダイナーズクラブのクレジットカードを発行するシティカードだった。
そうか、これもシティグループが日本での事業を縮小する中で手放すことになったものでしたね。
三越伊勢丹が興味を持っているとかいろいろありましたが、結果的には三井住友信託銀行の傘下に入ることに。
こうして三井住友トラストクラブに名前を変えて、ダイナーズカードとTRUST CLUBカード(旧シティカード)の発行を行っている。
あと、両社はそれぞれインターネット専業銀行を傘下に持ってますよね。
三井住友銀行の傘下にあるのは、ジャパンネット銀行(PayPay銀行に改名予定)、ヤフーと提携関係にあり、
現在はZホールディングスの子会社となっている。(が、三井住友銀行も46.57%の持分を持っている)
あとソニー銀行の設立にも関わっている。(こちらは2008年にソニーに持分の全てを譲渡している)
三井住友信託銀行の傘下にあるのは、住信SBIネット銀行(住友信託銀行の時代に設立したから未だに「住信」と残っている)、
こちらはSBIホールディングスとの合弁会社である。
そういえば、SBIってソフトバンクグループから独立した経緯のある会社なんですけど、
ジャパンネット銀行の親会社をたどっていくとたどり着くのはソフトバンクグループ、と考えると複雑な関係ですね。
一度は金融業を手放したソフトバンクグループだが、後にヤフーが買収・資本提携などの方法で金融サービスを強化した結果、こういうことになったのかな。
そんな複雑な三井住友銀行と三井住友信託銀行ですが、だいたいは名前が悪いわな。
揃いもそろって日本語では「三井」「住友」と並べるのに、英語名称では「Sumitomo」「Mitsui」と並べるんだから。
ここが違ったら独立性を示せた? もうちょっと工夫があってもいいとは思うけど。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/30(Sat) 23:56
社会 | Comment | trackback (0)
与太話のファクトチェック
こんなニュースが流れていたんだけど。
ファクトチェック : 「野党議員は自宅待機 自民党議員は無症状即入院」ツイートは不正確 (毎日新聞)
まず思ったのは、ファクトチェックって誰かもよく知らない人が言っている与太話を検証することなのか? ということだが。
調べてみると、毎日新聞では最近1年ぐらいファクトチェックに積極的に取り組んでいるようで、
国内外の政治家の発言、他社の報道、インターネットの与太話などいろいろ。
ただ、この記事は珍しくも全文が無料で読めるんですね。(他のファクトチェックは大概有料記事になっている)
新聞社としての社会的使命も考えてのことだろう。根拠に乏しい話が広がり続けるのを防ぐことはできるかもしれない。
この件の毎日新聞の判定は「不正確」となっているが、
これは問題となったTweetで、国会議員の感染者と入院状況を整理しているところの一部に誤りがあるということで、
全く誤りではないが、全てにおいて正しいわけではないということで「不正確」としていると思われる。
フェイクではないが、ファクトとも言えないということですかね。
この記事の最後でこうも書かれていて、
「石原氏が優先的に入院できたかどうかは今後、検証されるべきことです」と五野井氏は指摘した上で
ということで、仮にこれが事実であることが判明すれば、このファクトチェックは「ほぼ正確」という判定になると思う。
が、現時点では検証できないので、こういう与太話が出回ることは誤解を招くということである。
そこを掘り下げるのが報道機関の役目ではないかというのはともかく、すぐに明らかになる話ではないだろう。
一方で、この記事ではどうしてこういう与太話が広がったのかという点について分析している。
森友・加計学園や「桜を見る会」などの疑惑を例に挙げ、こう分析する。
「安倍政権下で政権に近い一部の人が優遇されているのではないかという疑念が人々の間で生まれたのではないでしょうか」
政治家が病気を理由に病院に逃げがちだとか、政権に取り入ったものが優遇されているんじゃないかとか、
そういう経験則により、与党会派の議員は優先的に入院できているのでは? という類推につながっていると。
与党会派の議員が模範的な行動をしないことも、このような非難を過熱させているとも言える。
自公衆院議員2人が深夜に銀座のクラブへ、取材に陳謝 (朝日新聞デジタル)
まとめとしてインターネット社会への警鐘が書かれていて、この主張自体はそうなんだけどね
自分の信じたいものだけを信じる傾向がネットの普及とともに増幅されており、その現象の一つといえます。事実に基づかないで批判するのは陰謀論ともいえ、危険です
ただ、そういう類推をされてしまうのは、過去に疑惑を晴らすように政治家が努力してこなかったからではという気もする。
そこに対して、毎日新聞はこういう記事をインターネット社会に投げ込んだわけだが、納得感があるかは別問題かなと。
さて、新型コロナウイルスの診断を受けて、自宅療養になった後、症状が悪化しても入院できないということは問題となっている。
以前よりも診断能力が増したことで、診断を受けた患者の総数が増えており、
軽症のまま推移する人が多い以上は、自宅療養を基本に考えて、家庭の状況・持病・現在の症状により療養先を考えざるを得ないと。
ここに異を唱える人は少ないと思うが、これは症状悪化時に適切な処置を受けられることが前提であって、
あまり予兆もなく症状が急激に悪化するようなケースもあるからこそなおさらである。
緩和策として「HOTセンター」を設けて、そこで入院まで酸素吸入などの処置を受けられるようにするという案がある。
<新型コロナ>病床ひっ迫、入院待機者の臨時施設を発足へ 酸素投与など実施 神奈川県 (東京新聞)
宿泊療養の一種なのかな? 本来なら入院が相当としても、すぐに処置できないケースがあるのを解決したいと。
事情はいろいろあるようで、1つは新型コロナウイルスの患者を受け入れるということは人的リソースの消費が激しいということ。
感染症対策に手間がかかること、病床に出入りする人を減らすために通常の病床よりも看護師が担う役割が多いことなどがある。
「ベッドは余っているじゃないか」というのはまさにミスリードである。
これは課題だと思うんだけど、例えばインフルエンザの患者より手間がかかるのは事情を考えれば仕方ないとも思う。
新型コロナウイルス患者を受け入れる病院が他の患者を受け入れにくくなった分は、
他の医療機関が肩代わりするという分業で乗り切って行こうという話で、これはある程度うまく行っているそうだ。
ところが、ここに課題があって、院内感染などの懸念から医療機関の分業に支障を来しているという話がある。
これが症状悪化した患者がなかなか入院して処置を受けられないことの要因の1つであると。
救急搬送断り続け、苦しむ医師「触れることもできない」 (朝日新聞デジタル)
コロナ患者の転院支援へ、大阪府が新チーム 病床を圧迫 (朝日新聞デジタル)
従来、ケガの患者はその程度によっては整形外科の専門病院に搬送するという対応でよかったが、
ケガ+発熱となると、新型コロナウイルスの疑いがあるため、なかなか受け入れ可能な病院が見あたらないと。
