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石炭も石油も相変わらず使う

火力発電の燃料といえば、天然ガス か 石油 か 石炭か。

最新鋭の天然ガス火力発電所は、熱効率がとてもよく、SOxや煤じんの排出が皆無で、

ガスタービンは起動・停止が素早く、CO2排出量も少ないということで、大変優れた性質を持っている。

日本の電力の40%ほどは天然ガス火力発電ということで、まさに主力である。


じゃあ、天然ガスでいいじゃないかという話ではあるが、

石炭火力発電所も新設されているし、石油火力発電所も少し新設されている。

最新鋭の発電所同士比べると天然ガスに比べて熱効率も劣るし、環境負荷も大きい。

SOx・NOx・煤じんなどは適切に対策されるのが前提だが、CO2は排出するしかない。


石炭火力発電所について言えば、低コストであることが大きな理由のようだ。

石炭は可採年数が150年以上ということで、他の化石燃料に比べれば経済的に採掘できる量が多い。

それゆえ比較的安価に輸入できるということで、期待が多いようだ。

石炭はほとんどが炭素だから、同じエネルギーを得るのに排出されるCO2の量はどうしても大きくなる。

ただ、熱効率が改善されているので、発電量あたりのCO2排出量は、昔の石油火力発電所ぐらいに抑えられる。

老朽化した石油火力発電所の代替としては、環境負荷が悪化することはなく、経済性は高いということである。


あと、石炭火力発電所の期待としては、バイオマス燃料の混焼というのがある。

石炭を燃やせるなら、他の固形燃料も燃やせるので、木質バイオマス燃料を混ぜてもよいと。石炭火力発電所でバイオマス燃料を燃やしても、固定価格買取制度の対象になっていた。

ただ、この方式でのバイオマス発電があまりに多くなりすぎたので、新設だと対象にならなくなったようだ。

バイオマス燃料の安定確保は課題だが、発電するだけなら石炭でもよいとも言える。

なかなか日本国内でも未使用間伐材の燃料化が進んでいないようで、まだこのメリットは十分生かされてないとも。


石油火力発電所が少し新設されているというのは、アスファルトのような油を有効活用するため。

石油製品で高く売れるのが、ガソリン・灯油・軽油、逆に重油というのは安くしか売れない。

そこで重油となってしまう分子量の大きな炭化水素を、ガソリン・灯油・軽油の材料によい炭化水素に作り替えるわけだ。

(製油所で大量の水素が消費される)

従来は船舶やボイラーの燃料、あるいは発電用燃料としてC重油を売っていたわけだが、

環境対策からC重油から他の燃料(天然ガスとか軽油)への転換が進んでいる。

そこで従来、C重油として出荷していたものを、さらに分解して軽油などに作り替えているわけだが、

それでもなお残る油というのは、C重油よりさらに重質なアスファルトのようなものになる。

アスファルトは舗装用にも使われるが需要が低迷しており、それなら燃やして燃料にしようということである。

硫黄分・窒素分・金属分が多く、環境対策には気を遣う必要があるが、製油所内で発電や熱源に使われているようだ。


いずれにしても共通して言えることは、資源の有効活用であるということ。

日本は石炭すらほとんどを輸入に頼っていて(石炭はある程度自給できている国が多いのだが)、

エネルギー需要が増大した時代に石油火力発電所を増やしてしまった経緯もある。

それこそ資源の有効活用という点では問題だったので、是正した結果が天然ガスとか石炭への転換だったのかなと。

余剰なアスファルトのような単純に燃やすしかない石油は、引き続き燃焼させて使うけど、

石油はできるだけ輸送用燃料と化学原料に使うという方針は明らかなのかなと。


地球温暖化対策という点で、石炭火力発電所の新設はおかしいんじゃないかと言われることもある。

先日、そのことで日本が「化石賞」に選ばれたなんてニュースもあった。

COP25、初「化石賞」に日本 (朝日新聞デジタル)

ただ、果たしてなにを重視するかという話ではあるんだよね。

CO2排出量か、省エネルギーか、省資源か。いずれも両立する分にはよいが、相反することもある。


僕の考えだが、資源の浪費だけは取り返しが付かないので、何においても省資源は重要だろうと。

省資源のためにはおのずと省エネルギーを目指すことになるだろう。リサイクルも重要ですね。

そうして考えてみると、CO2排出量削減だけを追求するのはちょっとちがうんじゃないかなと思うんだよね。

以前、「CO2フリー水素」のことを紹介したが(cf. 水素で聖火を灯す?)、

二酸化炭素の分離・貯留にかかるエネルギーは果たして見合っているのかという見方もあるようだ。

省エネルギーが結果として、CO2排出量削減につながるのはよいのだけど、

CO2排出量だけが理由で活用できない資源が出てきたり、活用できる資源に偏りが生じたりするのはよくないなと。

実際、それで世界中でバイオマス燃料の奪い合いになっているという話も見ている。


老朽化した石油火力発電所を、最新鋭の石炭火力発電所に置き換えて、経済性を向上させて、石油資源の有効活用を図る。

この時点ではCO2排出量は横ばいだが、後にバイオマス燃料の導入を拡大し、カーボンニュートラルに近づける。

というのは理にかなったシナリオだと思うんだけどね。

日本には、より先進的な取り組みを期待されているんだということでもあるんだろうが、

どうしても段階的な取り組みにならざるを得ない実情はあるし、今どきの石炭火力発電所は案外よくできている。


Author : Hidemaro
Date : 2019/12/05(Thu) 23:53
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過放電も充電できないのも困る