こういう疑いのある患者から他の患者への感染を抑制できず、院内感染につながったケースも事実としてあるので、
この対応自体は妥当であるものの、そこに対応できる医療機関は限られ、
そういう医療機関は往々にして新型コロナウイルス患者で逼迫しており、受入不可という回答をせざるを得ないと。
もう1つの問題が、患者がなかなか退院できないという問題。
3次救急医療機関は難しい患者を受け入れて処置して、症状が安定した時点で他の病院に転院させるという分業をしている。
ところが、新型コロナウイルスの患者の場合、症状が安定したとしても、感染性が失われるまでは受け入れ先が限られる。
主には他の病気で治療を受けいていても、新型コロナウイルスの感染を否定できないケースも同様ではないか。
そもそも新型コロナウイルスは重症化した場合、治療が長期化するケースがあって、これも大変なのだが、
そこまで行かずとも転院がうまくいかず病床を圧迫し続けるケースがあって困ると。
とはいえ、安易に受け入れては院内感染の懸念があるので、これもまた難しい問題である。
このことから、医療機関の立場にすれば、できるだけ病院に入れないというオペレーションを取ることに合理性はあると。
医療機関もやってきた患者を行くところもないのに退院させるわけにはいかないなら、入口を絞ると。
新型コロナウイルスに対してはほとんど対処療法しかないのだから、入院したところでできることは限られる。
そういう意味では妥当なのかなと思うところもあるが、宿泊療養で酸素吸入までするというのは、なかなかのことだなと。
医師の処置を受けられずに死亡するケースがいろいろ報告されていて、これはまさに野党会派の国会議員が経験したことですが。
「俺、肺炎かな」検査への車中急変、会話途切れ 羽田氏 (朝日新聞デジタル)
死後の診断となったのはともかく、特徴的な症状は死亡直前までなく、急変後は手をつけられず死亡という経緯を見る限り、
大きな不備もなく、不運だが死亡という結果を変えることは難しかったんじゃないかと思う。
与太話の発端となった、自民党の石原議員が無症状ながらに早期に入院できたことと比べられがちなことである。
こういう事例があったこと自体は事実であり、それが先ほどのような類推を補強してしまっているわけですよね。
ただし、これはかなり事情は違うことなので、これはこれで掘り下げて検証した方がよいと思いますけどね。
ということで、このファクトチェックは陰謀論への警鐘という点では一定の意味はあるかもしれないが、
背景となっている事象の掘り下げという点では足りていないのかなと思った。
このような陰謀論を打ち消すことができないのは、ここ最近の社会の課題ではあって、
そこを打開するためにファクトチェックの記事を全文無料公開したのだとすると、その方向性自体は正しいと思いますけどね。
問題はその内容が必ずしも正しい理解につながらないということであって。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/26(Tue) 23:52
社会 | Comment | trackback (0)
始業時間って10分単位だったんですか?
明日は午前中だけに勤務時間をシフトさせて仕事をする予定。
どうせ在宅勤務だし、こういうことはやりやすい。
時間単位有給休暇の端数調整の意味合いもある。
こういう風に勤務時間を大きくずらす場合、勤務時間の設定はいくつか考えなければならない。
その中でフレックスタイムが勤務開始時刻は10分単位にしなければならないというルールが1つの制約になっていた。
昼休み直前まで働いて、時間単位有給休暇を併用すると、5分単位の端数が残ってしまうと。
いくつかのパターンがあって、今までは15分不足にしておいて、後日に残業して打ち消す方法をよくやっていた。
でもめんどくさいなぁと思っていた。
そこで改めてルールを確認してみたら、勤務開始時刻は1分単位で申告するというルールに変わっていた。
おー、ということは5分単位の端数を残さずに時間単位有給休暇と併用できそう。
というわけで、それで上司には申告しておいた。
多分「勤務開始時刻は10分単位」なんてルール、誰も意識してなかったと思うけどね。
就業規則を見てみると、所定の始業時間や休憩明けが5分単位になっている職場もあるわけで、
そしたら所定始業時間とか、午前半休の勤務開始はフレックスタイムの概念に収まらないじゃないかと。
なので、多分今までもあれこれ言われることはなかったと思うが、
このルール変更で5分単位で勤務開始時刻を設定することは全く問題なくなった。
そろそろ年度末も近いので有給休暇の1日未満の端数に注意しながら使わないといけない。
あと2時間分だけ端数が残っているので、これも勤務時間を午前に固めるのに使うのが僕にとっての定番だが。
ただ、弁当売りが休止している中で出勤するならまた事情は違う……とかいろいろあるので。
2~3月は有給休暇計画取得日は1日あるけど、他に全日休暇はあるかないか微妙。
もっとも、年度末で消滅する有給休暇はもうないので、問題は1日未満の端数だけ。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/21(Thu) 23:59
社会 | Comment | trackback (0)
気の毒だけど飲食店は悪者かもしれない
昨年12月ごろから東京都が手を焼いている新型コロナウイルスの感染拡大、
年明け前後から報告数が急増し、自費検査が要因としてはありそうだと思いつつも、
実態として発熱相談の件数が増加したり、重症者数が増加したりという傾向は明らかだった。
今週に入ってはこれらは横ばいかやや減少ぐらいですかね。12月下旬からの対策が少しは効果が出たのかも。
とはいえ、これが続くと大変ですからね。新規感染者をより抑える必要はある。
年明け前後の感染者数増加の背景として、クリスマスパーティーや忘年会の影響が指摘されている。
当時、東京都では酒類を提供する飲食店の営業時間を夜10時までとするよう要請していたが、
そもそも夜10時までという短縮が効果として不十分ではないかという話があった上に、
この要請を無視して営業する飲食店が少なくなく、手を焼いていたわけである。
緊急事態宣言により住民の危機感を高め、国と連帯して営業時間短縮に応じた飲食店への協力金の積み増しをした。
要請内容もより厳しいものとなり、南関東4都県の全域で全ての飲食店で営業時間を夜8時まで、酒類の提供は夜7時までと。
これは居酒屋の商売を壊滅的にするもので、営業時間短縮というより休業という選択への移行も多く見られた。
飲食店に営業時間短縮あるいは休業を求めたのは、実態として飲食店が感染拡大の場となっていることと、
あとは協力金という形で一定の損失補償をするような意味もあるはずで、
特に居酒屋にとっては壊滅的な内容ですから、ここは考慮されていると思う。
(東京都は大企業について協力金の対象にしていないので、中小企業支援という意味もあるのだろう)
このことに納得している人もいるだろうが、こういう話も出てくるのである。
「なぜ悪者扱い…?」 飲食店重視の対策、店主のぼやき (朝日新聞デジタル)
「昼飲み、いいわけがない」 田村厚労相が自粛呼びかけ (朝日新聞デジタル)
見出しが全てですね。
確かに気の毒だなと思うのだが、どうしてこういう事態を引き起こしたのか考えてみると、
飲食店の「営業活動」によるところはあるような気がする。
そもそも12月に入る頃には忘年会などで人と集まることはやめようと住民に呼びかけていた。
ところが飲食店の理解は必ずしもこうではなかったわけですよね。
営業時間短縮などの要請に応じても、その枠内で客を最大限に集めたり、あるいは従わないことが横行したと。
その極地が「昼飲み」である。昼間ならば営業時間短縮要請がかからないから自由に客が集められると。
でも、それは本来の意図ではないわけで、こうして火消しにかかったわけである。
正直なところ、飲食店の営業時間短縮というのは一般の住民にとっても苦しいものである。
夜間の飲食が全てリスクが高いわけではないが、一方で夜間は長時間にわたり酒を飲んでは騒ぐ人が多いのも事実である。
以前は酒類を提供しないならばという緩和策もあったが、背景は知らないがそれもなくなってしまった。
現在の休業要請というのは朝・昼・晩と食事を取るには不便がないように考慮したのだろうと思うが、
夕食をより遅い時間に食べる必要がある人もいて、手早く食べられる料理店は重宝していたはずだが、使えなくなってしまった。
手早く食べるならリスクの程度としてはそう大きくないし、食べることは生きることの基本であることを考えればよくないが、
しかしながらここまでの経緯を考えれば、営業時間短縮要請はやむを得ないかなと思う。
ただ、昨年の3~4月頃と比べれば、テイクアウトや宅配などを充実させた飲食店も多く、
営業時間短縮要請が出ても、テイクアウトの営業時間は従来通りとして、食事ニーズに応えている店もある。
特にファストフードやファミリーレストランですかね。
東京都の協力金が大企業に支払われないのは、大企業はこういう工夫がしやすいというのも考慮しているのでは? と。
もちろん、これで救われる会社と救われない会社はあるんだけど、やりようはあるわけだ。
しかし、悪いシナリオというのはいろいろ思いつく。
まず1つはさっきも紹介した「昼飲み」である。
これが横行すると飲食店の店内飲食を一律休止させるような措置も考えなければならなくなる。
もう1つ、こっちの方が恐ろしいシナリオなんだけどホームパーティーですね。
飲食店を介した感染に比べれば少ないので今は軽視されているが、飲食店で夜間に長時間酒盛りをするのが難しくなると、
料理をテイクアウトして、酒類を調達して、家などで集まって酒盛りをするという発想も出てくるかも知れない。
フランスの話で、これはもはやホームパーティーではないけど……
コロナで夜間外出禁止令なのに…36時間2500人のパーティーがフランスで (東京新聞)
背景には厳しい行動制限により人々の不満が溜まっており、人々は法令に反して大規模パーティーが散発的に行われたのだという。
ヨーロッパではこのように一定人数以上が集まることを厳しく規制することが行われていることが多いようだが、
日本ではなかなか難しいんじゃないかと思う。なぜならば「集会・結社の自由」を侵すことに抑止的だったからである。
なにしろ日本では暴力団やテロ行為を行った宗教団体の解散すらできず、厳しい監視下ではあるが存在が認められている。
確かに感染症対策ということで、それなりの理由はあると言えるが、人権を制約するにあたっての妥当性が難しい気がする。
営業時間短縮要請も「営業の自由」を侵害するという話はあるが、協力金の支給などでバランスを取っている。
あとは規制するにしても実効性のある措置がとれるかという問題ですね。
店で酒盛りするのを防ぐには店の営業を制限すれば防げるが、家で酒盛りするのを防ぐ実効性のある手段はなかなか思いつかない。
やはり自発的にリスクを避けてもらうしかないのだが……
というわけで、住民の自制が重要なのは言うまでもないが、飲食店などの自制も必要だと思う。
確かに気の毒だけど、この状況を招いたのは飲食業ではないか? と言われたとき否定することはできないと思う。
感染リスクの低減に努め、客もそれに協力的であった店にとっては申し訳ないんだけどね。
飲食店にばかり厳しくて、混雑する通勤電車の方が危ないんじゃないかみたいなことを言う人もいるが、
これはこれまでのデータ、あるいはシミュレーション結果に照らし合わせれば、そう大きなことではないと思われている。
確かに東京都もテレワークの推奨を行っているので、すると通勤電車の混雑は緩和されるべきなのだが、
ただ除去したいリスクというのは、職場やその周辺での飲食というところだと思う。これは実際に感染源として多い。
人々の理解の差というのが、いろいろな対策の妨げになってるのかなと思うことはしばしばあって、
飲食のリスクについて、単純化して捉えすぎると「昼飲み」は許容されるということになるし、
逆に1人で黙々と飲食するリスクは理屈上はそう高くないのだから「孤独のグルメ」は許容されなければおかしいという主張もある。
前者は明らかに間違いなんだけど、後者はそうかなと思う一方で、線引きの難しさが課題である。
これまでの実績ベースで言えば、現時点でそれを許容するのは難しいのかなと思う。
まぁ難しいんですよ。新型コロナウイルス感染症ってわかってないことが多いんで。
そんな中でどういう対策が妥当か、どういうリスクは許容するかというのは難しいし、見誤ることはあると知っておこう。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/15(Fri) 22:55
社会 | Comment | trackback (0)
都府県が国に連帯することの意図
東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県が国に緊急事態宣言の発令を要請したというニュースはよく知っての通りだが、
そこに至るまでの経緯が紹介されている記事があった。
緊急事態宣言 動かした小池都知事、最後に乗った千葉 (朝日新聞デジタル)
確かに当初は東京都・埼玉県で連帯してという話だったのが、いつのまにやら神奈川県・千葉県も加わっていたという話だが、
千葉県は当初消極的だったところ、神奈川県も加わるなら加わるという話で、神奈川県が要請に加わることとなって、
その約束通りに千葉県も含めて南関東4都県で国に要請することとなったということが書かれている。
東京都が隣接する3県を巻き込んだのは、積極的対策に消極的な国を巻き込むためには、
東京都の暴走と思われないようにするための政治的な意味合いも大きかったんだと思う。
一方で、これに隣接3県が乗ったことにはそれなりの理由はあって、千葉県が少し消極的だったというのも、
東京都市圏の人の動きがそうなっているからということで説明できるんじゃないかという気がする。
というのも、都市雇用圏の東京都市圏(東京都特別区域などに10%以上の通勤がある地域)というのは、
- 東京都 : 島しょ部を除くほぼ全域
- 埼玉県 : 深谷市が北端、秩父地域・本庄市周辺などを除く地域
- 神奈川県 : 箱根町を除く全域
- 千葉県 : 南端は富津市、東端は山武市、成田市周辺・安房地域・銚子市周辺などを除く地域