明日から連休にしたので、例によって午後から東名ハイウェイバスで移動。

新東名スーパーライナー新宿号に乗ったけど、東京発だと休憩場所が海老名SAと静岡SAのようだ。

東京駅発着だと足柄SA・遠州森町PAで、新宿便でも名古屋発はそうなんだけどね。

ところが海老名SAは満車のため、結局、足柄SAまで休憩を引っ張るという。

以前も海老名SAが混雑のため、鮎沢PAまで引っ張られたし、やっぱり海老名SAは無理があるんじゃないか。


ノートPC用のマウスは取り回しの都合、無線マウスを使っているが、無線となると電池が問題となる。

もうだいぶ前のことだけど、電池の液漏れでマウスをダメにしてしまったことがあって、

その代替として充電池が搭載されたマウスを使っていた。

USBケーブルで充電して(充電だけだからACアダプタでも可)、あとは無線で使えるというもの。

電池交換もいらないし便利だと思っていたが、ここ1年ぐらいは充電してもすぐに電池切れになってしまうようになった。

明確な理由はわからないけど、電池の劣化だろうか。


というわけで、またしても乾電池を使う無線マウスに戻ってきた。

これ自体はもらい物なんですよね。使い道もなかったので、それならと。

液漏れさせたときは、単4電池2本だったが、今回のは単3電池1本になってた。

電池の用意という点ではこっちの方が便利かな。単3電池は旅行中に持ってることも多いし。


ところで電池の液漏れだが、いくつか要因はあるようだが、ほとんどの場合は過放電が原因のようだ。

なので、消耗した電池を放置し続けないというのが液漏れを発生させないためにもっとも重要だ。

無線マウスは省電力機能があるので、スイッチ入れっぱなしでも電池の減りは抑えられる。

ただ、わずかな消費でも、それが長時間放置されるとなれば大きな問題である。

というわけで、使用頻度が低い機器では切れるスイッチは切ること。これがまず大切。

ただ、電池は電流を流さず放置していたとしても、内部では化学変化がゆっくりと進んでしまう。

なので、消耗した電池は機器の中に残さないこと。これも大切である。


ペンライトの電池電圧を時々マルチメーターで点検しているけど、

もちろん、電池が消耗していたらいざというとき光らないというのもあるけど、過放電対策という一面もある。

過放電になる前に機器から電池を取り出す。これが液漏れ対策には有効であると考えている。


無線マウスもどうでしょうね?

使用頻度が高ければ、電源が入らなくなったところで交換すれば、知らないうちに過放電になることはないだろうが。

ただ、使用頻度が低いと、知らないうちに過放電になりかねないところである。

そう考えると、積極的な点検をして、予防的に交換するのが効果的なんだろうか。

とはいえペンライトほど電池消費をする機器でもないので、どれぐらいの頻度で点検すべきか。


Author : Hidemaro
Date : 2019/10/31(Thu) 23:13
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サーキットプロテクタを入れる