あと、茨城県の取手市・守谷市周辺、山梨県の上野原市も含まれる。
こうして見てみると、神奈川県・埼玉県も都市圏という観点ではほぼ全域が東京の一部なんですね。
千葉県については、成田市周辺が独立した都市圏として成立していることと、地形的要因により房総半島南端や銚子市付近などは含まれないが、
その一方で、東京都に近い東葛地域だけで千葉県の人口の半分近くに達するなど、千葉市と並んで重視される地域である。
千葉県全体を巻き込むには少し踏ん切りは付かないが、やむを得ないという判断はあったのだろう。
もちろん南関東4都県も地域性はあり、一様に感染状況が悪いとも言い切れないところはあるが、
一方で東京都だけに収まっているとも言えないのも確かで、周辺都市も含めて対策が必要であるのは事実である。
巻き込まれたと思う地域もあるだろうが、そこは妥協して欲しいということである。
現状がそこまでひどくなくても、地域内に飛び火するのを防ぐ効果もありますからね。
なんてわけで南関東についてはこんなもんかと思う一方で、近畿圏でもこんな話があるらしい。
大阪府が9日にも緊急事態宣言の再発令要請へ 兵庫と京都も同時要請検討 (毎日新聞)
大阪府が兵庫県・京都府を巻き込んで国に要請するか? という話らしい。
当初、大阪府では大阪市内に集中して対策をしていたが、府内の他地域での感染拡大が問題となっていること、
兵庫県でも神戸市や阪神・東播磨などで感染者の報告が多く、医療機関の逼迫が問題となっていること、
京都府では京都市内での感染拡大が続いていることが背景にあるようである。
もっとも兵庫県は少し前まで慎重だったところ、神戸市からの申出などもあって検討した結果、このようになったとのこと。
大阪府は全域にわたって強い対策が必要なんだろうなというのはなんとなくわかるものの、
兵庫県と京都府はかなり広いので、この辺は地域性もあるような気はする。
とはいえ、兵庫県はなんやかんやいって広範囲に影響が及んでいるようですね。
阪神地域は大阪との行き来が多いので、ここは同一視して対処する必要があっただろうなと思ったが、
神戸市やそこに隣接する東播磨地域での報告が多いようで、兵庫県内の事情だけ言えばそっちのほうがきつそうですね。
京都府については大阪府とは直接連動している感じはしないが、京都市での蔓延は根が深そうだ。
大阪府・兵庫県・京都府にはそれぞれ蔓延度が高い地域があり、効果的に対処する必要があるという点では一致してるが、
ただ、大阪府を除けば府県の区域が広いというのが問題で、ここをどうするかが悩み所かなとも思う。
特に両府県にとって北部の丹波・丹後・但馬地域は、京都府南丹地域を除けば問題の地域との行き来は少ないはず。
こういうところで特別な対応をする必要があるのか、地域性を考慮して段階的な対応を取るのか、
それとも穴をふさぐことを重視して一律に厳しい措置をとるのかというところが悩ましいところでしょうかね。
南関東4都県は一律でもかまわないという割り切りはあったが、この3府県は難しい。
というか、よく兵庫県も京都府も乗ろうとしたなという感じはある。
運用上の細部は府県側で決定できるので、そこら辺は各府県の事情に合わせてということになろうと思う。
面的に対策を取った方がいいのかなと思うが、納得感も重要だと思うので、そこはよく検討しないとならんだろうと思う。
近畿圏の都市雇用圏は、大阪・京都・神戸がそれぞれ独立した中心都市である一方で、
大阪府・兵庫県の府県界はあまりに行き来が多く、神戸市でも東灘区などは大阪の郊外としての色も濃い。
このことからすると、大阪府から阪神・神戸・東播磨にかけてはあまり段差なく対応できた方がいいように見える。
一方で、大阪と京都の間は明確に人の向きが変わるところがある。(府県界に近いが少しずれている)
なので、また違う話で、京都府は話を見る限りは京都市に集中しているので、まずはそこなのかなという感じはする。
大阪府との間を埋めるように乙訓地域や八幡市なども取り込んで対策してもいいのかもしれないが。
こういう人の流れも考慮してみると、兵庫県と京都府は大阪府と連帯する意図に少し違いがありそうなことが想像ができる。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/07(Thu) 23:30
社会 | Comment | trackback (0)
知事が緊急事態宣言を求めた理由
東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県が国に緊急事態宣言の発令を要請するという、
ちょっとそういうフローは想定してなかったのだが、
そういう決断に至る背景というのは理解できる面もある。
そもそも、東京都は昨年11月28日から、酒類を提供する飲食店とカラオケ店に、営業時間を夜10時までに短縮要請を出している。
しかしながら、飲食店を通じた感染を大きく減らすに至っていない事情はある。
これが効いてないということはないと思うんですよね。
感染経路が判明した分で多いのは家庭や施設内(職場や学校を含む)で、全体にして飲食店を通じての感染が多いわけではない。
また、感染経路不明が多いというのも、自費検査などで上がる分が多いのもある。
数字だけ見るとやたら感染者数が多いじゃないかというけど、数字ほど悪くはないと思うし、
人の行動が悪いというよりは季候の変化によるところが大きいとみられる。
一方でこれまでの実績ベースで言えば、飲食を通じて感染が拡散される傾向があることは事実であり、
ここを大きく抑えない限りは、家庭内や施設内の感染を抑えることが難しいというのは確かである。
そんな話は12月頃にはあって、東京都の会議でも営業時間を夜8時まで短縮する要請をするべきではという話があったらしい。
ただ、実際には夜10時までの短縮要請のままで期間延長されて現在に至っている。
そこには夜8時までの短縮を要請しても、結局従わない店が多いのではないかということだった。
分科会「感染多く当然」/都「応じない店増える」 時短強化 (朝日新聞デジタル)
多分、そこには根拠があって、それは夜10時までの短縮要請にも従わない店が一定あって、
それが対策の穴になっているという実情があるとみられる。
休業要請を出した店に対して協力金を支払うという仕組みは、もともと国は消極的だったところ、
東京都では財政調整基金が多くあったので、これを取り崩す形で支給したという経緯がある。
これにより休業要請の協力を得て、なおかつ雇用などの維持につなげようということだったんだと思う。
これに追従する地域も多く出て、後に国は臨時交付金として協力金の一部を補填する仕組みができたという。
協力金支援、店舗数上限なし 政府、時間短縮要請で (日本経済新聞)
当初は都道府県の飲食店の2割という上限があったが、後に撤廃されている。
北海道や大阪府のピンポイント過ぎる営業時間要請の背景の1つではあったと見られる。
東京都が営業時間短縮要請を出したときにはもうすでに撤廃されてましたね。
実際、繁華街が散ってる東京都でこの範囲内で効果を得るのは難しかっただろうから、救いではあったと思う。
東京都の協力金は他の地域に比べれば手厚いとは思うのだが、それでも協力が得られにくいことには、
やはり家賃などのランニングコストが高く、協力金が穴埋めとして不十分であること。
そして、休業要請を破ったとしても、客が細ったなりには商売ができてしまうこと。
これは恥じるべきことで、宴会をするななどとあれほど言っても従わない住民が少なくないということである。
本当はここをどうにかするべきだと思うのだが、その背景の1つには政治家が模範となる行動をしないこともあるようである。
大みそか、にぎわう渋谷 若者「議員も飲んでるから」 (朝日新聞デジタル)
本来は客足が細るところで、営業時間短縮をして、協力金を受け取れば、そっちのほうがマシという形にしたいところだが、
東京都の場合、客足が細っても、協力金を受け取らずに要請を無視した方がマシとなることが多いようである。
これは過去の休業要請に従った飲食店にとっての「反省」でもあるのだと思う。要請に従っても報われないと。
東京都は確かに財源的には豊かではあるものの、財政調整基金は9割以上取り崩したという状況で、
国の臨時交付金という裏付けなしに協力金を出すことは難しい。(そもそも国の臨時交付金だって8割の補填である)
もちろん、それでも社会的使命による要請に協力する店はあるわけだが、
要請に従わなくても罰則もなければ、経営上どちらがよいかという判断とも言えるわけで、
この観点からすれば、東京都が営業時間短縮要請を夜8時からにすることを見送ったことには妥当性があるということである。
高い効果を得るのに十分な金は東京都にも出せないということである。
ここら辺の認識のずれが国と東京都の間であって、これが一向に解消してこなかった。
そもそも、東京都としては、従っても従わなくてもよい要請に協力金をつけたところで限度があると主張していて、
そのためには法改正も考えるようにという話は前々からあったが、国会もろくに開かれず、議論は深まっていない。
法改正ができたとしてもあと1ヶ月はかかるんじゃないかということである。
そんな中で、今すぐできる手段が緊急事態宣言を出すという方法だったとみられる。
こうすると、飲食店などへの要請もより厳しいものになり、従わない事業者の公表なども可能になる。
そしてなにより住民の危機感を高めて、飲食店から住民を引き剥がすということが目的であろう。
制度面ではあまり変わらないのだが、一定の効果はあるんじゃないかということである。
なので、とりあえずは休業要請の範囲は飲食店に限られる見込みである。
一方でその飲食店の休業要請は、現状が酒類を提供する飲食店とカラオケ店に限るところ、
全ての飲食店を対象に夜8時からの休業要請を出すとのことで、酒の提供をやめれば済むという話ではないようだ。
区域も4都県それぞれの一部(もっとも東京都は特別区域と多摩地域なのでほぼ全域だが)から、全域に拡大される。
1都3県、飲食店時短要請2時間前倒しへ 午後8時閉店 政府は早期実施求める (毎日新聞)
飲食店全てに拡大する背景はわからないんだけど、酒の提供をやめたことにするというのも抜け道になっていたのかもしれない。
このことから、夜間に食事を取るということは相当に不便になるとみられる。
確かなことは、ここまで営業時間短縮をすると、居酒屋の類はもはや成立しないということである。
ただし、この要請に従わなくても罰則はないため、要請に従わない店が増える懸念はある。
協力金の積み増しは考えているようで、特に複数店舗を運営する事業者にとっては受取額が大きくなる見込みだが、十分かはわからない。
先ほども書いたように、根本的なことを言えば住民の自制が足りないということであり、
飲食店の休業はその後押しになると思ったが、東京都においてはなかなか不十分な面があると。
住民の1人として恥ずかしいことだと思っているが、一方でそういう人は少数派とも思う。
全体としては少数の人が飲んでは感染し、その人が感染し、職場やら家庭やらにばらまいているということではないか。
こういう自らを省みない人を、これをきっかけに変えることができるかというのが最大の課題である。
要請に従わない店を公表するというのも、住民の意識が変わらなければ「飲める店リスト」にしかならないとも言える。
今も飲み歩いているような少数派の意識を変えるに十分であるかは、けっこう懐疑的である。
でも、今すぐできることで、効果があるとすればこれしかないというのもまた事実である。
というわけで、けっこう難しい問題なんですよ。
他地域からすれば東京都の対策は不十分だというかもしれないが、そう簡単な話ではないのである。
別に東京都だって急に言い出したわけではないし、国政レベルでもこの点を課題と捉える向きはずっと前からあったはず。
なのに、そこに向き合ってこなかったのは、国の行政であり、国会の与党会派ではないかという思いはある。
そこが最大の不満だし、真面目にやっている人が報われないのはよくないことだ。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/04(Mon) 23:54
社会 | Comment | trackback (0)
健康保険証の難点を解決したい
元日、年賀状が何枚か届いていた。(遅れて届く分も多そうな気配はあるが)
東京都在住とあってはそれを気遣うメッセージが書いてあったりするんだが、
滋賀県在住の人に言われるならともかく、大阪府在住の人に言われると「お前が言うか」というような気もする。
調べたらその人の住んでいる地域(北河内)も、人口比でみるとあまり変わらない……というかむしろひどいような。
実のところ、東京都といっても地域性はあり、多摩地域というだけで一段落ちるんだよね。
これは不思議なもので、都心からの距離はそう遠くもないのに、それでもだいぶ変わる。
もっとも南関東自体が蔓延度が高いことは事実であり、その点では注意しなければならないのも確かではある。
いずれにせよ養生して生活せなならんね。
ニュースで、今年3月からマイナンバーカードが健康保険証代わりになるという、
別に新しいネタでもなく新年にあたってそういう記事を書いたんだろうけど、あれ本当に運用が始まるのかと。
もっともいきなり全ての医療機関で使えるようになるわけではない。
また、従来の健康保険証が不発行になるわけでもないし、マイナンバーカードがないと診療・調剤を受けられないわけではない。
じゃあ、何の意味があるんだよと思うところだが、それなりの理由はある。
そもそも、現状の健康保険証には大きな問題があって、それは医療機関で保険証の有効性が確認出来ないこと。
国民健康保険・後期高齢者医療制度などでは定期的な保険証交換を行っているが、
被用者保険だとあんまりやってないんじゃないか? 確かに自分の健康保険証にも有効期限などの記載はない。
このため、保険者は健康保険証を確実に回収しなければならないが、これに限界があろうことはわかると思う。
実際、僕が就職した直後、父の勤務先の健康保険証と、自分の勤務先の健康保険証の2枚を持っている状態があって、
父の勤務先の健康保険証は速やかに父経由で返却したが、これを医療機関に持っていけば一見にして使えてしまう。
このように無効な健康保険証を使って診療・調剤を受けたことが発覚すると、