最近、試験対象の機器の電源ON/OFFを行うために、電源ラインにサーキットプロテクタを挿入した。

もともとはコンセントでプラグをいちいち挿抜していたのだが、

なんかイマイチだなと思い、ちょっと前に定格電流を間違えて買って余っていたサーキットプロテクタを挟むことにした。

サーキットプロテクタって、過電流が流れたら切れるスイッチで、家庭のブレーカーにも入っているやつだね。


プラグを挿抜するのは、電源ON/OFFの方法としてはわかりやすいが、頻繁に挿抜するためのものでもないしね。

それで、電源ケーブルの途中にスイッチの付いた「こたつコード」のようなものを使っている人もいた。

それを思い出して、そういえばサーキットプロテクタ余ってたよねということで、電源ラインに挿入したのだった。

過去にも、電源をON/OFFするという試験を行うときに臨時でサーキットプロテクタを挿入したことはあったが、

プラグの挿抜で済むようなところに、サーキットプロテクタを入れるのはあんまりやらない。


作業性の改善効果は大きくて、プラグを挿抜するよりスイッチON/OFFの方がよっぽど楽で、

今まで挿抜するプラグを間違えてしまうこともあったが、そういうこともなくなった。

サーキットプロテクタの端子部が露出しているので、万が一指が触れてしまったら感電しそうだなということで、

手元にあったプラ板を切って、端子部を覆うように取り付けておいた。

簡易な対策だが、これで安全・確実に電源をON/OFFできるようになったと言えそう。

うちの製品に組み込んだときもそうだし、家庭のブレーカーでも、端子部が露出しないようにカバーを付けるのが一般的なところではあるので。


コンセントでプラグを挿抜するというのは、シンプルな電源ON/OFF方法だと思うし、

はんだごて は席を外すときは必ずプラグを抜くことが、安全面から職場のルールになっている。

はんだごて 自体にもスイッチはあるが、プラグが抜けているというところで確実にOFFであることがわかるというのが理由。

家庭用の機器だと、それこそ こたつ はケーブルに付いたスイッチで電源をON/OFFするけど、

ほとんどの機器はそれ自体にスイッチが付いているから、あえてプラグを挿抜する理由は乏しいが。


一方でプラグで電源をON/OFFできないところは、スイッチがないと安全なメンテナンスができない。

家庭のブレーカーで、契約ブレーカーや漏電遮断器の下に、さらに部屋ごととかにサーキットプロテクタが付いているのも、

工事などのときに、部屋などの単位で電源を切って安全に作業できるようにするという目的もある。

もちろん、過電流が流れたときに危険な状態にならないようにというのもあるけど。


他の対策としてはスイッチ付きの電源タップを使うという方法もあって、それでやっている人もいたはず。

とはいえ、実情としてはプラグの挿抜でやっている人が多いですかね、

頻度が低ければ妥当な方法とは思うけど、サーキットプロテクタなどスイッチを挿入する方法がもっとも妥当だったな、

ということをサーキットプロテクタを組み込んでから思った。

やっぱり明示的なスイッチはあった方がよい。容易に挿入できるはさておき。


Author : Hidemaro
Date : 2019/08/28(Wed) 23:50
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電力計がちょうどよい

ICの消費電力を推定したいという話があって、

ICの足で電力を測定できればよいのだが、それはなかなか難しい。

1つのICに電源端子がいくつもあったり、ICの足で消費電力を測定するのは難しい。

そこまで厳密な測定はいらないので、プリント板の入口で電力を測定すれば、推定できるんじゃないかという話になった。


プリント板の電源入力のところにヒューズが入ってるので、

ヒューズに直列に電流計を挿入できるように細工をして、マルチメーターで電流を測定した。

測定は出来たが、これって妥当な結果なのかな?

ということで設計者に確認してみると、設計上の最大消費電力の半分以下ではあるのだが、桁が違うほどではない。

ただ、動作条件に対する消費電流の変化が想定と異なったので、どうしたもんかと。


そこで判明したのだが、測定対象のICに供給する電力を作るのに、スイッチングレギュレータを使っているようだ。

プリント板の入力電源電圧とICの電源電圧が違うことは知っていたのだが、

リニアレギュレータで電圧をドロップさせているのかなぁと思っていた。

だから、ICの消費電力を推定するのに、プリント板の供給電圧はあまり重要ではないと思い込んでいた。

でも、スイッチングレギュレータというのは、入力電圧が変化すると、必要な電力に応じて消費電流が変化する。

ということは、電圧も測定して、電流×電圧で消費電力を出さないと、正しくICの消費電力が推定できないことに気づいた。

測定条件によって入力電圧も変化しかねないですから。


電流と電圧を同時に測定しないといけないけど……というところで電力計を使えばよいことに気づいた。

交流電力の測定だと電力計は必須だが、直流だと電流×電圧で求まるので、必須とまでは言えない。

ただ、1台で電流と電圧を測定できるのだから、まさに適しているのは確か。

電力計なんて使うのは、高専時代の実験以来だなぁなんて思いながら結線していた。

もっとも、あの頃使ってた電力計はアナログの指示計器で、交流しか測定できませんでしたけどね。

職場に置いてあるのはデジタル式で、直流からそれなりに高い周波数までの測定精度が保証されている。

1Wもいかないような電力を測定するには不釣り合いな気もするけど、用途的には全く問題ない。


電力計というのは、電流の測定端子と、電流の測定端子を別々に持っている。

電力計は使い方に応じて、電流・電圧の結線方法がいろいろ変わるので、それぞれ自由に結線できるようにしてあるのだろう。

デジタルの電力計というのは、電流・電圧をそれぞれ測定したのを、デジタルでかけ算・積分して電力を出しているだけのはず。

それを高精度にやるにはデジタル信号処理の工夫もいろいろあるんだろうけど、測定回路としては電流計+電圧計というのが実情ではないか。

アナログの電力計は電流計・電圧計とは測定原理からして違うけど。


条件を変えて測定してみると、電源電圧が条件によって変化するので、

電力計で測定するアプローチは妥当だったようだ。

もっとも、それでも動作条件と消費電力の対応に想定と異なる点が残った。

もうちょっと工夫が必要そうだね。


Author : Hidemaro
Date : 2019/08/08(Thu) 23:36
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無償交換への道