自己負担分を除いた医療費が請求されることとなるが、それを回収できる確実性もなく、医療機関や保険者は困ることになる。
この問題を解決するために「オンライン資格確認」というシステムが導入される。
オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け) (厚生労働省)
これを導入した医療機関では、マイナンバーカードを健康保険証として使用できるようになるというわけ。
このシステム自体は従来型の健康保険証でも手動入力すれば、その保険証が有効であるかどうか即時に確認出来る。
これがマイナンバーカードを利用する場合は、カード自体を患者から預かることなく(専用端末には患者がカードを置く想定)、
自動的に健康保険情報を読み出すことができるというわけである。
というわけで、マイナンバーカードを健康保険証として使うことは医療機関の業務効率化にもつながるはず。
といっても、これだけだと患者にとってのメリットはなさそうだが、とても重要なメリットがあって、
それは「限度額適用認定証」の提出をすることなく、自己負担限度額が適用されるということである。
サラリーマンの場合、所得によって自己負担限度額に差がある。
自己負担限度額を超過した場合、保険者から後日還付してもらう方法があるが、それは負担が重いため、
あらかじめ所得に応じた限度額を記載した限度額適用認定証の発行を受けて、これを医療機関に提出するのが一般的。
(この場合でも他の家族や、高額医療費が発生した医療機関以外での受診分など、後日還付の手続きを行うことはあると思う)
70歳以上の高齢者など、保険証だけで限度額が判定できる場合もあるが、そういうケースを除けば、事前の手続きが必要である。
これがオンライン資格確認を使うことで、患者から同意を得るという条件は付くが、限度額の確認ができるようになる。
もっとも、この仕組みを使うのにマイナンバーカードが必要なわけではなく、従来の健康保険証でも可能なはず。
この特徴からすると、病院では早い段階でオンライン資格確認が普及して、マイナンバーカードが健康保険証として使えるようになりそう。
マイナンバーカードを健康保険証として使う場合、まずマイナポータルなどで初回登録の手続きを行う必要があるが、
この手続きは医療機関の端末でも可能なので、あらかじめ何もする必要が無いとも言える。
ここで顔写真または暗証番号による認証を行うことになるのだが、暗証番号というのは利用者証明用パスワードだと思うが、
顔写真って何を元に認証するんだろう? と気になって調べたら、マイナンバーカードの券面事項確認APを使うみたいですね。
ただし、券面事項確認APを使うには、発行日・有効期限・セキュリティコードが必要なので、
これを取り出すためにマイナンバーカードを撮影するカメラも必要で、これと患者を撮影するカメラの2つがあるわけだ。
(場合によっては目視による顔写真の確認を行っても良いとのことではあるが)
これで基本的には終わりで、限度額適用や診療・投薬履歴を使用できるようにするための同意が求められることがあるぐらい。
ただ、ここで気になったのは、オンライン資格確認のフローを見る限りは、
従来の健康保険証を使う場合には本人確認がないのに、マイナンバーカードを使う場合は本人確認が必要であること。
確かに従来の健康保険証には顔写真もないので、本人確認の手段がないというのは実情であるが、なんか不思議な気がする。
おそらく、こういうことも念頭に置いているのではないか?
「なりすまし」保険証防止、写真付き証明書提示を検討へ (朝日新聞デジタル)
外国人のなりすまし受診を想定して、写真付きの本人確認書類の提出を求めることを考えたが、
外国人も住民であれば日本人と区別するのはおかしく、かといって日本人は写真付きの本人確認書類を持っているとは限らない。
健康保険に加入する外国人は必ず在留カードまたは特別永住者証明書を持っているはずなので、外国人に限れば可能ではあるのだが……
ここの矛盾を解決できず、現在も診療・調剤の際になりすましを排除する仕組みは実現できていない。
もちろん、今年3月の段階では、従来の健康保険証もまだ有効なので、網羅的に本人確認を行うわけではない。
ただ、こうしてマイナンバーカードでは暗証番号または顔写真による本人確認が行われるようになれば、
将来的な本人確認必須化に向けた足がかりになるとも言える。
これが保険証不発行化(マイナンバーカード必須化)として実現されるか、本人確認書類必須化(他に顔写真付きの本人確認書類を持たない人はマイナンバーカードの発行が必要)という形で実現されるかはわからないけど。
健康保険証を持ち歩かなくてよくなるかというと、これは微妙な話なんだが、
保険者・医療機関・患者それぞれに一定のメリットがある仕組みで、あとシステム導入の補助金もあるので、
少し時間はかかるかもしれないが普及していくのかなと。
でもマイナンバーカードがどうしても必要というわけではないし、
自己負担限度額の件はおそらくマイナンバーカードがなくても恩恵はあるので、そこは急がなくて大丈夫。
もっともマイナポイントがあるから、早いうちにマイナンバーカードの発行を受けるメリットはあるけど。
Author : Hidemaro
Date : 2021/01/01(Fri) 23:43
社会 | Comment | trackback (0)
GoToトラベルキャンペーンの恩恵は大きいが
6泊7日の長い旅行から帰ってきたわけですが、実際どうだったんですか? という話。
目論見通り安上がりだったのだろうか。
期間中の支出は概ね下記の通りだった。
- 交通費(宿代含む)
- ツアー代金 : 41000円(35%引き後) - 10000円(地域共通クーポン消費分)
- その他 : 11000円 (うち金沢~福井に関連するのは4000円ほど)
- レジャー : 3000円 (コンサートのチケット代金はここには含まない)
- 食費
- 外食費 : 14000円
- その他 : 7000円 (京都滞在時のホテルは早朝から仕事するのも見越して朝食はスーパーで購入してる)
ということで7日間の滞在で要した費用は概ね66000円ほどでした。
なかなか比較が難しい面はあるのだが、もしパッケージツアーにこだわらなければ
東京~(新幹線)~京都~(特急・乗継割引不適用)~福井~金沢~(特急・乗継割引適用)~京都~(新幹線)~東京
というところが比較対象になるんではないんだろうかと計算してみた。
すると32000円ぐらいですかね。ちょっと控えめに見積もりすぎかもしれないけど。
それに対してツアー代金-地域共通クーポン+金沢~福井の交通費が35000円ぐらい。
6泊してることを考えれば宿代はタダ同然ですね。無理やり2つのパッケージツアーを合体させただけのことは意味はあった。
GoToトラベルキャンペーンがなければ67000円ぐらいですから、宿代は1泊あたり6000円程度と妥当な水準でしょうか。
あと注目ポイントは地域共通クーポンを1万円もらってるけど、それ以外の支出は3万円以上あるということ。
やはり旅行というのは交通費・宿代以外の雑費が大きいもので、クーポンは平気ではみ出すわけだよね。