四半期決算が出るごとにその内容の社内説明が行われる。

その中で「引当金」を特別損失に計上したことが説明されていた。

とある理由により、製品の無償交換などを行う必要が発生したので、その費用見込みを計上したものだ。

基本的にこういう無償交換などの情報は、ユーザーに個別に説明されるものなのだが、

決算に影響するとなれば、投資家への説明も必要になるので、社外向けの資料にも概略が書かれていた。

こういう形で技術情報が書かれるのは珍しい事例だが、それだけの大ごとである。

もっとも金額としてはむちゃくちゃ大きな話ではなくて、全体の業績に影響するけど……という程度の数字だった。


うちの職場で開発された製品でも、無償交換などの対応が必要になった事例はけっこうある。

ただ、特定の用途で使っている場合に限るとか、特定の地域に限るとか、対象が限定されることが多い。

結果として対象件数0ということもある。

ところが、今回はケタ違いに規模が大きいものである。

この無償交換で、偶発的に低頻度で発生するいくつかの有害事象を解消・緩和される。

これらの有害事象は、ずいぶん前から知られていたのだが、発生時対応でなんとかしてきた。

ところが、最近になって、発生頻度は極めて低いが、影響度の大きな事象が顕在化してきた。

僕はこの話を聞いたときに、正気を疑ったものだが、お金はかかるが、無償交換は総合的にはよい対策という判断があったのだろう。


実は、僕がこの職場に来てまもない頃、無償交換のきっかけになったであろう有害事象を解消する処理を作り込んだんだよね。

当時のチームリーダーにこういう機能を作り込んでくれと依頼され、

「どうしてこんな処理を組み込まないといけないんだろう」と思いながら、設計・実装に取り組んだのだった。

この時点でチームリーダーはこういう有害事象が発生しうるということに気づいていたのだろうが、顕在化はしてなかった。

誰もが半信半疑で組み込んだ対策だったんじゃないかな。

このとき僕が設計した処理は、同種の他の製品にも展開されていると聞いている。


設計に欠陥があったといえばそうなんだけど、設計当初から予期するのは困難だったんじゃないかな。

市場に出てからのフィードバックにより判明してきたことが多いのが実情である。

失敗から学んだ知見が蓄積され、それは確実に対策に生かされているんじゃないかと思う。

学んだ結果として、これといった対策は不要という決断もあるが、それはそれとして。


Author : Hidemaro
Date : 2019/08/07(Wed) 23:46
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製油所で大量の水素が消費される

昨日、水素の国内シェアの50%以上をイワタニが握っていると書いたが、厳密には正しくないようだ。

水素で聖火を灯す?

確かにイワタニは販売される水素の50%以上を握っているのはその通りらしいのだけど、

はるかに大量の水素を製造する工場が世の中にはある。しかし、その水素の大半は工場内で使ってしまう。

何だそれは? と思ったかも知れないが、水素を大量に作り、大量に消費する工場というのは製油所である。

なんと日本国内の水素消費の7割は石油精製に使われているという。そして、その水素は自家製造しているという。

産業用ガスとしての水素はごくわずかなのだ。


何に水素を使うのかというと、水素化精製と水素化分解という処理で使うようだ。

原油を精製して作られる石油製品というのは、基本的には炭化水素、炭素と水素が結びついたものである。

原油の中には硫黄や窒素も含まれているが、これはあまりありがたくない。

特に硫黄を含んだ燃料を燃焼させると、硫黄酸化物(SOx)を発生し、酸性雨の原因となるなど問題が多い。

そのため、現在販売されている ガソリン・灯油・軽油 は硫黄分を低減している。

原油に含まれる硫黄や窒素を、水素と結合させて、硫化水素やアンモニアの形で取り出すのが、水素化精製だそうだ。


水素化分解というのは、分子量の大きい炭化水素に水素を加えて、分子量の小さい炭化水素に分解すること。

水素化精製にしてもそうだけど、水素ってのはハサミみたいなもんだね。

石油製品で高く売れるのが、ガソリン・灯油・軽油、逆に重油というのは安くしか売れない。

そこで重油となってしまう分子量の大きな炭化水素を、ガソリン・灯油・軽油の材料によい炭化水素に作り替えるわけだ。

重油分の多い原油から、いかにガソリン・灯油・軽油をたくさん作るかというのが、石油精製という商売のキーポイントらしい。

他に重油分を熱分解して、ガソリン・灯油・軽油の原料に適した炭化水素 と 炭素(石油コークス) に分解する方法があるそう。

重油分に水素を足すか、炭素を余らせるか、このどちらかのアプローチで重油分を減らしているということである。


逆に石油精製の中では、水素が発生するところがあって、それがガソリンの製造。

というのも、ガソリンエンジンの効率を高めるためには、圧縮比を高くするのが効果的だが、

発火点が低いと、所望の圧縮比に到達する前に爆発してしまうという問題がある。

発火しにくさを表す指標としてオクタン価というのがあるが、オクタン価を高めるための処理で水素が発生するんだそうだ。

オクタン価を高めるためには、炭化水素の結合を増やすとよいらしく、結合をくっつけると水素が余ると。

水素を足したり引いたり複雑だが、有用な石油製品を作るにはそういう工夫が必要だと。


ただ、これだけでは全ての水素をまかなえないので、軽質ナフサの水蒸気分解も併用しているとのこと。

ガソリンの原料よりもさらに分子数の小さな炭化水素だが、そこに水蒸気を加えて、二酸化炭素と水素を作るということ。

さっきまで分子量が大きい炭化水素を分解するという話を書いてたが、分子量が小さすぎるのもそれはそれで価値が低いようだ。

こうやって、製油所は大量の水素を作り、自家消費しているということだ。


重油の用途として大きいのが船舶燃料だが、2020年以降、全世界で船の燃料の硫黄分を0.5%以下にすることが決まっている。

硫黄分の少ない燃料として、すでに広く活用されているのが 軽油(A重油) 、取扱も便利ですからね。その代わり高くなるけど。

あるいは天然ガスなど、安価で硫黄分を含まない燃料に移行することも考えられているようだ。

重油(C重油)を低硫黄化したものも用意されるようだが、供給能力や品質に不安があるようである。

重油ほど硫黄分を低下させるのが大変で、それが実現できたとしても、大量の水素が必要になる。

それなら、SOxを除去する装置を船に取り付けて、従来の硫黄分のC重油を使おうという考えもあるが、できる船とできない船があるだろう。

いずれにせよ、石油精製の余り物を重油として売ろうにも、需要がなくなって売れなくなる時代がやってきつつあるようだ。

重油を軽油などに作り替えるにせよ、低硫黄の燃料を作るにせよ、精油所で作る水素はなおさら重要になっているようだ。


Author : Hidemaro
Date : 2019/07/29(Mon) 23:35
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水素で聖火を灯す?

来年には東京でオリンピック・パラリンピックが開かれる。

この聖火の燃料に水素を使うということがにわかに話題になっていたが、

今さら出てきた話ではなくて、だいぶ前から考えられてきたことらしい。

東京の聖火は水素で、トヨタめざす 近く点火実験 (朝日新聞)

こういう記事が2017年に出ているぐらいなので。


ただ、水素というのは炎がとても見えにくい。

かつて照明によく使われていた ろうそく はススを出しながら燃えるので、炭素の発光により明るく光る。

都市ガスやLPガスであっても、完全燃焼しているときは、青い炎になり、けっこう見えにくい。

一般に炭素分が少なくなるほど、炎というのは見えにくくなる。

そして、炭素を一切含まない水素の炎は、ほとんど見えない。

それは聖火としては致命的な問題だが、解決策として炎色反応というのが考えられていて、先の記事でも、

見栄えするよう、水素の炎にさまざまな色をつける演出も考えている。

と書かれているが、これは炎色反応を起こす物質を炎に加えることで、炎を見えるようにするということ。

ナトリウムなら黄色、カルシウムなら橙色、カリウムなら紫色、コスト面からすればこの辺ですかね。


このような提案がなされた背景には、水素が燃えるときに二酸化炭素を発生しないということがある。

聖火の燃料としては都市ガス(天然ガス)やLPガスが一般的で、1998年の長野では都市ガスが使われている。

天然ガスは一般的には環境にやさしい燃料として認識されているが、石炭ほどではないにせよ二酸化炭素を発生するのも確か。

水素を燃やすのならば、燃やすことによって二酸化炭素が発生することはない。

確かにそれはその通りだ。でも、その水素はどうやって作るのだろう?