今回は滞在期間を長めにとったり、京都府・福井県が隣接していることもあって、クーポン利用の自由度が高く全く困らなかった。
もっとも今回の旅行は福井滞在時の朝食を除けば宿代に食事代は含んでいないという事情もある。
なので、宿代が少なく=地域共通クーポンの付与が少なく、食費が多めに出るという事情はあるが、それにしてもね。
このあたりはGoToトラベルの背景として語られている、観光業は裾野が広いということを表していて、
交通・宿以外にも滞在する地域に落ちるお金はけっこうあるということである。
さて、その上でGoToトラベルキャンペーンってどうですか? という話だけど、
旅行代金の50%(地域共通クーポンを含む)を補助したとしても、残り50%とその他雑費は自己負担ということで、
今回で言えば32000円の補助金を入れても、残り66000円は自費だから、補助金以外のお金の動きもそこそこ大きい。
あと、極端なケースだけど、修学旅行にキャンペーンを適用すると、地域共通クーポンはお土産に使うぐらいしか用途がなく、
旅行代金の15%相当のほとんどは新しく創造された需要ということになり、インパクトがあったようだ。
一方で気になるのが消費の偏りである。
ズワイガニの初競り、高値続々 「GoTo」で需要増 (朝日新聞デジタル)
旅行代金が高いほど恩恵が大きいため、冬といえば日本海のカニだろうと多くの人がカニを目当てに出かけたわけである。
カニはやや極端なところはあるが、食事付きの宿だとメリットが大きいのはその通りで、そういうところで偏りはある。
当然に外国からの観光客は皆無なわけで、動き回るのは日本在住者ということで、日程も土日に偏りがち。
目的地も大都市圏からのアクセスがよいところとか、カニ目当てで日本海側に行くように食って恩恵が多いところに偏りがち。
GoToトラベルで例年より盛況というところがある一方で、さっぱりというところもある。
制度上仕方ないことだが、過度に盛況なのは考え所でもある。
そういう観点で、年末年始の一律停止は理にかなった話ではないかと思った。
そもそも年末年始は何もなくても人の往来が活発になる時期で、あえてそこに補助金を投入する意味はあるのかと。
人が動くことだけで感染拡大が起きるわけではないが、キャンペーンがなくても人の往来が多くなるなら、
じゃあやめてしまおうというのは妥当な話だと思う。
ちょっと急だよという話ではあって、あとこういう観点もあるんだなと思ったのが
「詐欺では」GoTo停止に自腹の穴…交通費キャンセル料は補填されない!政府の措置にネット上で批判続出 (FNN)
交通機関と宿をそれぞれ単独手配した場合、
宿側はGoToトラベルのキャンペーンの一環でキャンセル料免除でキャンセルを引き受ければ国からの補填が受けられる。
一方で交通機関側は関係ないので通常のキャンセル料がかかる。ただし航空会社は昨今の事情から特別な取扱をする場合がある。
旅行を決行するのも自由ではあり、そこをどうやってやるかというのは各自の工夫しどころではある。
以前も書きましたけど、GoToトラベルキャンペーンが感染拡大の原因であるとはなかなか言い切れないわけですね。
やはり地域内の感染拡大をいかに止めるか。そこに注力する方が優先度が高いわけである。
その一方で気になることはあって「新しい旅のエチケット」は果たして励行されているのかということである。
やはり気になるのは飲食に関わるところかなと。他は複数の対策との併用で許容できる程度のリスクではないかと思うが。
本来、GoToキャンペーンは「『新しい生活様式』の定着」という意図があるところ。
この件について理解が深まっていないのではないか? というのが気になるところではある。
というわけで、年末年始の一時停止は妥当かなと考えるが、反動は大きそうですね。
来年春ごろからは外国からの観光客もいくらか入ってくるような計画かなと理解しているが、
そうはいっても発地によっては厳しく見なければならないなど難しい面もある。
(感染状況からインドネシアやヨーロッパ諸国など、あるいは発地側の規制という点でオーストラリアなどは難しいんじゃないか)
そう考えたときにGoToトラベルキャンペーンは有用なキャンペーンだと思う。
補助率が異様に高いのは気になるポイントの1つで、このあたりが消費の偏りの一因ではあるかなと思う。
旅行という非日常であることも考慮して高めの設定にしたんだろうが。それで予算が持つのがすごいけど。
あとは日程の集中も課題ではあり、そういう意味では5月連休とかはもともと除外するつもりで考えてもいいかも。
ここら辺は随時見直しということではあるけど、それは計画の立てにくさにもつながるところではある。
GoToキャンペーンについての世間の評判はまさに世論の分断とも言える話で、
感染拡大に寄与するという批判もあれば、観光客減少は地域経済への打撃が大きいという批判も、常に同居している状況だった。
リスクについて定量的に分析できないのは悩みの種であり、これは地域住民の飲食店の利用にも言える話かなと。
GoToトラベルキャンペーンも観光地に恩恵はあるが、その程度は濃淡があり、成果という点では難しいところはある。
カニの価格が高騰するというのは、それはもはや副作用と言えるレベルである。(キャンペーンが理由の全てとは言えないが)
行政側もこういうのを多角的に検討できていますよというのを示せているようには思えませんからね。
両側から石を投げられるのはそういうことなんじゃないか。
Author : Hidemaro
Date : 2020/12/21(Mon) 23:56
社会 | Comment | trackback (0)
布マスクを着用するのがいいんじゃないか
新型コロナウイルスの感染抑止には誰もがマスクを着用するのがよいとされている。
従来、インフルエンザなどの感染抑止にとってはここまでのことは言われてなかった。
これはマスクに効果がないというわけではなくて、効果があるところは限られているという話。
1つにおいては、一般の人のマスクの使い方では、マスクを着用した人の感染を抑止するのが難しいということ。
不織布のマスクを正しく使えば効果はあるが(医療従事者はそれができる前提)、一般の人がそれをするのは難しい。
一方でマスクが比較的効果があるのは、マスクを着用した人が他の人に感染を広げるのを抑止することだという。
しかし、インフルエンザでこの目的の効果を得るならば、せきなどの症状があるひとが付ければ十分である。
なぜならば、インフルエンザの感染性は発症後にピークを迎え、無症状者からの伝播は全体にしては小さいからである。
もちろん、症状がある人はむやみに人と接触するのは避けるべきで、それでも接触するならばということ。
これが今までの常識だったのだが、新型コロナウイルスの感染性のピークは発症前2日前であり、
無症状者・発症前といった感染源が全体の50%ぐらいではないかと言われている。
続・症状がない人もマスクをつけるべきか? (Yahoo!ニュース)
インフルエンザだとここまで大きくはないので、かぜの症状があるときはむやみに出歩くなというので効果は見込めるが、
新型コロナウイルスだとそういう対策をしても半分ぐらいは残るということである。(でも半分近くには減るので軽視できない)