日本での水素製造の大半を担うのが岩谷産業(イワタニ)である。

イワタニといえば、家庭用のカセットボンベで有名で、LPガス関係の事業が占める割合が高いのは確かだが、

それと並んで存在感があるのが産業ガスの事業だ。

イワタニが手がけている産業ガスとしては、酸素・窒素・アルゴン・ヘリウム、そして水素がある。

酸素・窒素・アルゴンは材料が空気ということもあって手がける会社は多いが、水素とヘリウムはそうもいかず、

水素とヘリウムはそれぞれ国内50%以上のシェアを占め、特に液化水素は国内唯一のメーカーとして大きな存在感を持っている。

液化水素はロケット燃料としての利用が先行したが、現在は水素の輸送手段としても活用されている。


イワタニのWebサイトには水素事業について充実した紹介ページがある。

水素とイワタニ

水素エネルギーハンドブックには現在のイワタニの水素の製造方法が記載されている。

ハイドロエッジ(堺市)での製造方法は天然ガスから水素を作って精製していると書かれている。

同工場では空気を冷却して液化窒素・液化酸素・液化アルゴンの製造を行っているが、この冷却にLNGの気化熱を活用している。

すなわち、イワタニはLNGを購入して、気化したLNGから水素を、気化熱で空気分離ガスを製造するという工夫をしている。

ただ、この方法では天然ガスから水素を取り出した残りとして二酸化炭素が発生する。

岩谷瓦斯千葉工場と山口リキッドハイドロジェンでは、隣接する他社の食塩電解工場から水素を買って、これを精製して製造している。

隣接する食塩電解工場が大量の電気エネルギを投じた副産物を買っていると言うことで、合理的ではある。

ただ、食塩電解というのは、苛性ソーダや塩素の需要次第で動くもので、水素製造の都合で動くものでもないだろう。


水素の製造方法は、基本的には化石燃料を使う方法か、電気分解による方法か、この2つである。

バイオマスの発酵により水素を得る方法もあるが、これは例外的なものだろう。

電気分解というのも電気エネルギーを何で得るかと考えると、今はほとんどが化石燃料の燃焼である。

食塩電解のように他の目的を持って電気分解をするなら、合理的ではあるけど、水素製造のためだけに電気エネルギーを使うのは無駄である。

ただ、最近では季節・時間帯によっては太陽光発電のエネルギーが余剰になるなどの事態も発生している。

このような再生可能エネルギーの余剰分を使って電気分解するならば、電気分解による水素製造も正当化できる。


よく語られるストーリーは再生可能エネルギーでの電気分解による水素製造だが、

それではとても賄えず、本命は化石燃料からの水素エネルギー製造のようである。

オーストラリアで低品位の褐炭を使った水素製造に向けた動きがあるようだ。

褐炭は石炭ではあるが、水分が多く運搬が難しく、その場で燃やすぐらいしか使い道がなかった。

そこで、その場で褐炭を不完全燃焼させる。これにより一酸化炭素、メタン、水素などができる。

一酸化炭素は水蒸気と反応させて、二酸化炭素と水素を作ることができるので、実質的に水素の原料である。

こうやってできた水素を液化して、日本に輸出するということである。


エネルギーの有効利用としてはよいアイデアだが、結局は石炭を燃やしただけの二酸化炭素が発生するんだよね。

そこで、二酸化炭素を地下に封じ込めるCCS技術との併用が前提となっているようだ。

水素製造のためには二酸化炭素を分離する必要があるので、その点ではCCSとの組み合わせは相性が良い。

近くにある油田に二酸化炭素を注入し、これで石油を押し出すことと、二酸化炭素を地下に貯留することを目指しているようだ。

こうやって製造された水素は「CO2フリー水素」として取り扱われるそうである。


そこまでして水素を使うことに意味があるかという話だけど、やっぱり燃料電池でしょうね。

関空にイワタニが水素ステーションを設置して、フォークリフトなどの燃料に使っているわけだけど、

実はもともとフォークリフトの動力源には蓄電池ががよく使われていた。蓄電池なら排ガスは出ないはずだが……

ところが蓄電池にとっての問題は充電時間、そのため軽油を燃料とするフォークリフトを併用したりしていた。

これが水素を燃料とすることで充填時間が短縮され、燃料電池は水以外のガスを出さず、環境負荷が低い。


それに比べれば、たかが炎のために水素を使うのは、そこまで意味はないような気がするけど、

炎を出すためには、何らかの可燃性ガスが必要で、その中では水素が理想的にはもっともよいという言い方はできる。

現状なら天然ガスを燃やすのが、もっとも合理的なのは疑う余地はない。

ただ、来たるべき水素社会においては、これが理想というのは必ずしもおかしな話ではない。

といっても、石炭や石油ならともかく、天然ガスを直接燃やさなくなる時代なんて、なかなか想像できませんけどね。


Author : Hidemaro
Date : 2019/07/28(Sun) 23:49
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旧世代の製品のバッドデザイン

製品評価のために、製品を組みあわせて、設定してシステムを構築していたのだが、

その中で1つの製品がエラーを出していた。

マニュアルにこういうところを疑うようにとあったが、設定を見直してもエラーが消えない。


こういうとき開発者は内部情報を見て、エラーの切り分けをしてしまうのだが。

内部情報を見る限りでは、マニュアルで疑うべきと書かれていたエラーのフラグが立っていた。

でも、そのエラーは絶対に出ないように設定を変えたはずなのだが。

そこで、モジュールから設定ファイルを読み出して、解析してみた。

すると、未使用チャンネルに不適切な設定がされているのが原因であることがわかった。


そうそう。このモジュールって複数のチャンネルに他の機器を接続できるんだよね。

ツールでは、そのうち1つのチャンネルのみ設定して、それで設定ファイルを自動生成していた。

未使用チャンネルには適切な設定がされると思っていたのだが、未使用=標準設定のようだ。

出荷時のハードウェア設定のまま、標準設定で動かせば、このエラーは起きないのだが……


問題はこのモジュールには、機能設定用のジャンパーピンがあること。

多くの場合は出荷時のまま使用されるのだが、今回は接続する機器の都合でジャンパーピンを変更した。

このような使い方をするモジュールはいくつかあるのだが、

今回使用したモジュールは、ジャンパーピンで切り替えされる回路の健全性をチェックするため、ジャンパーピンの設定値を設定ファイルに設定する。

すなわち、未使用チャンネルに対して、ジャンパーピンの設定が正しく反映されていないことが原因だったのだ。

というわけで、この問題は、未使用チャンネルにダミーチャンネルを定義して、妥当な設定にすることで解決された。

チャンネルを定義したのに未接続だと別のエラーが発生しかねないが、そこは設定を工夫すれば回避出来る。


最新世代の製品を主に触れてきた僕にとっては、いろいろな意味で衝撃を受けた。

  1. 「未使用」という設定が存在しない
  2. ハードウェアスイッチじゃないと設定できない機能がある
  3. ハードウェアスイッチの設定内容を設定ファイルに正しく書き込まないとエラーが出る

まず 1. が諸悪の根源なんだよね。

最新世代の製品は、そのアーキテクチャゆえに「未使用」という設定があるので、未使用チャンネルに干渉されることはない。

ところが、1つ前の世代の製品には「未使用」という設定はなく、使用するチャンネルと同様の設定が必要になる。

それで未接続だとエラーになるのはその通りなのだが、そこは上位側のプログラムでマスクされるので基本的には問題ない。

ただ、今回のような特殊なケースでは、マスクできないエラーが発生してしまうのだった。


その上で問題となるのが 2. と 3. のことである。

そもそも、ハードウェアスイッチでの設定というのがバッドデザインである。

ソフトウェアでアクセスするためのアドレス設定をハードウェアで行うというのは妥当だと思うし、

設定事項の全てがハードウェアスイッチというモジュールも、それはそれで一貫している。

ところが、このモジュールは、回路の切り替えだけをジャンパーピンで行うという必要がある。(どうしてこうなっているかは後述)

基本的にこのジャンパーピンの設定値をマイコンが知っている必要はないのだが、このモジュールに限っては回路の健全性を確認するために必要となっている。

ところが、マイコンはこのジャンパーピンの設定値を読み出すことはできないので、設定ファイルに書き込む必要があると。

さすがにこれは理解に苦しむが、やむを得ない事情があったんだろう。


旧世代の製品であっても、同種の設定をジャンパーピンで行うものばかりではない。

どうするかというと、複数の接続口があって、接続方法を変えることで機能を切り替えてるんですね。

ジャンパーピンでないにしても、ハードウェアで設定を切り替えていることに変わりは無い。

信号の流れる向きが逆なので、それを接続方式を変えることで解決しているのだ。

ジャンパーピンで切り替えるモジュールも、ジャンパーピンだけでは信号の流れる向きを全部逆転することはできないので、

直感的ではない信号接続と併用することで、やっと内部回路を流れる信号の向きが揃って使えるようになる。

できるだけ同じ内部回路を共有し、信号の向きを揃えるには、こうならざるを得ないようである。


この問題はいずれも最新世代の製品では解消したのだが、実はけっこうな力業で解決している。

というのも、2つの信号の向きに対応するために、内部に2種類の回路を持っていて、これをFETで切り替えているのだ。

2種類の回路を持つことで部品数が増えるとか、実装面積が増えるという問題もあると思うが、

どちらかというと、2種類の回路に対して工場で検査などが必要になるので、時間への影響が大きいのではないだろうか。

あまり使用頻度が高いとは言えない設定なので、従来はジャンパーピンや接続方法での切り替えもやむなしと判断していたのだと思うが、

市場の要求や、新製品のコンセプトなど考慮した結果、このような実現方法になったようだ。


最新世代の製品ではいろんな意味で解決した問題ではあるけど、1つ前の世代の製品もまだまだ現役ですからね。

今回の問題は設定ファイルを生成するソフトウェアのバグなのでは? と思ったけど、

それを抜きにしてもいろいろトラブルの種を持っているのが実情である。

これはひどいというのは易しいけど、こういう問題を作り込まざるを得ない難しさはあったんじゃないだろうか。


Author : Hidemaro
Date : 2019/07/18(Thu) 23:30
電気・数学・物理 | Comment | trackback (0)

mbarってそういう意味?

製品評価を行うときには、気温・湿度・気圧のデータを記載する。

一番センシティブなのが気温だが、あとはそこまででは。

特に問題だったのが気圧で、フロアに1台しか気圧計がなくて、その湿度計の置場が普段作業する場所から離れていてめんどくさい。

さらに、その気圧計が校正に出てしまうとフロアに1台もなくなってしまう。

他のフロアの気圧計を見に行くというのも手ではあるが、めんどくさい上に場所によって気圧は違うしね。標高の影響は確実にある。

かといって、製品性能に影響を及ぼすほどの気圧変化自体がそもそもあり得ないのだが。


そんな問題もあってか、温度・湿度を測る装置を、温度・湿度・気圧を1台で測れる装置に置き換えた。

これで便利になると思ったが、気になったのが気圧の表示が「1001.2mbar」のようになっていること。

補足説明として「mbarはhPaと同じ単位です」と書いてあった。

あれ? 1barって1気圧って意味じゃなかったっけ?