というわけで、残る半分をどうやって対策するのかといえば、誰もがマスクを付けるということである。
先ほども書いたようにマスクは感染源側に付けるのが効果的だからである。
もちろん、換気など、マイクロ飛沫が滞留しない対策を併用するのが前提である。
でも、これまで感染源側にマスクを付けることの効果はあまり研究されていなかった。
定量的にどれぐらい効果があるのかというのを知ることは、感染源をモデリングしてシミュレーションするには必要なことである。
新型コロナウィルスに関する情報《マスク編》 (pdf) (全音楽譜出版社)
不織布マスクの場合、吐き出し飛沫量が20%、吸い込み飛沫量が30%となっている。
布マスクの場合、吐き出し飛沫量が18~34%、吸い込み飛沫量が55~65%と、吐き出し側の効果は遜色ない。
ウレタンマスクの場合、吐き出し飛沫量が50%、吸い込み飛沫量が60~70%と、吐き出し側の効果はあるけど劣る。
フェイスシールドは吐き出し飛沫量が80%、マウスシールドは90%、いずれも吸い込み側への効果はないので、
これらをマスクの代替とすることはできないと考えられている。
ここから不織布マスクと布マスクは、感染源側にマスクを付ける対策のためには同程度の効果があることがわかる。
不織布マスクを誰もが毎日使い続けると供給が間に合わないだろうから、布マスクを使うのは合理的選択である。
一方で、布マスクに比べると、ウレタンマスクは効果はあるが劣るというのが気になった。
ここ数ヶ月、主に使っていたのはウレタンマスクだったから。
景品でもらったのがきっかけで、後にドラッグストアで買い足している。洗い替えが安価で入手しやすかったから。
ただ、布マスクもいろいろではあって、少なくとも政府が配布した、あの四角い布マスクでは隙間が多いわけで、
それよりはマシだぞという思いはあった。多分、さっきの布マスクのデータはそれではない。
先日、イオンに買い物に行った時に「マスクショップ」という特集売り場があって、
そこを見てたら、バリエーションが多いのはウレタンマスクというのが実情だったが、一方でこういうのもあった。
ヒモは自分の都合の良いように結んでという仕様は気になるが、最初の1回だけのことだ。
価格も2枚入りで750円ほどと安価で、とりあえず買ってみた。
付けてみた感じからすると、かなりマスクと顔の間にできる隙間は小さくなってるなと。
鼻近くは少し隙間ができるが、それも今まで使ってたマスクよりは小さい気がする。
布面積自体が今までより大きいことと、あとは布の顔への追従性がよいということかなと。
不織布マスクにはかなわない(あれは折り目もあるし)としても、それに準ずるものではあるのかなと。
布の厚みだが、3層重ねということもあって、従来のウレタンマスクに比べるとかなりぶ厚い。
ゆえに洗濯後もやや乾きにくい。(ただ、政府配布のマスクよりはいくぶん乾きやすいが)
布目はウレタンマスクの方が密な気がしたが、飛沫を捕獲する観点ではそれでも十分なんだろう。
以前も書きましたけど、布マスクの性能というのは、メーカーも適切に示せていなくて、以前こんな要望も書きましたが。
現時点で、素材・形状・使い方いずれを取っても洗練されているとは言いがたいのは仕方ない。
一定の品質基準ができれば、多くのメーカーが作って、安く買えるようになるだろうし。目指すはそこだと思う。
ウレタンマスクでよいのか? 布マスクだって形状・素材は一律ではないが、どれならよいのか?
おそらく無意味というほどのマスクはあまりないと思うが(鼻・口を覆うように着用できるかどうかの方が重要)、
どのぐらいの効果を期待しているのかということである。
こういう現実的な対策がいくつか積み重なると、1桁ぐらいの拡散抑止効果があるのかなと予想している。
あと、吸い込むウイルス量が減ることで重症化しにくくなる? という話もあるらしい。
マスクが新型コロナの「重症化」を防ぐという仮説と、その後の議論や新たなエビデンス (Yahoo!ニュース)
確からしいデータはなかなかなさそうなんだけど、吸い込むウイルス量が多い場合は、
同じように発症したとしても、その重症化する割合が高そうだということはあると。
ただし、感染者の母集団が一律ではないので、なかなか比較は難しいんですが。
マスク着用による吸い込む側の効果は50%もいかないと思うけど、そういうのも積み重ねだろうということである。
もっとも、マスク着用によりコミュニケーションや子供の発達に悪影響を及ぼすという専門家はいる。
これは感染症対策とはまた別の観点での指摘ですね。それもそれで真っ当な指摘だ。
今まで(インフルエンザ対策として)は、むやみにマスクを着用する必要はないという結論が容易に導かれた。
しかし、新型コロナウイルスにとっては、誰もがマスクを付けることが実際に効果的な対策だというのだから、
この問題は感染症対策とコミュニケーションにおける不利とのバランスが問われる話である。
1つの緩和策としては、対人距離の確保で、これと換気の組み合わせがあればマスクなしでも許容できると。
人同士の距離が密接になる時間が長く継続しなければよいので、
例えば、演劇とかで舞台上で密な状態が続かなければ、マスクを着用する必要は必ずしもないという話である。
(この観点からは、合唱は舞台上でも密な状態で飛沫を大量発生させるから、マスク着用が好ましいという話である)
飲食時もマスクは着用できないけど、対面で食事しない、顔の高さぐらいある衝立を立てるといった対策は効果的である。
もちろん、マスク着用に問題ない場合はそちらを優先した方が効果は見込めるし、対策は併用すればなおよい。
ただ、子供の発達ということを言われると、なかなか代替案が示しにくい。
というのも小学校・幼稚園・保育所といったところは、けっこう密な状態が長く続くところだから。
幼稚園・保育所などでは、子供にマスクを付けるというのは、呼吸や暑さの面で不利益があるのでそっちではなくて、
そこで一緒に過ごす大人がマスクを付けるかどうかというのが、ここでの論点である。
換気はしてマイクロ飛沫が滞留しないようにしても、密な状態では感染源にマスクを付ける以上の対策はなかなかない。
しかし、そういうところこそコミュニケーションにとっての不利が大きいと言われては、なかなか解はない。
1つにおいては、乳児を含む十代以下とかだと重症化リスクがかなり低いので、無対策で行くという話はある。
一理あるが、問題はそれらが大人に媒介するのを防ぐには大きな穴であるから、どうなのかという話である。
さっきも書いたようにフェイスシールドは感染源に付けても効果はなく、感染を防止する側に付けてもマスクほどの効果はないのだから。
というわけで、マスクを付ける対策が万能とは言えないものの、
一般人にとっては不織布マスクと布マスクでもどちらでもいいから、着用すると大きな効果が見込めると。
ウレタンマスクもないよりはよいが、よりよい布マスクを考えた方がいいのかもしれない。
ただ、個別の製品により性能は違うはずだが、そのデータはメーカーも示せないことに注意が必要である。
Author : Hidemaro
Date : 2020/12/10(Thu) 23:59
社会 | Comment | trackback (0)