調べたのだが、bar(バール)という単位は、1bar = 100kPa である。

すなわち 1mbar は 100Paとなり、これは1hPaである。h(ヘクト)は100倍を表す接頭辞だしね。

日本の計量法では、圧力の法定単位として Pa、N/m3、bar、気圧 の4つの単位を定めている。

法定単位ということは、ちゃんと計量単位令で定義が定められていて、barの定義は次の通り。

バール パスカル又はニュートン毎平方メートルの十万倍

1bar=100kPaではあるのだが、bar 自体はSI単位ではない。

そのため、日本の気象庁では1992年にmbarからhPaに移行している。ただし、単位が変わっただけで、数値の意味は変わっていない。


元はbarという単位は気象分野で生まれた単位で、最後まで使われた(地域によっては今の現役)のも気象分野だった。

というのも、1barというのは1気圧に近くなるように、当時のCGS単位系(cm,g,sを基本とした単位系)で選ばれた数字だったから。

最初に書いた誤解の原因もそこだったのだが、確かに1barは近似的に1気圧だが、1気圧というわけでもない。

そもそも、気圧というのは緯度、標高、気温などによっても変動するものである。

1気圧って1013.25hPaじゃないの? と思うところだが、これは1954年にパリの緯度で標高0m(海水面相当)での平均気圧から定めたものである。

1気圧という概念自体は古くからあったかもしれないが、世界共通の1気圧を厳密に定義できたのは1954年のようだ。

一方、barという単位が生まれたのは1911年ことだそうで、こっちの方がはるかに長い歴史を持っている。

近似的に1気圧 かつ 厳密な定義を持っていたというのが、気象分野で利用された要因だったようだ。


ちなみに、barという単位は、工業分野ではあまり使われなかったようだ。

工業分野で使われる圧力の単位は、日本では kgf/cm2 などが主流だった。

アメリカでは psi(pound-force per square inch)が未だに使われてると聞くが。

日本では1999年頃から圧力の単位はPaに移行していった。Paは意外と歴史の浅い単位なのだ。

日本は計量法が厳しいからPa以外の圧力の単位はほぼ駆逐されたが、世界的にはまだまだでしょうね。

1kgf/cm2 =98kPa で換算できるので、なんか微妙にキリの悪い圧力を見たらこの換算の跡かもしれない。


日本では非SI単位が駆逐されるのが早いもんで、barという単位を実用しているのは今回初めて見た。

日本メーカーであれば、気圧の測定器では hPa を単位に使うだろうが、この測定器は輸入品である。

計量法では法定単位以外を書いた測定器を製造することはできないし、輸入して販売することもできない。

ただ、barという単位は日本ではすっかり使われなくなったとはいえ、れっきとした法定単位ではある。

というわけで、何の問題もないのだった。

でも、戸惑うよね。だからこそ、担当者は「mbarはhPaと同じ単位です」という補足説明を付けたんだろうが。


Author : Hidemaro
Date : 2019/07/12(Fri) 23:29
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LとNは何が違う

直流だと+と-という明確な極性があるが、交流ではこれといってなさそうだが、

実際には交流電源を接続するところにLとNという極性がある。

通常は黒のケーブルをL、白のケーブルをNに接続すればよいのだが、

そもそもこれはなんなのか、そしてなんの意味があるのか。


LとNはそれぞれ、LiveとNeutralを表す。

通常、交流電源の一方は変圧器側で接地されている。

この接地側をNeutral、接地されていない側をLiveと呼んでいる。

LとNを指定している場合は、そこを区別して接続して欲しいということである。


なぜ、ここを区別するかというと、ヒューズなどはL側だけに入っていることがあるそうだ。

L側のヒューズを溶断しても、N側は回路に接続されたままになる。

でもN側は接地側だから、アースとの間の電圧は小さいことが期待される。

もし、これを逆にするとアースとの電圧が高いL側が回路に接続されっぱなしになり、危険な状態が続く可能性がある。

というわけで主に安全面の理由から、LとNを区別しているようである。通常状態ではどちらでも動く。


もっとも日本のコンセントはLとNを区別して接続するのは難しい。

日本で使われているAタイプの2極のコンセントは左右を逆にしても普通に刺さるというか、区別していない。

同じAタイプでもアメリカではコンセントに接地極が付いていて3極であるのが通常だから、ここは区別される。

日本でも3極のコンセントを使っているところはあるが、少なくとも家庭では一般的ではない。

どうして日本では2極のコンセントなのかというと、おそらくTTシステムいう接地方式の都合なんだろうと。

ヨーロッパやアメリカではTNシステムという方式を使っている地域が多く、L, NとともにPE(Protective Earth)も配電される。

一方で日本のTTシステムではアースは配電されず、必要なところで確保することになっているので、コンセントにはアースがないのが通常。

水回りなど安全面からアースを接続する必要性が高いところには、アース端子が付いてたりするけど、それでも家庭では3極コンセントは一般的ではない。


最近、職場で試験用のシステムを組んでいて、その電源配線をするのにLとNを意識しながら接続したのだが、

2極プラグだと、どっちがLかNかわからなくなるので、プラグにこっちがLで、こっちがNとマーキングしていた。

外観でどっちがどっちか区別する手段はないので、線をバラしてどっちが黒とつながっているか調べるしかない。

ちなみに2極コンセントでも、穴が大きい側がNという区別方法がある。

3極コンセントの場合は、アースを下にしたとき、Nは左側になるので、こちらはより明確に区別できる。

なのでプラグにマーキングしておけば、少なくとも穴の大きさを区別すれば正しく接続できるわけだ。


といっても、直感的にはわかりにくいということか、社内の電源装置の出力側のコンセントに「N」というマーキングがありましたけどね。

3極プラグなら意識する必要はないが、2極プラグの場合も想定していたのだろう。

おかげでL,Nとマーキングした2極プラグはN同士で向きをあわせて差し込めば、簡単に正しく接続できた。


LとNを区別しなくても動くだけに、あまり意識することは多くないが厳密には区別するべきだと。

本当にこれで正しいのかと疑うこともしばしばあるが、基本的には信じるしかないよね。

ただ、アースとの間で電圧を測定して、0Vに近ければN、公称電圧に近ければLと言う区別はできるので、

そういう観点でのチェックするのが本来は正しいのかも知れない。あんまりやらないけど。


Author : Hidemaro
Date : 2019/07/08(Mon) 23:42
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